北朝鮮で自ら死を選ぶ住民が急増:希望の見えない体制への究極の反逆か?
昨年、北朝鮮の金正恩総書記は各地の当局に秘密指令を発し、国民が自ら命を絶つことを防ぐよう命じたという。ラジオ・フリー・アジアによると、同国内における自発的な死亡者数が大きく増加したことを受けての対応だという。
北朝鮮国内で起きている事柄について、正確な統計情報を得るのは難しい。だが、ラジオ・フリー・アジアの記者らによるこの事態の報告は韓国の情報機関による分析とも一致している。
事実、韓国の情報機関が2023年5月に提示したデータによると、北朝鮮における死亡者数は一年前よりも40%も増えているとされる。
韓国情報機関のエージェントはこう語っている:「北朝鮮での生活には様々な困難があります」また、ラジオ・フリー・アジアによると、問題の原因は同国内で「生存がますます困難になったせいで」暴力が増加した点にあるという。
同局によると、金正恩総書記は自ら命を絶つ行為を「社会主義への裏切り行為」と見なし、各地の当局に対し防止策を採るよう命令したという。
咸鏡北道(かんきょうほくどう)地域の担当者が匿名で同局の取材に応じ、金正恩総書記による秘密指令は指導者層が集められた緊急会合の場で伝えられたと述べている。
その人物によると、会合には党上層部や各地域の指導者層などが一堂に会していたという。
咸鏡北道の担当者はこう語っている:「会合は清津(チョンジン)市にある党の地方庁舎で行われました」
その人物はさらにこう続けている:「自ら命を絶った人の数が明かされ、役人の中には動揺を隠せない者もいました」
ラジオ・フリー・アジアによると同地域では今年に入ってから35人が命を絶っており、多くの場合、家族全員が一度に亡くなっているのだという。
匿名で取材に答えた人物はこう語っている:「会合の参加者はショックを受けていました。犠牲者の書いた遺書が明かされ、そこでは国や社会が批判されていたのです」
両江道(りゃんがんどう)で同じ趣旨の会合に参加した別の人物によると、同地域でも無視できない数の犠牲者が出ているのだという。同じくラジオ・フリー・アジアが伝えている。
その人物はこう語っている:「恵山(へさん)市には両親が餓死して以来祖母と暮らしていた10歳の男の子がいましたが、そのふたりが殺鼠剤を飲んで亡くなりました。参加者はみな悲痛な面持ちでした」
その人物はまた、同局に対し、ふたりで死ぬことを選んだカップルや毒物を用いて心中した4人家族などの話も伝えており、死を選ぶことは「希望の見えない社会体制に対する究極の反逆行為」なのかもしれないと述べている。
ラジオ・フリー・アジアの取材に答えた人物によると、両江道の住民が死を選んだ背景には飢餓や貧困があるという。
この情報の正確性を検証することは困難だが、『ビジネスインサイダー』誌や『ザ・サン』紙、インドメディア「WION」など複数の媒体が報じている。ただし、いまのところ北朝鮮からはこの情報の裏付けとなるいかなる公式の発表も行われていない。