中国が完成した宇宙ステーション:威容を誇る「天宮」とは
中国の新しい宇宙ステーション「天宮」が完成し、本格的に動き出している。中国国家航天局(CNSA)は2022年秋に最後のモジュールを打ち上げ、その組み立てが2023年10月末に完了したのだ。
宇宙についてのニュースサイト「Space.com」によると、「天宮」は2023年11月初めに完全に作動しはじめた。夏には宇宙飛行士たちは初の宇宙遊泳を無事に終えていたという。
宇宙遊泳をしたのは宇宙船「神舟16号」の搭乗員たち。「神舟16号」の前にも宇宙ステーション「天宮」には6つの宇宙船が到着していたが、宇宙ステーション完成後に到着したのはこれが最初である。
宇宙ステーション「天宮」以前にも、中国は宇宙開発の大プロジェクトを計画してきた。中国はこれまで複数の宇宙実験室を打ち上げており、そのなかには同じく「天宮」という名の実験室も二つある。
中国航天局が自前の宇宙ステーションを打ち上げるのには理由がある。中国は2007年に国際宇宙ステーション(ISS)への参加を打診したのだが、アメリカの反対によって認められなかったのだ。
その後の2011年、アメリカ合衆国議会は「ウルフ修正案」と呼ばれる法案を通過させた。このネーミングは当時の下院議員フランク・ウルフにちなむもので、NASAはこの法律により、FBIや議会の了承なしには中国や中国関連組織と共同で研究活動にあたることができなくなった。
宇宙ステーション「天宮」は国際宇宙ステーション(ISS)より小さく、「Space.com」によると半分くらいのサイズだという。ISSの全長が約109メートルに対し、「天宮」は約55メートルとのこと。
「天宮」は三つのモジュール(組み立てユニット)がT字に組み合わさって構成されている。ステーションの内部では宇宙飛行士たちが長期間快適に滞在することができる。直近のミッションは6ヶ月に及ぶものだった。
三つのモジュールの中で、もっとも大きいモジュールはその名を「天和」という。ステーションの中核となるコア・モジュールであり、その両側にはその後に打ち上げられた二つのモジュールが結合されている。モジュール「天和」はスペースシャトル用の係留設備とロボットアームを備えており、宇宙飛行士たちは昨年秋、そのロボットアームを用いて他のモジュールとのドッキング作業を行なったのだ。
このコア・モジュールは中国がこれまで打ち上げてきた宇宙実験室よりもずっと大きく、宇宙飛行士たちはその中を広々と使うことができる。中国航天局はこの宇宙ステーションに100種以上の植物の種やゼブラフィッシュのような魚まで送り届ける計画でいる。
中国航天局は、NASAのハッブル宇宙望遠鏡に類似した天体望遠鏡の打ち上げを2024年に予定しており、その軌道は宇宙ステーション「天宮」の軌道と重なる予定である。ゆくゆくはこの望遠鏡を宇宙ステーションにドッキングし、望遠鏡のメンテナンスや性能向上を行うことも可能になるという。
その宇宙望遠鏡の名前は「巡天」といい、ハッブル宇宙望遠鏡よりはやや小ぶりだが、「Space.com」の情報によると、ハッブルの300倍の視野角を持つという。
この望遠鏡には2.5ギガピクセルのカメラが搭載されており、中国航天局はむこう10年間で全天の40パーセントの範囲の探索を終える予定でいる。
「巡天」の他にも、さまざまな衛星の類がこの宇宙スペーションにドッキングされることになるかもしれない。中国航天局は宇宙ステーション「天宮」を今後さらに拡張するかもしれないとするコメントを出している。同宇宙ステーションは少なくとも10年は運用される見込みだという。
「天宮」は今後ISSよりも安定した運用が行われるという見立てもある。というのも、2024年以降にロシアがISSから撤退することが決まっているからだ。NASAは目下のところ、老朽化しつつあるISSを22年間の運用が可能な新しいステーションに取り替える動きを進めており、計画の2030年までの実現を目指している。
米国平和研究所(USIP)の指摘によると、「国際競争における中国の幅広い取り組みのなかで、宇宙はきわめて重要な舞台となっている」という。だからこそ中国は、NASAの向こうを張って月の探査にも乗り出しており、2030年までに有人月面着陸を行うという計画を発表しているのだ。