倫理観に乏しいトランプ前大統領をキリスト教系の政党が支持:その理由とは

トランプ前大統領を支持する「福音派」
キリスト教的とはいえない人物のはずだが
離婚、暴行、刑事訴追……
罪状の数は91
いったいどのような理屈で支持しているのか?
大統領選挙でも重要な支持基盤に
「神に任命された」?
アメリカは「神に祝福されている」
過去の過ちは大目に見ている
「人間は完全ではない」
起訴は「不法」
宗教の自由
道徳的ではないが
福音派の悲願を達成
ヒーロー的存在に
ボーベルト議員の見解
「教会は政府を導く」
必要悪?
現在の政治状況に必要な人物
キリスト教徒全員が支持しているわけではない
ほとんど崇拝する人も
神の「予言」?
救世主に対する信仰に近い
一線を越えた
キリスト教の基本
移民は人間ではないのか
政治闘争に明け暮れるキリスト教徒たち
大義の前には罪も許される
トランプ前大統領を支持する「福音派」

11月に迫った米大統領選挙を前に、キリスト教プロテスタントの一派「福音派」がドナルド・トランプ前大統領を支持している。

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キリスト教的とはいえない人物のはずだが

だが、キリスト教や聖書の教えを少しでも聞いたことがあれば、なぜそのようなことが可能なのかという思いを禁じ得ないだろう。

離婚、暴行、刑事訴追……

トランプ元大統領には数度にわたる離婚歴があるし、不倫のかどで糾弾されてもいる。ほかにも女性を侮辱したり、移民を非人間的に扱ったりしているし、性的暴行が裁判で認定されてもいる。

 

罪状の数は91

トランプ元大統領が推進しようとしている政策はどれもキリスト教的とは言い難いものばかりだし、州法や連邦法などに関する91の罪状で起訴されていることも良く知られている。

いったいどのような理屈で支持しているのか?

こういったことを越えてまでトランプ元大統領を支持する福音派はいったいどのような理屈で自らの信仰との整合性を保っているのだろうか?

大統領選挙でも重要な支持基盤に

キリスト教徒、とりわけ福音派はトランプ元大統領の重要な支持基盤となっており、元大統領が支持を集める理由を理解するのは2024年の大統領選挙を占ううえでも重要だ。

「神に任命された」?

ジャーナリストのティム・アルバータは著書『The Kingdom, the Power, and the Glory』でこの問題に取り組んでいる。アルバータによると、福音派のなかにはトランプ元大統領が「神に任命された」と信じている人も多いのだという。

 

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アメリカは「神に祝福されている」

アルバータはさらに、福音派の多くが「アメリカは神に祝福された唯一の国だ」と信じているとも指摘している:「キリスト教徒のトランプ元大統領支持者たちがこういったことを本当に信じているのだとすれば、トランプ氏がどんな『罪』を犯しても許してしまうのも当然と言えます」

過去の過ちは大目に見ている

NPRのサラ・マッカモン記者もこの問題についての記事を書いている。そこではトランプ元大統領を支持する白人の福音派にインタビューして、なぜお世辞にも「よきキリスト者」とは言えそうもないトランプ氏を支持するのかを明かそうとしている。取材を受けたシェリー・バーロウ氏はマッカモン記者に対し、自分たちのようなキリスト教徒は単純に、トランプ氏の過去の過ちは大目に見ているのだ、と述べている。

「人間は完全ではない」

2016年からトランプ元大統領を支持しているというバーロウ氏は取材に対してこう答えている:「聖書を読んだことはありますか? 聖書に出てくる人たちにも何度も結婚した人は多いし、常に完璧というわけでもありません。人間は完全ではないのです。完全なのは神です」

起訴は「不法」

マッカモン記者がトランプ元大統領の抱える訴訟についてたずねると、バーロウ氏は起訴は「不法」であり、裁判は「すぐに終わる」と信じていると語った。

宗教の自由

『Discourse』誌に寄稿した福音派のマーク・デヴィッド・ホール氏は、自分はかつてトランプ元大統領に投票したし、次の選挙でもそうする、その理由は彼が宗教の自由を支持しているからだ、と語っている。

道徳的ではないが

ホール氏は2016年にも2020年にもトランプ氏に投票したと語り、こう続けている:「確かに、トランプ氏のことは控えめに言っても道徳的とは言えない人物だとは考えています。ですが、宗教的自由に関する大統領令は素晴らしいものでした。任命した裁判官も優れていましたし、外国での武力の行使という観点においては比較的抑制的ですらありました」

福音派の悲願を達成

ホール氏はさらに、トランプ元大統領は「ロー対ウェイド判決」を覆すという多くの福音派にとっての悲願も達成したと記している。

 

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ヒーロー的存在に

この出来事によって、トランプ元大統領はアメリカ中の多くのキリスト教徒の支持をつかんだ。ホール氏も言うように、同判決は福音派などにとっては「これまでの最高裁判決の中でも二番目にひどいもの」だった。これを覆したトランプ氏はまさにヒーローというわけだ。

ボーベルト議員の見解

『フィナンシャル・タイムズ』紙はこの問題について、2022年に共和党のローレン・ボーベルト議員からコメントを得ている。この見解は多くのキリスト教徒が共有するもののようだ。

「教会は政府を導く」

ボーベルト議員は銃規制問題に関するコメントの中でこう語っている:「『国家と宗教との分裂』といった類の妄言にはうんざりしています。教会は政府を導くよう期待されているのです」

必要悪?

福音派牧師でもあるブラッド・シャーマン下院議員はNPRに、トランプ元大統領はしばしば「私なら口にしないことを述べる」もののこういった態度も必要だという認識を示している。

現在の政治状況に必要な人物

シャーマン議員はこう語っている:「たしかにトランプ氏は無作法です。彼は戦士なのです。いま現在の政治闘争の場においては、彼のような人物こそが求められています。タフでなければなりません」

キリスト教徒全員が支持しているわけではない

このように、多くの白人キリスト教徒たちはトランプ元大統領の過ちを見逃して、達成したことのほうを評価しているようだ。とはいえ、キリスト教徒のなかにもそういった過ちを重要視し懸念する人々も当然存在する。

ほとんど崇拝する人も

アイオワ州のアル・ペレス牧師はNPRに対して、一部のキリスト教徒がトランプ元大統領をほとんど崇拝していることに関する懸念を表明している。ペレス牧師は保守的なペンテコステ派に属しており、そのコミュニティでは奇跡や神との直接的なコミュニケーションが広く信じられている。

 

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神の「予言」?

ペレス牧師はNPRに、初めてこういった懸念を抱いたのは2020年、コミュニティのメンバーの中に「トランプ氏は2020年の選挙に勝つ。なぜならそれこそがトランプ氏に関する神の『予言』だからだ」と信じている者がいたからだという。

救世主に対する信仰に近い

ペレス牧師はこう語っている:「ラテン系の福音主義者として、私は強く懸念しています。これはほとんど……救世主に対する信仰も同然です。この言い方が一番よく伝わるでしょう。大変懸念しています」

一線を越えた

ペレス牧師はさらにこう続ける:「どこからが異常な崇拝なのかわからなくなっているのでしょう。誰かひとりの候補者が、アメリカや世界の抱えるあらゆる病理や問題を鮮やかに解決してくれると信じた時、それはもうすでになんらかの一線を越えているのです」

キリスト教の基本

キリスト教のもっとも基本的な教えは、たとえ異なる土地に生まれ、地元のコミュニティから疎外された人であっても温かく受け入れ、お互いを愛し合うということのはずだ。

移民は人間ではないのか

トランプ元大統領は最近、移民は人間ですらなく、「動物」同然だと語ったことがある。このような発言をする人がキリストの教えに従っていると言えるのだろうか。

政治闘争に明け暮れるキリスト教徒たち

だが、白人キリスト教徒たちの目下の関心事は、自分たちのために「闘って」くれる人物を権力の座に押し上げることだけらしい。それこそが自らの信仰に合致した振る舞いだというのだろうか。しかも、その人物とは決してバイデン大統領あるいはカマラ・ハリス副大統領ではないようだ。

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大義の前には罪も許される

たとえ91の罪状で起訴されていようとも、トランプ元大統領がアメリカの福音派などから強い支持を集めているのはこういった事情が背景にあるのだ。

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