「蚊に刺されやすい人」は人口の2割?:蚊に狙われる科学的原因を検証した結果とは
夏休みに家族や友人と遊びに出かけ、他の人はまったく蚊に刺されなかったのに自分だけいくつも虫刺され、という経験はありませんか?
もしかしたら、あなたは蚊に刺されやすいタイプなのかも?そして、それには科学的な根拠があるかもしれません。
いくつかの調査によれば、人口の約2割は蚊を惹きつけやすく、したがってほかの人よりも刺されやすいとされています。蚊を呼び寄せる要素にはどんなものがあるか、みていきましょう。
蚊が人間を刺す理由は、血液からタンパク質を摂取すことにあります。そのため血液型は蚊の好みを左右する要素のひとつとなり、一定の血液型はほかの血液型よりも蚊を引き寄せやすいとされています。
ある研究によれば、O型の人はA型の人に比べ、蚊に刺される率がほぼ2倍になることが判明しました。ちなみにB型の人は、O型とA型の中間となっています。
写真: National Cancer Institute/Unsplash
また、約85%の人は血液型を示す物質を皮膚から分泌し、15%の人は分泌しないとされています。この研究では、血液型には関係なく、こうした物質を分泌する人の方が分泌しない人よりも蚊に刺されやすいことが示されました。
蚊が"獲物"をみつける方法のひとつは人が吐く息に含まれる二酸化炭素をキャッチすること。蚊の口元にはセンサーの役目を果たす2本の「小顎髭」があり、これにより蚊は50メートル先からでも獲物の呼吸を嗅ぎつけてしまいます。
写真: Nine Koepfer/Unsplash
つまり、たくさん二酸化炭素を吐き出す人の方が蚊を呼び寄せやすくなることから、体格の大きい人が蚊に刺されやすいという現象が起こります。子供の方が大人よりも蚊に刺されにくいとされる理由もここにあります。
さらに、汗に含まれる物質である乳酸や尿酸なども蚊を惹きつけます。体温が高い人も、蚊に好かれやすい存在です。
調査によれば、妊娠中の女性はほかの女性と比べて約2倍蚊に刺されやすくなるとされます。妊娠中は通常よりも体温が高くなり、ほかの人よりも21%多い二酸化炭素を吐き出すことが原因とみられています。
写真:Anna Hecker/Unsplash
さらにほかの研究では、人間の皮膚に自然に生息している微生物の一部が、蚊を惹きつける要因になるとされています。
蚊は人間の皮膚にある細菌に引き寄せられることから、虫刺されが足や足首にたくさんできることも説明がつくといえるでしょう。足や足首にはほかの身体部位よりも細菌が集まっていることが多いのです。
写真: Shashi Chaturvedula/Unsplash
米国の化学データベース「PubMed」に掲載された研究によれば、約350mlのビール1本を摂取するだけで蚊に刺されやすくなるとされています。ただし、なぜ蚊がアルコールを飲んだ人に引き寄せられるのかははっきりしていません。
写真:スティーブ・アリソン/アンスプラッシュ
一部の研究者は、飲酒によって体内に入ったエタノールが汗や呼気あるいは尿として排出され、さらにアルコールにより血流量が増えて体温が上がることで蚊を呼びやすくなるとしています。が、科学的な裏付けは得られていないようです。
蚊が獲物を見つけるときには、匂いに加えて視覚も駆使しています。そのため、特定の色が蚊を惹きつけてしまうこともあります。
写真:Warren Wong/Unsplash
フロリダ大学の医学昆虫学者であるジェームス・デイによれば、蚊に狙われやすい色は「黒」、「紺」、「赤」だとされます。
写真:Scott Walsh/U nsplash
しかし、彼に刺されやすいかどうかを左右する最大要因は「遺伝」であり、85%の人が遺伝によって刺されやすいタイプかどうかが決まるとされています。
残念ながら、今のところ自分の遺伝子に手を加えることはできませんが、研究者たちは一部の人が蚊に刺されない理由の解明に熱心に取り組んでいます。蚊をまったく寄せ付けない、安全で効果的な虫よけが現れる日を待ちましょう。