傍受された通話が明かすロシア兵たちの悲惨な状況
ウクライナ当局は昨年、ロシア兵の私的な通話を数ヵ月にわたって傍受していたことを明かした。その内容からは、この戦争に対するロシア兵たちの本音をうかがうことができる。
『ガーディアン』紙は“アンドレイ”という名のロシア兵が母親にかけた電話の内容を報じたが、それは前線で戦う兵士たちの置かれた過酷な状況を浮き彫りにするものだった。
この兵士は「お母さん、ここではろくに食事ももらえない。実は、水たまりの水を啜っているんだ」と、ロシア軍における補給の実態を母親に打ち明けていた。
2020年5月、プーチン大統領は前線からの情報漏洩を避けるための大統領令にサイン。これによって、戦場のロシア兵たちはスマートフォンなど、位置情報や音声・動画の送受信が可能な電子機器を所持することができなくなった。
しかし、実際にはこの命令を無視して自分のスマートフォンを持ち込むロシア兵が後を絶たない。その結果、ウクライナ軍はロシア軍部隊の士気に関する貴重な情報を手に入れることになっている。
“アンドレイ”いわく:「プーチンご自慢のミサイルなんてどこにもない。目の前に高層ビルがあっても、俺たちは攻撃できないんだ。巡行ミサイル『カリブル』が1発あれば十分なのに」
“アンドレイ”が語った内容は機密情報と言えるようなものではないかもしれない。それでも、物資不足に悩まされる現場の兵士たちの不安や苛立ちを雄弁に物語っている。
また、別の通話では、戦死したロシア兵“アンドレイ”(前出の兵士とは別人)の父親と戦友たちが交わした会話が傍受され、一部のロシア兵たちが悲惨な目に遭っている様子が明らかになった。
息子の死を嘆く父親が生き残った兵士たちに戦闘の様子を尋ねると、援軍も連絡もなかったという答えが返って来たのだ。
この兵士いわく:「後退は許されないと命じられました。従わなければ、味方に撃たれるかもしれません」物量にまかせて進軍を続けるロシア軍だが、従軍する兵士たちにとってはたまったものではないだろう。
『ガーディアン』紙はさらに、傍受された3つ目の通話を公開。この通話を行ったロシア兵はウクライナ軍に降伏することを考えていると妻に打ち明けていた。
「寝袋に入っているけれど、全身びしょぬれだし咳は出るしひどい有様だよ。俺たちなんか皆殺しにされても構わないってわけさ」
ウクライナに派遣されたロシア兵の通話がウクライナ軍によって傍受されるケースは少なくない。過酷な戦場の実態を目の当たりにして、家族や友人たちにその事実を伝えているのだ。
もちろん、ロシア軍は全体として戦場でウクライナ軍を圧倒しており、徐々に支配地域を拡大しているが、従軍している個々の兵士たちは己の運命について悲観せざるを得ないというわけだ。
2023年9月下旬には『ニューヨーク・タイムズ』紙が、開戦直後にブチャに駐留していたロシア兵グループの行った通話を公開。この分隊はスマートフォン22台を用いて数百回におよぶ通話を行っていたが、その内容はほとんどの場合、プーチン政権とウクライナ侵攻に対する不満だった。
“セルゲイ”という名の兵士は「お母さん、この戦争はロシア政府が下した史上最悪の決断だよ」と発言。別の兵士は「愚かなプーチンはキーウを占領したがっているが、そんなの無理だ」と付け加えた。
一方、西側諸国ではウクライナ支援の継続に消極的な政権が次々に誕生しており、長期化する消耗戦の中でロシアと西側諸国による根比べといった様相を呈している。
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