カナダにおける出生率の低下:欧州、韓国や日本でも
近年、カナダでは出生率が低下の一途を辿っている。これはすでに警戒をすべきレベルなのだろうか。そして、国民はそれをどのように受け止めているのだろう。
2023年10月、カナダ統計局は人口動態に関する年次報告書を発表した。それによれば2022年に登録された出生数は35万1,679人、それまでで最も出生数が少なかった2005年の34万5,044人に次ぐ数字となった。
カナダでは出生率の低下に加え、不妊に悩むカップルの数も増えている。統計局は2022年の報告書を通じ、「我が国も『超少子化国(lowest-low)』リストに加わる可能性がある。こうした状況の背景には加速する高齢化、そして労働市場や公的医療、年金制度について人々が不安を抱いていることなどがある」としている。
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この報告書にある「超少子化国(lowest-low)」とは、1人の女性が一生の間に産むとされる子供の数を示す合計特殊出生率が1.3人未満の国々を指す。2022年時点では日本や韓国、中国、イタリアなどが含まれている。
また、出生率の低下はカナダに限ったことではなくヨーロッパ諸国でも同じ問題が起こっている。
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少子化対策の充実で知られるフランスも、2015年以降は出生数の低下に直面している。エマニュエル・マクロン大統領は「人口の再武装」を掲げ、出生率挽回を目指してさまざまな対策を打ち出している。
フランス国立統計経済研究所の最新の人口統計報告書によれば、2023年には同国の出生数は前年比6.6%減の67万8,000人となり、出生率も1.68まで低下している。
イタリアはさらに深刻な状況に置かれており、2022年の出生数は40万人に届かず、ヨーロッパ諸国の中でも最低水準となっている。こうした状況が続けば、2050年までに人口は500万人減少すると予想されている。
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ローマのルイス大学で教鞭をとる人口統計学者マリア・リタ・テスタ教授は、「人々を取り巻く環境に対する懸念」および「現在各地で進行している戦争に対する不安」を理由に挙げ、イタリアでは「子供を持つことは数ある選択肢のひとつにすぎない」と分析。フランスのニュースチャンネル「France Info」が伝えている。
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ドイツは移民の流入によって人口減少を免れているが、1972年以降は死亡者数が出生者数を上回っている。合計特殊出生率については2000年に1.38人まで低下し、2021年に1.58人と上向きになったものの2022年にふたたび低下したと、フランスの経済紙【『レゼコー』が指摘している。
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フランスのニュースチャンネル「France Info」によれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は国民に対して出産を奨励し、「7~8人の子供を育てていた祖母たちの素晴らしい習慣」を見習うよう促している。それにもかかわらず、同国の人口は毎年70万人から80万人減少しているという。
現在ロシアの合計特殊出生率は1.5人という低水準にあり、プーチン大統領の多産を奨励する声に国民が耳を貸す気配はない。ウクライナにおける戦争が家族計画に水を差していることは明らかであり、国外移住して子供を持つことを願う家族も多い。
興味深いことに、ヨーロッパの中でもっとも保守的で伝統を重んじるとされる地域でさえも、出生率は決して高くない。たとえば、国民の多くが敬虔なカトリック教徒であるポーランドもそのひとつだ。
ほかの地域では、韓国における出生率の低さが特筆に値する。現在の合計特殊出生率はわずか0.7人であり、韓国統計院は今後50年間で1,500万人(人口の約30%)が減少するという驚くべき可能性も指摘している。
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日本でも出生率の低下は大きな問題となっている。ヨーロッパと違い移民の流入が少ないこともあり、統計局の2021年のデータによれば、2011年から11年連続で人口減少が続いているという。
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2022年、中国では60年ぶりに人口が減少に転じ、人口世界1位の座をインドに明け渡した。この傾向は今後も続くと見られている。
『Géo』誌が実施した人口動態に関する予測によれば、現時点で人口がほぼ横ばいあるいはわずかに増加を記録しているドイツやスペインは、2030年から人口減少に転じるとみられる。同じくベトナムとイランは2050年から、インド、インドネシア、トルコ、英国は2060年から人口減少に転じるとされる。
これまで見てきた各国の出生率低下とは対照的に、米国では新型コロナウィルス感染症の拡大前に出生率が下降線を辿っていたものの、その後は回復し2023年には出生率が死亡数を53万1,400人上回る結果となった。
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出生率低下に伴う社会の高齢化も深刻な問題だ。その傾向がとりわけ顕著なのが、最低出生率を記録した韓国だ。韓国統計局によれば、65歳以上の人口は2023年の時点で17.4%に過ぎないが、現在のペースが続けば2072年には48%に達するという。
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こうした状況から、各国で社会制度の持続可能性に懸念が生じている。医療・介護制度の恩恵を受ける人々の多くは高齢者だが、その仕組みを支える労働力人口が年々減少しているのだ。
とはいえ国連としては、世界人口は100億人に達するまでは増加を続け、その後は横ばいまたは減少に転じる可能性があるとみている。つまり当面は全世界的な人口崩壊が起こるという可能性は低いようだ。
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