世界最高齢の陸生動物、ゾウガメのジョナサンをご紹介します
世界最高齢の陸上動物、それはセーシェル諸島出身のゾウガメだ。その年齢は現在190歳とされているが、正確なところは不明で、実際はもっと高齢の可能性もある。ともかく非常な長生きだ。
このゾウガメは「ジョナサン」という名で長いこと知られてきた。2022年12月、ジョナサンの190歳の誕生会が三日がかりで催された。ケーキのかわりにプレゼントの野菜が贈られ、陸上動物最高齢という称号も得たのである。
ジョナサンは今セントヘレナ島で暮らしている。この島には1882年に引っ越してきた。当時のセントヘレナ島総督サー・スペンサー・デイヴィスへの贈り物として、ジョナサンはやってきたのである。
それから140年あまり、ジョナサンのまわりで季節は巡り、いまや彼は国際的なセレブ亀になっている。
ジョナサンの逸話をひとつ紹介しよう。1991年、セントヘレナ島に「フレデリカ」がやってきて、ジョナサンとフレデリカの仲睦まじい様子が世界中に発信された。しかし、このカップルに子どもは生まれなかった。
どうして子どもが生まれないのか、獣医たちにもわからなかったが、あとになってフレデリカが実は「フレデリック」だったことが明らかになった。オスだったのだ。かくして、このカップルから赤ちゃんガメがなかなか生まれない謎が解けた。
ジョナサンは、目下のところ最高齢の動物とされており、最高齢のカメ目としてギネス世界記録を保持してもいる。ちなみにカメ目とは、ギネス世界記録によると、陸生ガメ、水生ガメ、イリエガメ属を含むカテゴリーだという。
写真:Facebook @GuinnessWorldRecords
「ジョナサンの年齢は推定である。セーシェル諸島からセントヘレナ島にやってきたとき、ジョナサンはすでに成熟しきったゾウガメだったことから(中略)現在の年齢がみちびき出された。十中八九、ジョナサンはわれわれの推定以上に年寄りのはずだ」と、ギネス世界記録HPは注記している。セーシェル諸島通信社(Seychelles News Agency)の記事によれば、当時の写真、そして甲羅のパターンの解析という科学的手法から、ジョナサンは1882年当時、50歳そこそこだったと考えられる。したがってジョナサンは(いちおう)1832年生まれ。ルイス・キャロルと同い年である。
写真:Facebook @GuinnessWorldRecords
ジョナサンはたんに国際的な名士であるにとどまらず、セントヘレナ島の名高い観光資源になっている。写真は島で流通している5ペンス硬貨。ジョナサンがデザインされている。
写真:www.ebay.co.uk/itm/175264331178
経る年月はその痕跡をしっかり残していった。体を包み込むような「しわ」、きかなくなった鼻、白内障による失明。にもかかわらず、ジョナサンはなお「かくしゃく」としているようだ。
写真:Facebook @wildheartwildlifefoundation
セーシェル諸島通信社(Seychelles News Agency)が、セントヘレナ島に住むジョディー・スキピオ=コンスタンティーヌ(Jodie Scipio-Constantine)に取材し、ジョナサンの近況を聞いている(2022年2月の記事)。
「獣医のチームはいまも週に一回、ジョナサンに手ずからエサをやり、十分な量のカロリー、ビタミン、ミネラル、微量栄養素を補っています。ジョナサンは目が見えず、鼻もききません。元気よく草を食みますが、地面にエサを置いただけではそのエサに気づくことはないのです」と、ジョディー・スキピオ=コンスタンティーヌは語る。
「でも聴力はたいしたもので、人が近くにいるとくつろげるようです」
目はほどんど見えず、鼻もきかず、それでもジョナサンは毎日の活動に必要なエネルギーをまだしっかりと貯蔵している。そのことを証言するのは、ジョナサンのお世話係たちである。
「老齢にも似合わず、ジョナサンは立派な性的衝動をいまなお持ち合わせており、エマとつがうべくあくせくしている姿がたびたび目撃されております。ときにはフレッド(フレデリック)に手を出すことも。動物たちは多くの場合、相手の性別についてはとやかく言わないものです」とあけすけに語るのは、ジョナサンの主治獣医、ジョー・ホリンズだ。このコメントはギネス世界記録HPで読むことができる。
ジョナサン以前に最高齢だったカメ目は、トゥイ・マリラだった。マダガスカル生まれのホウシャガメで、18世紀英国の探検家ジェームズ・クックがトンガ王室に献上したという歴史を持つ。トゥイ・マリラは1965年に推定188歳で亡くなった。
きっと今年も12月ごろ、ジョナサンの191歳を祝う会が催されるはずだ。ジョナサンに会いに、セントヘレナ島へ行ってみるのもいいかもしれない。