ロシア軍ドローンにスペースX社の「スターリンク」が搭載されていた?
9月25日にウクライナで撃墜されたロシア軍のドローンに、スペースX社が運用する衛星インターネットアクセスサービス「スターリンク」の端末が搭載されていたとして話題になっている。この主張の根拠となったのはTelegramチャンネル「Polkovnyk GSh」が公開した画像だ。
『ニューズウィーク』誌いわく、このドローンはイランが作り出し、ロシアでも製造が行われるようになった「シャヘド136」であると特定済みだ。ただし、ウクライナ政府はこの件に関するコメントを拒んでいる。
画像:Telegram @war_home
また、『ニューズウィーク』誌はウクライナの軍事情報サイト「Defense Express」が掲載した画像を引用したが、これはTelegramチャンネル「Polkovnyk GSh」が投稿したものと同じだった。ただし、同誌はこの画像の真偽を独自に確認することはできなかったとしている。
画像:Telegram @war_home / Edited by The Daily Digest
ウクライナの軍事情報メディア「Defense Blog」によれば、スターリンク端末は画像や動画をはじめとするデータを確実に送受信することができると考えられているそうだ。つまり、ウクライナ軍にとってもロシア軍にとっても便利なツールとなり得るわけだ。
画像:Telegram @war_home / Edited by The Daily Digest
さらに、スターリンク端末を搭載したドローンを利用すれば、遠隔情報収集も可能となるため、偵察や攻撃といった場面で大きな威力を発揮することとなる。
「Defense Blog」いわく、スターリンク端末を搭載したドローンはリアルタイム制御ができるため、時差なしでターゲットに照準を合わせることができるのだ。
「Defense Blog」のインタビューに匿名で応じたあるウクライナの高官は、ロシア軍が運用するスターリンク付きドローンについて、「敵は任務中にターゲットを自在に選択できるようになるため、(ウクライナ軍にとって)新たな課題が生じる」とした。
画像:Telegram @war_home / Edited by The Daily Digest
同ブログによれば、ロシア軍はスターリンクによってドローンの射程距離を延ばすことができるほか、妨害電波の影響を避けることも可能になるそうだ。
衛星リンクを備えた偵察・攻撃型ドローンの強固な通信システムは戦場における大きな脅威となる。「Defense Express」によれば、「シャヘド136」がスターリンク端末の搭載機として選ばれたのは、このドローンが大型であるためだと見られている。
同メディアいわく:「シャヘドドローンが選ばれたのは、およそ2,000キロメートルという航続距離に加えて、機体内部の容積がかなり大きいためだろう」また、同メディアによれば、イーロン・マスク率いるスペースX社は製品をロシアに輸出していないという。
ウクライナ軍参謀本部によれば、9月25日にロシア軍が発射したドローン32機のうち28機がウクライナ軍によって撃墜されたが、スターリンク端末を搭載したものはこの1機を除いて報告されてないとのこと。
『ニューズウィーク』誌によれば、ウクライナ軍は戦場での通信やドローン制御にスターリンクを活用しているそうだ。しかし、ウクライナ当局はロシア軍がこのサービスを戦場で利用することに警戒感を強めている。
今年2月、ウクライナ国防省情報総局はロシア軍がウクライナの戦場でスターリンク端末を使用しているとして非難。同情報局のアンドリー・ユソウ報道官はロシア軍によるスターリンクの利用について、「組織的」なものになりつつあると指摘した。
スターリンクを運営しているのは米国人ビリオネア、イーロン・マスクが率いるスペースX社だ。しかし、同社はいかなる機器もロシアに輸出しておらず、同国内ではサービスの提供も行っていない、と公言している。
『ニューズウィーク』社によれば、スターリンク社は声明の中で「スターリンクはロシア国内では稼働しておらず、サービスも機能しません。スペースX社がロシアでスターリンクを販売したりマーケティングしたことはないほか、関連機器をロシア国内に出荷したこともありません」と断言したという。
スペースX社はさらに、「スターリンク端末が制裁対象者や無許可の人物によって利用されているとの報告を受けた場合、事実確認を行った上でその端末を使用不能にします」とコメントしている。
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