ロシア軍爆撃機、誤って民間の貨物船をミサイルで攻撃
9月11日、2万6,000トンの穀物を満載し、オデーサ港(ウクライナ)からエジプトへ向かっていたセントクリストファー・ネイビス船籍の商船「AYA」号が黒海でロシア軍のミサイルを被弾した。
画像:X @YorukIsik
ロシア軍は民間の貨物船にミサイル攻撃を加えたことで、国際社会から激しい非難を浴びた。この事件からおよそ1か月が経った今、ロシア軍は誤爆をしていたらしいことが判明した。
英国防省が10月3日に発表した情報によれば、「AYA」号を直撃したのは、ロシア軍の爆撃機Tu-22M3「バックファイア」が発射した対艦ミサイルであると見てほぼ間違いないという。
画像: Wiki Commons By Alex Beltyukov, CC BY-SA 3.0
同国防省いわく、ロシア軍のTu-22M3は黒海上空で作戦に当たっていたが、商船「AYA」を攻撃する意図はなかったらしい。
英国防省は発表の中で、「『AYA』号がこの作戦の標的だった可能性は低い。パイロットによる不正確な照準操作と老朽化した弾薬のせいで被弾したものと見られる」と指摘。
さらに、「ロシア軍はズミイヌイ島をはじめとする黒海沿岸地域で攻撃を繰り返している。ウクライナの輸出活動を妨害し、軍事施設を弱体化させるのが狙いだ」とした。
英国防省によれば、ロシア軍は今年4月に黒海でTu-22M3を失っており、この地域での作戦に不安を感じているとのこと。「AYA」号を誤って攻撃してしまったのも、そのような苛立ちによるものかもしれない。
英国防省いわく、「ロシア軍のパイロットはウクライナ軍の地対空ミサイルに撃墜されるのをおそれ、作戦地域をなるべく早く離脱しようとあわてていたため、『AYA』号を標的と取り違えてしまった可能性が高い」そうだ。
しかし、ロシア軍のパイロットが発射した対艦ミサイルKh-22は起爆せず、「AYA」号は大惨事をまぬがれることとなったらしい。
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事件後、ウクライナのゼレンスキー大統領は「AYA」号が受けた被害の実態を示す画像を投稿。
画像:X @ZelenskyyUa
ゼレンスキー大統領はX上で「昨夜、黒海を航行していた民間船が、ウクライナの領海を出た直後にロシア軍の攻撃を受けました。幸い、第一報によれば死傷者は出ていないようです」と説明した。
「ウクライナは世界的な食料安全保障の要です。ウクライナがアフリカや中東諸国に対して行っている食料供給は極めて重要なのです(中略)わが国は国際社会による対応を望んでいます。小麦をはじめとする食料の安全保障がミサイルの標的になるなど、あってはならないことです」
「AYA」号はミサイル攻撃を受けたとき、ルーマニアの排他的経済水域を航行していた。しかし、『キーウ・インディペンデント』紙によれば、「AYA」号は自力でコンスタンツァ港(ルーマニア)までたどり着いたそうだ。
ロイター通信いわく、「AYA」号は左舷側の貨物倉やクレーンに大きな被害を受けたとのこと。また、ニュースサイト「ビジネスインサイダー」は今回の事件によって、黒海穀物回廊をめぐる緊張が一層高まるとの見方を伝えた。
画像:X @ZelenskyyUa
ただし、英国防省は10月3日の発表の中で、黒海の穀物輸送路が今後もロシア軍の攻撃対象となる可能性を否定。実際、9月11日に発生した「AYA」号の被弾以降、黒海で民間船が攻撃を受けたという報告はない。
事件を受けてルーマニア外務省は声明を発表。「ウクライナに対する違法かつ不当な戦争における前例のないエスカレーション」だとして、ロシアを非難した。
ルーマニア外務省はさらに、「貨物船に対する意図的な攻撃は、海上での戦争行為について定めた国際人道法に対する重大な違反となる」と続けた。また、米国をはじめとする各国もロシア軍による民間船攻撃を非難している。