ロシア軍、戦列が伸び切って攻勢に出られない
英国国防省による最新の報告いわく、ロシア軍はあまりに広範囲に展開してしまったせいで戦力が薄くなり、反撃に転ずることができないのだという。
いまも続くウクライナ侵攻に関する新たな報告では、ウクライナ軍に対して有効な反撃を行い得るような規模の戦力をほとんど維持できていないと専門家が分析している。
だが、アメリカに拠点を置くシンクタンク「戦争研究所」による評価は異なっている。同研究所によると、ロシアは今年初夏から集めていた予備戦力を用いて、ウクライナ軍に対する攻勢を実行するはずだと予測しているのだ。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は6月末に、新たな予備戦力を構築していることを宣言している。その戦力がウクライナに対する脅威となる恐れがある。
ロシア国営通信社「RIAノーボスチ」によると、ショイグ国防大臣はこう語ったという:「6月末には予備戦力が構築され、近いうちに組織化も行われる」『ウクライナ・プラウダ』紙が翻訳して伝えている。
戦争研究所によると、モスクワに新たに置かれた第25混成軍がショイグ国防大臣の語った予備戦力と見られるが、それほど効果的な戦力とは見込まれないという。
第25混成軍は3万人の契約軍人からなり、ふたつの自動車化狙撃師団と、数は不明ながら複数の戦車大隊と砲兵大隊が含まれるという。
ウクライナ国防省情報総局長キリーロ・ブダノフによると、第25混成軍が戦闘可能になるには今年10月か11月末頃までかかると見られるという。
戦争研究所はブダノフ情報総局長による情報の裏付けは取れなかったとしているが、それを否定する情報もないとは付け加えている。
ロシアの沿海地方(日本海沿岸地域)で公式に掲示された兵士募集ポスターによると、新たに参加した兵士は9月1日から12月1日まで訓練されたあと、ザポリージャ州あるいはヘルソン州に配備されるとなっていた。
戦争研究所はまた、ウクライナのオレクシー・フロモフ准将による、第25混成軍は2024年まで戦闘可能にはならないとの発言も報告している。
だが、イギリス国防省によると、ロシアの予備戦力はすでにドネツク州やルハンシク州などの激戦区に送られていると見られるという。
イギリス国防省の報告では、第25混成軍は9月中旬から配備が開始されており、8月には移動を開始していた可能性があるという。
予備軍の2つの部隊、第67自動車化狙撃師団と第164独立狙撃旅団がすでにセベロドネツクやクレミンナ東部で戦闘中だという報告もある。
英国国防省の分析では、第25混成軍の戦力が切れ切れに投入されているのはロシア軍の伸び切った戦列を補うためとされ、「ロシアが計画していた新たな攻勢がここ数週間のうちに始まる可能性は低い」と見られている。
戦争研究所も、第25混成軍は「短期間で配備されたことを考慮すると、大規模な攻撃に有効に活用できるとは思われない」と述べ、「規定の人数が満たされていない可能性も高く、ふたつの師団という規模から想定される戦力は大きく下回っているだろう」とも付け加えている。
同研究所のアナリストによると、第25混成軍の兵士らは2022年に動員された兵士と同様に、十分な訓練を経ていないと見られるという。だが、同時に、ロシア政府はそのような予備兵力の投入を「許容可能なリスク」と考えているのだろう、とも指摘している。