反プーチン派の急先鋒ナワリヌイ氏、極北の刑務所へ移送される
反プーチン派の指導者として汚職の追及などを行い、当局による弾圧を受け服役中だったアレクセイ・ナワリヌイ氏。最近では消息不明という情報が協力者たちから伝えられ、新たな疑惑の種となっていたが、北極圏の刑務所に移送されたことが判明した。
ロイター通信によれば、ナワリヌイ氏の弁護士および協力者たちは、すでに禁固11年の刑に服役中の同氏に対して19年延長という判決が出されたことを受け、ロシア有数の厳格な刑務所へ移送されるおそれがあるとして、警戒していた。
ロシアでは服役囚を鉄道で移動させる場合、そのプロセスは数週間に及ぶことも少なくない。その間、服役囚の弁護士や家族は、当人の安否や居場所をまったく知らされないケースもあるという。
ところが、ロイター通信は12月末、ナワリヌイ氏が北極圏にあるヤマロ・ネネツ自治管区内の刑務所に移送されたと報道。同通信によれば、この刑務所はソ連時代に強制労働施設として建設されたもので、ロシア有数の厳しい刑務所として知られているとのこと。
ナワリヌイ氏はX(旧Twitter)上にメッセージを投稿し、自身の無事を報告したほか、弁護士と面会したことも明かしたという。
ナワリヌイ氏のスポークスパーソンを務めるキーラ・ヤルミシュ氏は、同氏の消息不明が報じられた当時、X投稿を通じてコメントを発表。最後に安否が確認されたとき、ナワリヌイ氏はモスクワの東250キロメートルにある刑務所「IK-6」で服役中だったとした。
CNN放送の報道によれば、ナワリヌイ氏は12月11日にリモートで出廷する予定だったらしい。ところが、これは実現せず、当局は刑務所における電気系統のトラブルが原因だと主張した。
当時、ヤルミシュ氏はナワリヌイ氏について、このところ体調不良に悩まされていたので心配だとコメント。いわく:「アレクセイの居場所がわからないというのは、とても気がかりです。先週は独房で体調を崩していたのですから」
ヤルミシュ氏は「アレクセイはめまいを感じて床に崩れ落ちたそうです。刑務所の職員が駆け付けて彼をベッドに寝かせ、点滴を打ったと聞きました」と投稿。
ヤルミシュ氏は、ナワリヌイ氏に協力するチームも実際には何が起きたのか分からないとしつつ、粗悪な食事や換気のない懲罰房が健康に悪影響を与えているのでは、と付け加えた。
また、散歩の時間も刑務所職員によって最小限に短縮されたと見られ、ヤルミシュ氏はナワリヌイ氏が「空腹で気を失っているようだ」と指摘。ホワイトハウスもこのような経緯から、ナワリヌイ氏の安否に懸念を示した。
国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報担当調整官はナワリヌイ氏について、「即座に釈放されるべきだし、そもそも投獄されるべきではありませんでした。在ロシア米大使館と協力して、さらなる情報収集に努めます」と発言。
ナワリヌイ氏が失踪したというニュースは、プーチン大統領が通算5期目を目指して大統領選に立候補すると発表した数日後に報じられた。ナワリヌイ氏も2018年に大統領選に出馬したことがある。
ナワリヌイ氏は10年以上にわたってプーチン政権の在り方を批判し続けており、当局からさまざまな弾圧を受けてきた。BBC放送によれば、2020年8月には神経剤ノビチョクで毒殺されかけたという。
ナワリヌイ氏はドイツの病院に搬送されて暗殺未遂を生き延び、ロシアへの帰還を誓っていた。ところが、2021年1月に帰国すると、ただちに身柄を拘束されてしまったのだ。
CNN放送によれば、ナワリヌイ氏が帰国早々に逮捕されたのは、横領事件に関連して2013年に科された執行猶予の条件に違反したからだという。また、『フォーブス』誌は、ロシアの裁判所がその後同氏に対して懲役2年の判決を下したことを伝えている。
しかし、2022年には9年の懲役刑が追加され、2023年にはさらに19年延長されることとなった。ロイター通信はこの措置について、「ロシア国民を政治的に従順にすることが目的だ」と指摘している。