ロシア軍が北朝鮮から入手したミサイル、命中率の低さを露呈
米国は今年1月4日、ロシアが北朝鮮から弾道ミサイルを受け取り、ウクライナの戦場で使用しているとして両国を非難した。かし、最近の報道によれば、こういった北朝鮮製ミサイルはあまり役立っていない可能性もあるようだ。
ウクライナのアンドリー・コスティン検事総長によれば、ロシア軍がウクライナに向けて発射した北朝鮮製ミサイルはおよそ半数が目標に命中せず、なかには空中爆発するものもあったという。
ロイター通信は同検事総長のコメントとして、ロシアが昨年12月下旬から今年2月下旬にかけてウクライナに向けて発射した北朝鮮製の弾道ミサイル50発のうち21発が命中しなかったと報道。
同検事総長によれば、北朝鮮製ミサイルはおよそ半数が「プログラムされた軌道を外れて空中爆発した」とされ、お世辞にも性能がよいとは言えない。
ウクライナ当局は北朝鮮製ミサイルの実態を調査するため破片の回収を行ってきたが、空中爆発してしまったものについては回収すら不可能だったという。
ただし、北朝鮮製ミサイルの命中率が著しく低いことは以前から知られていた。ニュースサイト「ビジネスインサイダー」いわく、コスティン検事総長による今回のコメントは別の高官が3月に発表したデータと矛盾しないとのこと。
共同通信が3月に伝えたところによれば、ウクライナ検察戦争犯罪局のユーリ・ベロウソウ局長は、ロシアが発射した北朝鮮製ミサイルのうち目標に命中したものは20%に過ぎなかったと述べていた。
ベロウソウ局長は北朝鮮製ミサイルについて「きわめて粗悪」とした。ただし、その時点で50発の北朝鮮製ミサイルが発射されており、ウクライナにおける犠牲者は24人、負傷者も100人あまりに上っていた。
同局長が懸念するのは、北朝鮮が自国製兵器のデータを集めるため、ウクライナをミサイル実験場がわりに利用する可能性だ。いわく:「私が思うに、北朝鮮はウクライナを(実験場として)利用しているに違いありません」
ベロウソウ局長によれば、ロシアがウクライナに向けて発射した北朝鮮ミサイルは80%がターゲットに命中せず、およそ半数は空中爆発してしまったようだ。また、3月の段階では、北朝鮮製ミサイルがウクライナの防空網をかいくぐれるかどうかについては検証が行われている最中だった。
共同通信によれば、ロシアがウクライナで使用した北朝鮮製ミサイルは短距離弾道ミサイル「火星11A」および「火星11B」だとされる。ベロウソウ局長はこれらのミサイルについて、ロシア製ミサイルほど有効ではないと述べている。
しかし、『Air & Space』誌によれば、米国のロイド・オースティン国防長官は5月8日に行われた上院歳出委員会の国防小委員会で、北朝鮮およびイランによる武器支援がロシア軍を助けているとコメント。
オースティン国防長官いわく:「ロシアが北朝鮮から受け取った相当数の弾薬やミサイル、さらにイランから手に入れたドローンはロシア軍が態勢を立て直し、主導権を取り戻す上で少し役に立った」
プーチン大統領は昨年9月に訪朝し、北朝鮮の金正恩総書記と軍事分野での協力などについて議論を行った。ロイター通信によれば、西側諸国の専門家たちはこの首脳会談について懸念を示したという。
「ビジネスインサイダー」は「プーチン政権がウクライナ侵攻で使用するための弾薬をますますたくさん入手するばかりか、北朝鮮も実地試験を通して自国製兵器の品質向上を図るのではないか」と指摘しているが、どうやらこの懸念は現実のものとなってしまったようだ。
また、米国務省が今年2月に行った発表によれば、昨年9月以降に北朝鮮からロシアに送られた「武器弾薬や軍需物資」はコンテナ1万個分におよぶとのこと。