「世界終末時計」が示す、人類に残された時間
アメリカの雑誌『原子力科学者会報』は、科学的根拠に基づいて人類滅亡までの残り時間を予測し年に一度発表している。残された時間を象徴的に表すのが雑誌の表紙に描かれる「終末時計」で、午前0時を人類滅亡の時刻としている。現在、私たちにはあとどれくらいの時間が残されているのだろうか?
『原子力科学者会報』誌は2022年1月20日に終末時計を発表したが、約1か月後に勃発したウクライナ戦争受けて3月に「時刻」を修正しなおした。それによれば、人類滅亡の時が100秒後に迫っているという。
人類最後の時まで残り時間は1分40秒。『原子力科学者会報』誌によれば、ロシアのプーチン大統領が指揮するウクライナ侵攻を主な原因として、最悪のシナリオが進行しているという。
2002年の『原子力科学者会報』に掲載された世界終末時計(写真)について、同誌は「時計が午前0時まで100秒に迫るとき、人類は脅威にさらされている。危険で持続不可能な状態にあり、ただちに行動をとらねばならない」としている。
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世界終末時計が誕生したのは1947年、核兵器という脅威を前に人類に迫るリスクについて視覚的に伝えたのがきっかけだ。現在では核兵器のほかに、気候変動やパンデミックといった脅威もリスク計算の対象になっている。
世界終末時計を設立したのは、いわゆるマンハッタン計画(第二次世界大戦中に行われた米国の原発開発計画)に携わった科学者たちだ。いずれも広島と長崎に投下された原爆の威力を目の当たりにしている。
世界終末時計が初めて発表された年は1947年、時計の時刻は「午前0時まで7分」となっていた。
ベルリンの壁が崩壊した1991年、「時間」を測定する原子力科学者たちは明るい兆しを前に、時計を真夜中の17分前とした。この最長記録は現在まで更新されていない。しかしこの年はジョージ・W・ブッシュが米大統領の座にあり、やがてイラクや旧ユーゴスラビアで戦争が勃発したことから世界平和の夢は消え去ってしまった。
英国圏のポップカルチャーには、真夜中に世界の終わりを告げる世界終末時計を取り上げた作品が多い。イングランド出身のヘヴィメタル・バンドのアイアン・メイデンの曲「悪魔の最終兵器(Two minutes to midnight)」もそのひとつだ。
冷戦が続いていた1985年に流行したスティングの曲「ラシアンズ」のミュージック・ビデオにも、冒頭に終末時計が登場している。
終末時計を支持する人々の中には、悲観的な意見を持つ者が少なくない。ケンブリッジ大学の研究者S.J.ビアードは2022年、「終末時計には、人類の危機対応能力がこれまで以上に悪化していることが示されているのかもしれない」とBBCに寄稿している。
そこから、世界終末時計のようなツールは意識を高めるというよりも、むしろモチベーションを下げると考える人もいる。破滅が避けられないのなら、考えない方がいいというわけだ。
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ウィキペディアの世界終末時計の項目をみると、『Slate』誌のアレックス・バラシュがこのツールについて行った、「人類を厳戒態勢に置き続けることは、政治や科学に関して言えば役に立たない」という興味深い批判を引用している。
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21世紀の人類は、疾病、気候変動、大規模な武力紛争などさまざまな脅威にさらされている。今再び世界終末時計に注目が集まっているのは、かつての冷戦時代に全盛を極めた恐怖の文化が再び勢いを増している証なのかもしれない。
いずれにせよ、終末時計が目指すのは平和、非核化、気候変動との闘いである。
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終末時計の時刻は残り100秒となり、世界は危機的状態にあると言える。しかし、人類の未来に向けた希望はまだ絶えてはいない。
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