ロシア軍がウクライナ侵攻で失った戦車が8,000台を突破
プーチン政権がウクライナ侵攻に乗り出してからというもの、ロシア軍は多大な損失を出し続けてきた。だがこのたびウクライナ軍参謀本部が発表したデータによれば、その規模は新たな段階に突入してしまったようだ。
ウクライナ軍参謀本部の推計によれば、ロシア軍が失った戦車の数は6月22日に8,000台を突破。6月25日時点で8,035台となっている。
ただし、『ニューズウィーク』誌が指摘するように、両陣営とも自らの戦果を実際より大きく宣伝する傾向があるため、今回の発表も鵜呑みにすることはできない。では、ロシア軍がウクライナで実際に失った戦車の数はどれほどなのだろう?
けれども、この問いに答えるのは容易ではない。ロシア側は自軍が失った戦車の数を明かしていないし、ウクライナ側の発表は敵の損害を過大に見積もっているためだ。
そこで、参考になるのは第三者によるデータだ。中でも、オランダのオープンソース・インテリジェンスサイト「Oryx」はその信頼性の高さに定評がある。
「Oryx」は開戦以来、ロシア軍およびウクライナ軍が失った装備の数を集計しているが、それによればロシア軍が失った戦車の数は3,100台を突破したとされる。
「Oryx」の発表によれば、ロシア軍が失った戦車の数は6月25日の時点で3,160台。その内訳は撃破2133台、損傷158台、放棄352台、鹵獲517台となっている。
「Oryx」が各軍の損失として集計するのは写真や動画などで実証された場合だけなので、ロシア軍が実際に失った戦車の数はもっと多い可能性が高い。
「Oryx」いわく:「このリストに含まれているのは入手可能な写真や映像によって損失が確認された車両だけです。そのため、実際に撃破された装備の数はこの集計を大幅に上回るはずです」
一方、英国のレオ・ドハーティ軍部大臣(Minister of State for the Armed Forces)が最近行った発言は、「Oryx」の発表を裏付けるものとなりそうだ。
軍事情報サイト「UK Defence Journal」によれば、ドハーティ氏は4月27日に行われた野党との質疑応答の中で、ロシア軍は3,000台近い戦車を失ったという見方を明かしたのだという。
同氏はさらに、「開戦以来、ロシア兵およそ45万人が死傷し、数万人が脱走したものと見られます」とした。
「また、ウクライナ軍は開戦以来、ロシア軍の装甲車1万台あまりを撃破または鹵獲したと推定されますが、このなかには主力戦車およそ3,000台も含まれます」と説明。
同サイトによれば、放棄されたロシア軍の装備品はその後、ウクライナ軍によって鹵獲されるケースが多いため、数値は変動する可能性があるという。また、鹵獲された装備品は最終的に破壊されることもあるようだ。
アトランティック・カウンシルのピーター・ディクソン氏は5月9日のコメントの中で、「戦車3,000台の損失が視覚的に検証されたということは、プーチン政権によるウクライナ侵攻がロシア軍に与えた壊滅的な損害を浮き彫りにしている」と指摘。
一方、ウクライナ軍も開戦以来、多数の戦車を失っているが、写真や動画を通して確認された損害は合計852台とロシア軍の3分の1に留まっている。
また、その内訳は撃破579台、損傷72台、放棄67台、鹵獲134台だ。もちろん、米国製の「M1 エイブラムス」をはじめ、西側諸国から供与された戦車も含まれている。
『ニューズウィーク』誌いわく、2024年3月に国際戦略研究所が発表した『軍事バランス2024』という報告書によれば、ロシアは依然としてさまざまな型番の戦車を1,750台保有しており、さらに4,000台がモスボール保管されている可能性もあるとのこと。