史上最も暑い夏となった2023年 各地で災害も発生
ドイツ国際放送『ドイチェ・ヴェレ』の討論会でのこと、NASAの科学者は記者団に対し、2023年7月はここ数千年でいちばんの高気温を記録した可能性が高いとした。
今年4月、同月としては観測史上もっとも高い温度が記録されていたが、7月も史上まれにみる高気温となった。
世界各地で行われる化石燃料の燃焼、あるいは採掘時の排出により温室効果ガスの総排出量が増加。科学者たちは数十年前から気温上昇について警告を発してきたにも関わらず、地球温暖化が加速している。
9月に出たNASAの報告によると、2023年の夏(6-8月)は観測史上最高の気温となった。1951年から1980年までの夏の平均気温を1.2℃上回ったという。
高気温は人間を含むあらゆる生物、そして地球環境に大きな影響をもたらしている。実際、熱波を原因とした大規模な山火事が世界各地で起こっている。
健康被害も深刻だ。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」はプレスリリースを通じ、「あらゆる地域で、人々は猛暑によって命を落としています」としている。各国を襲った熱波の影響をチェックしてみよう。
アリゾナ州フェニックスでは43.3度を超える猛暑日が3週間以上続いたほか、7月20日には46度が記録された。
アメリカ国立気象局によれば、マイアミでは7月15日から16日にかけた週末に日中の最高気温が46.6度に達した。
テキサス州でも6月から猛暑が続いた。写真は7月中旬、オースティン市内にそなえられた噴水で涼む人々。コーパスクリスティなど近隣都市でも7月最後の週には45.6度に達するとされた。
アメリカ国立気象局によれば、7月第3週のラスベガスは歩道の気温が日なたで62.2度、日陰で52.5度に達した。写真は歩道沿いのスプリンクラーで涼をとる歩行者。
国際ニュース通信社『ロイター』によれば、北西部ソノラ州の州都エルモシージョで気温が48.9度に達した。米テキサス州に接するヌエボ・レオン州では死者が出たほか、同州州都であり国境沿いの重要都市となっているモンテレイでも38.9度を記録。
画像:Carlos Lugo / Unsplash
熱波は北米カナダにも深刻な災害をもたらした。記録的な高温となったアルバータ州で4月に山火事が発生したことを皮切りに、全国数百か所で火事がおこる事態となっている。
欧州も熱波に襲われている。スペイン各都市で史上最高気温が観測され、アンダルシア州コルドバでは43.9度を記録。写真はセビージャ、温度計が51度を示した。
地中海に浮かぶマヨルカ島では、本来は涼しくなるはずの朝4時に気温が38.9度に達していた。
7月中旬に熱波に襲われた欧州でとくに大きな被害を受けたのがイタリア。ローマのサン・ピエトロ大聖堂を背景にした温度計は、日陰にもかかからず40度を示している。
フィレンツェとボローニャにも高温警報が出された。上の画像ではローマ動物園のスマトラトラが冷凍した果物をなめて涼をとっている。7月19日に撮影された。
欧州と地中海を挟んで向かい合うエジプトのカイロ郊外の町では37.8度を記録。画像はナイル川で水浴びをする人々。
世界気象機関(WMO)が高気温を警告した7月第1週、イランは観測史上もっとも高い気温を記録した。写真は首都テヘランで噴水の水で涼をとる少年。
7月21日、気温が38.9度に達したインドのニューデリー。画像は日差しをよけようとする歩行者。
7月中旬の週末に気温が40度を超えたアテネでは、古代遺跡アクロポリスの一時閉鎖に踏み切らざるを得なくなった。また、高気温により山火事が多発し、数千人が避難。
気候変動の影響はアジアにも出ている。韓国では7月中旬に広い範囲が豪雨に見舞われ、各地で水害や土砂崩れが発生、40人以上が犠牲になった。
日本も例外ではなく、7月には九州や東北で大雨が降り、土砂災害も発生。浸水などの物的被害のみならず、犠牲者も複数生じる事態となった。
日本にも大きな影響を及ぼした台風9号および11号は、中国にも被害をもたらした。さらに、9月に入ってからも南部でふたたび大雨が発生、広西チワン族自治区の玉林市では土砂崩れも発生している。
NASAの報告では、今までと同様のレベルでの温室効果ガスの排出が続けばこういった気候変動はますます悪化するとされている。このままでは、このような夏がもはや異常とみなされなくなってしまうのかもしれない。