世界の紙幣や硬貨を総チェック:お金に描かれた肖像はだれ?
現代の経済に不可欠な紙幣と硬貨。世界で暮らすほぼ全ての人々にとって、目にしない日はないといっても過言ではないだろう。しかし、その製造工程や肖像画の人物をご存じだろうか?
世界初の紙幣は7世紀の唐で誕生したとされている。しかし、当時の硬貨や紙幣は、現在用いられているものとはかなり異なっていたようだ。
時は流れ、金融システムが洗練された今日では、紙幣の発行を行うのは各国政府の役目だ。政府当局が偽造を予防したり、価値の安定を図ったりしなくてはならないのだ。
写真:Unsplash / wim van
同時に、紙幣に印刷される肖像画も時代とともに移り変わっており、時折変更されることも珍しくない。たとえば、英国ではエリザベス2世の逝去にともない、新紙幣が製造されることになっている。
CNN放送によれば、「英国の紙幣・硬貨には、年齢に応じて変化する女王の肖像画が描かれていた。60年以上にわたって英国の紙幣に印刷された人物は彼女が初めてだ」という。
国王の交代にともない、イングランド銀行と王立造幣局は故エリザベス女王の紙幣・硬貨を回収し、新国王チャールズ3世が描かれたものに置き換えることとなる。
英国中で流通する紙幣・硬貨の変更には時間がかかると見られている。CNN放送は「イングランド銀行によれば、英国内で流通する紙幣は470万枚以上、総額820億ポンドに上るとされている。また、王立造幣局によれば硬貨も290億枚が流通している」と報じており、変更の難しさを物語っている。
2002年1月1日に運用が始まったユーロは現時点でユーロ圏の20ヵ国に加え、アンドラ公国やバチカン市国といったミニ国家でも流通しており、3億人以上の人々の暮らしを支えている。
欧州中央銀行はユーロ紙幣のデザインについて、「ヨーロッパの歴史と文化を象徴する建築様式に着想を得たものであり、ユーロ圏全体で同一のものが用いられている」としている。
具体的には5ユーロ紙幣が古典様式、10ユーロ紙幣はロマネスク様式、20ユーロ紙幣はゴシック様式、50ユーロ紙幣はルネサンス様式といった具合だ。また、高額紙幣の100ユーロはバロック様式、200ユーロはアール・ヌーヴォー、500ユーロ紙幣は現代建築をモチーフとしている。
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一方、ユーロ硬貨は加盟国の独自性を反映し、様々なデザインのものが流通している。
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たとえば、ポルトガル製の1ユーロ硬貨および2ユーロ硬貨は国章や城があしらわれたデザインとなっている。一方、ドイツ製の硬貨には同国のシンボル、鷲が刻まれている。
世界の金融取引でもっとも多用されている米ドル。ドル紙幣の製造を担当するのはアメリカ合衆国製版印刷局だ。
米国でもっとも高額な100ドル紙幣には、建国の功労者ベンジャミン・フランクリン(1706~1790)の肖像画が印刷されている。
一方、1ドル紙幣に描かれているのは米国の初代大統領ジョージ・ワシントン。ちなみに、地球上でもっとも流通している紙幣はこの1ドル紙幣だ。
アメリカ合衆国製版印刷局で日々印刷される紙幣の45%は1ドル紙幣だ。1ドル紙幣の寿命は平均1年5ヶ月だが、人手に触れる機会が少ない100ドル紙幣は最大9年間も使用することができるという。
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中国の紙幣は、裏側は額面によって異なったデザインがなされているが、表面は毛沢東の肖像画で統一されている。
人民元紙幣の裏面には重要な建造物や中国を代表する風景などがあしらわれている。たとえば、100元紙幣(写真)は、全国人民代表大会が開催される人民大会堂といった具合だ。
最後の通貨切り下げが行われた1994年以来、ブラジルの通貨はレアルだ。硬貨には同国を代表する人物の姿が刻まれている一方、紙幣には共和国を象徴する胸像とブラジルらしい動物たちがあしらわれている。
5センターヴォ硬貨にはジョアキン・ジョゼ・ダ・シルヴァ・シャヴィエル、10センターヴォ硬貨にはドン・ペドロ1世、25センターヴォ硬貨には初代大統領マヌエル・デオドロ・ダ・フォンセカ、50センターヴォにはジョゼ・マリア・ダ・シルヴァ・パラーニョス・ジュニアの肖像画が刻まれている。
これまでに何度かデザインの変更を経てきた1レアル硬貨。中央部には南十字星と三権広場のモニュメントを思わせる模様があしらわれている。また、オリンピックなどの際には記念硬貨も発行されている。
一方、紙幣に描かれている動物たちは2レアル紙幣がタイマイ、5レアル紙幣がサギ、10レアル紙幣がコンゴウインコ、20レアル紙幣がゴールデンライオンタマリン、50レアル紙幣がジャガー、100レアル紙幣(写真)がハタ、200レアル紙幣がタテガミオオカミとなっている。
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アルゼンチンは2012年に紙幣の肖像画を変更。100ペソ紙幣(写真)には、元女優だがファーストレディとして政界でも活躍したエバ・ペロンの姿があしらわれている。
一方、2017年に発行された「第4シリーズ」では一転して同国に生息する動物たちがモチーフに。1,000ペソ紙幣(写真)にはカマドドリがあしらわれている。
米ドルとユーロに続き、世界で3番目に取引量の多い日本円。
2004年以来、千円札の顔は黄熱病の研究で知られる野口英世(1876~1928)となっているが、2024年中に微生物学者の北里柴三郎に変更されることが決まっている。
また、一万円札もデザインが変更される予定だ。現行のものは思想家の福沢諭吉が印刷されているが、新紙幣では明治・大正期の実業家で「日本資本主義の父」とも称される渋沢栄一の肖像画が印刷されることになっている。