ロシア軍がウクライナのHIMARSとパトリオットミサイルを多数破壊?
ロシアのショイグ国防相が行った主張によれば、ロシア軍はここ3ヵ月間でウクライナが西側諸国から取得した主要な兵器をいくつか破壊したという。
『ニューズウィーク』紙によれば、セルゲイ・ショイグ国防相はウクライナ軍が高機動ロケット砲システム(HIMARS)6基と防空用のパトリオットミサイル5基を失ったと述べたようだ。
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無論、ショイグ国防相が主張した数字は鵜呑みにできるものではない。しかし、3月にロシア軍が行った攻撃によって、HIMARSが少なくとも1基破壊されたことは映像から確かめられている。
ロシア軍はドローンを利用して、ドネツク州の森林沿いで活動するウクライナ軍のHIMARSと支援車両を発見。『フォーブス』誌によれば、ロシア軍はすぐさまミサイルを撃ち込み、これを破壊したという。
写真:Telegram @The_Wrong_Side
このHIMARSはロシア軍のミサイルで破壊されたとき、昼間だというのに目につきやすい場所に待機していたらしい。この種の兵器は敵に見つかるのを防ぐため、夜間に用いられることが多いのだが、ウクライナ軍の第27ロケット砲兵旅団がなぜ今回に限って例外的な運用を行っていたのかについては不明だ。
『フォーブス』誌のデイヴィッド・アックス記者いわく:「いずれにせよ、ウクライナ軍にとっては大きな痛手です。一方、ロシア軍にしてみれば、これまで米国製のHIMARSに手も足も出ませんでしたから、今回はようやく一矢報いたというところでしょう」しかし、これによってウクライナ軍が致命的な被害を被ったというわけではないとのこと。
ウクライナはこれまでに米国からHIMARSを39基、英国やドイツ、イタリアから多連装ロケットシステムMLRSを25基受け取っていた。ロシア軍が本当にHIMARSを6基破壊したのであれば、ウクライナ軍にとって大きな問題となる可能性がある。
ショイグ国防相の言うように、ロシア軍が今年に入ってHIMARSを6基破壊したというのが本当なら、ウクライナ軍は保有するHIMARSの15%強、外国製ロケット砲全体の9%強を失ってしまったことになる。
『タイム』誌が2023年1月に掲載した記事によれば、HIMARSはロシア軍の補給基地や弾薬庫、インフラ、補給経路を攻撃する上で効果を発揮してきたという。
また、防空用のパトリオットミサイル「MIM-104」も、ロシア軍のミサイルや長距離ドローンから都市などを防衛する上で大いに役立ってきた。
英国王立防衛安全保障研究所で空軍を専門に扱うジャスティン・ブロンク氏いわく、「パトリオットはウクライナでかなり劇的な活躍を見せてきました」とのこと。
『ニューズウィーク』誌の報道によれば、ロシア軍は3月初旬にミサイル攻撃を実施し、ウクライナが輸送中だったパトリオットミサイルを2基まとめて破壊した可能性があるという。ただし、この情報は今のところ裏付けがとれていないようだ。
ショイグ国防相はロシア軍が今年に入ってからHIMARSやパトリオットミサイル以外にも、ウクライナ軍の兵器を多数撃破したと主張。具体的には米国製の「ブラッドレー」歩兵戦闘車27両、ドイツ製戦車「レオパルト」5両を破壊したと述べている。
ショイグ国防相の発言がどこまで信頼できるのか疑問は残るが、ブラッドレー歩兵戦闘車に関しては正しいかもしれない。というのも、アウディイウカをめぐる戦闘でウクライナ軍の第47独立機械化旅団が運用していたためである。
ショイグ国防相はさらに、今年に入ってからウクライナ軍が出した死傷者数について、少なくとも7万1,000人とした。ただし、死傷者数については両国ともに正確な最新データを公表していないため、裏付けを取るのは非常に難しいだろう。
一方、『ニューズウィーク』誌によれば、ショイグ国防相がウクライナ軍の死傷者数として挙げた数字は「ウクライナ側が発表したロシア軍の死傷者数とほぼ同じだ。ウクライナの集計によれば、ロシア軍は今年に入っておよそ7万2,000人の死傷者を出したとされている」とのこと。