世界各国の渡航安全情報からみるアメリカの銃犯罪リスク
海外旅行先を検討する時に、外務省の海外安全情報をチェックする人も多いだろう。最新のテロ情報や紛争リスク、治安などの情報がまとまっているからだ。
改めてその情報をチェックしてみると意外な発見もある。そのひとつがアメリカだ。代表的な先進国であるアメリカだが、じつは渡航する上では特有の危険があることも指摘されている。その主な原因は銃犯罪が深刻化していることで、ここ数年だけでも世界でニュースとなるような無差別銃撃事件が何度も起こっている。
外務省の安全対策基礎データを見ると、アメリカについてこう書いてある:「米国における治安上の主な懸念の一つとして銃犯罪が挙げられます」
さらに、そのウェブページでは銃乱射事件が増加傾向であることも指摘され、そういった「アクティブ・シューター事件」への対処法を詳細に伝えている。
このような情報を伝えているのは日本だけではない。たとえば、ニュージーランドではアメリカの危険度を4段階中のレベル2としている。政府のウェブサイトではアメリカに渡航予定の国民に対して「テロの危険があるため、いっそう注意を払うこと」と述べている。
ニュージーランドの渡航安全情報にはこう書いてある:「アメリカはいまでも、国際テログループや国内に拠点を置く過激派などから常にテロの標的とされている」
また、旅行者には公共の場所では周囲に注意するよう促している。特に注意が必要とされているのは「ショッピングモールや市場、記念建造物、観光地、人の集まる場所や公共交通機関など」といった場所だ。
そのウェブサイトではさらに、アメリカのサイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)が作った、銃乱射事件に巻き込まれた時のための対処法を記したパンフレットを掲載している。
カナダではアメリカへの渡航予定者には「通常の」注意しか求めていない。だが、政府のウェブページで「アメリカでは銃保有率が高い」こと、そして「多くの州では銃器を公然と携帯することが合法である」ことにも注意が促されている。
さらに同じページで銃乱射事件についての注意も喚起され、「観光客が巻き込まれるケースは少ないが、運悪く居合わせてしまう恐れは常に存在する」とされている。
そのうえで、そういった事態にもすぐに対処できるようにしておくことが推奨され、ニュージーランドと同様にCISAのガイドへのリンクが張られている。
また、カナダの政府サイトでは薬物の密輸に関連した犯罪が多いことも指摘されている。そういった事例はアリゾナやカリフォルニア、ニューメキシコ、テキサスなどの州の、メキシコ国境付近で多いとされている。
一方、イギリス政府はこう述べている:「銃乱射事件が起こる可能性はあるが、事件に巻き込まれて死亡する確率はかなり低いとも認識しておくこと」
それでも、イギリス政府も「そのような事態」に巻き込まれた際の対処法を伝えるためにアメリカ国土安全保障省へのリンクをはっている。
ドイツ外務省はこのように述べている:「アメリカでは銃の入手は容易で、実際に使われるケースも多く、無差別銃撃事件も起こっている」
そのウェブページではこうも指摘されている:「新型コロナウイルス感染症の流行以降、銃器や弾薬の購入量は如実に増加している」
自国の治安にも不安がないとは言えないメキシコだが、それでもアメリカへの渡航予定者にも注意を喚起している。
メキシコ政府が自国の渡航予定者に伝えているのは次のようなリスクだ:「歴史的に人種的・民族的対立があり、移民への反感も存在する。そういったことが原因となって暴力的な過激派による攻撃につながる場合がある」
そのウェブページは2019年にテキサス州エルパソのウォルマートで起きた銃乱射事件も紹介している。この事件ではラテン系の人を中心に23人が殺害され、後にヘイトクライムだったと明らかになった。
銃犯罪データベース「Gun Violence Archive」によると、アメリカでは2023年だけで200件もの銃乱射事件が起きている。
また、同じデータベースによると、ここ3年ほどは年間の銃乱射事件数は600件ほどとなっている。平均するとおよそ1日に2件起きていることとなる。