一度に1000億円近くを費やすロシア軍の空爆とは
『フォーブス・ウクライナ』誌によれば、ロシアはある一日の空爆で1000億円近い資金が投入したという。いったい何にそれほどお金がかかったのだろうか。 The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に
同誌の記者はウクライナ空軍司令官が発表した速報に基づいてコストを試算、1月2日の夜に行われた空爆にかかった費用を計算している。
ロシア軍はその攻撃に際して総計99もの各種兵器を利用したとされている。その中には数多くのミサイルや無人航空機が含まれており、ウクライナ軍が発表した報告に詳細な内訳が記されている。
攻撃の第一波では自律式ドローン「シャヘド136」および「シャヘド131」が合計35機投入されたと見られている。さらに巡航ミサイル「Kh-101」「Kh-555」「Kh-55」がロシアの戦略爆撃機「Tu-95MS」から発射されたという。だが攻撃はこれでは終わらなかった。
戦闘機「Mig-31K」からは極超音速空対地ミサイル「Kh-47M2キンジャール」10発が発射され、さらに海上から3発の巡航ミサイル「3M-14カリブル」が発射された。加えて、12発の「イスカンデルM」または「S-300」「S-400」が用いられ、戦闘機「Su-35」から4発の対レーダーミサイル「Kh-31」も発射されたと言われている。
『フォーブス』誌の報道時点では個々のミサイルの使用数は判明していなかったが、同誌の記者は攻撃に用いられた各種兵器のコストから攻撃全体の費用を試算している。
たとえば、記者らによると「カリブル」ミサイルは1発あたりおよそ650万ドル(約9億5,000万円)、「Kh-101」は1300万ドル(約19億円)と見積もられている。「イスカンデルM」は約300万ドル(約4億4,000万円)、「Kh-55」は200万ドル(約2億9,000万円)、「Kh-555」は400万ドル(約5億8,000万円)だ。
画像:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
ロシア自慢の極超音速ミサイル「Kh-47キンジャール」は1発当たりの値段がもっとも高価なものとみられ、約1500万ドル(約22億円)と考えられている。一方、ドローンは相対的に安価で「シャヘド」は1機当たり約5万ドル(約730万円)だ。こういった個々の兵器のコストから、攻撃全体の費用が試算されている。
試算の結果、ロシアは1月2日の攻撃におよそ6億2000万ドル(約910億円)を費やしたと考えられている。大変な額のように思えるが、『フォーブス』誌によると昨年12月29日の攻撃ではそれを上回る7億から7億5,000万ドル(約1000~1100億円)ほどが費やされたと見られるという。
ロシアがこれほどの戦費負担にこれからも耐えられるのかは不明な上、そもそもいったいあとどれほどの数のミサイル等を備蓄しているのかもわからない。明らかなのは、ウクライナが被った人的被害が甚大なものだということだ。
ロイター通信によると、1月2日の攻撃では少なくとも135人が負傷し、5人が亡くなったとされる。被害はキエフや、ウクライナ南部の都市ハルキウに集中しているという。
ウクライナのゼレンスキー大統領がSNSへの投稿で語ったところによると、12月29日と1月2日の2回の攻撃では総計300発以上のミサイルと200機以上のドローンが用いられたという。
ゼレンスキー大統領はこう語っている:「ウクライナは、空中発射方式の弾道ミサイルやドローン、ミサイルを用いた複合的な大規模攻撃の迎撃に成功した世界初の国となった」
ゼレンスキー大統領はこう続けている:「我が空軍のすべての兵士たちに感謝しています。それだけでなく、機動防空チームや対空砲手たち、そして私たちの空を守るための兵器を提供してくださった世界中の方々にも感謝しています」
ウクライナ空軍司令官ミコラ・オレシチュクによると、ロシアが発射したミサイル等のうち少なくとも72の迎撃に成功したという。それでも、ウクライナの防空網をかいくぐったわずかなミサイルなどが大きな被害をもたらした。
キエフのビタリ・クリチコ市長の報告によると、キエフの少なくとも5つの区で建物が損壊・倒壊、市の救急・消火チームは総出で事態の収拾にあたったとされている。