ロシア軍の死傷者数、ひと月あたりで過去最大を記録
2022年2月にウクライナに対する全面侵攻を開始して以来、ロシア側では死傷者の数が増え続けている。ウクライナ国防省の発表によれば、2024年5月にはひと月あたりの死傷者が過去最大となったという。
6月1日、ウクライナ国防省はSNSを通じて5月のロシア軍の死傷者数を発表。その数字は驚くべきものだった。
発表によると、2024年5月のロシア側の死傷者は3万8,940人に及んだという。発表では「全面侵攻開始以来、一月あたりの死傷数としては過去最大」とも言われている。
発表では、死傷者数を示す画像と共に「ウクライナを不法に占拠するものにはふたつの選択肢がある。我が国から出ていくか、我々の手で葬られるかだ!」という文章が添えられていた。だが、ウクライナ国防省が発表したこの数字はどれほど正確なのだろうか。
当然ながら、ウクライナはいままさにロシアと戦闘を行っている当事者であり、そのウクライナから提示された死傷者数を額面通りに受け取ることは難しい。だが、第三者による推計をもとにその正確性を判断することはできる。
『ニューズウィーク』誌のエリー・クック記者はウクライナの提示した数字を検証することはできなかったとし、こう述べている:「戦場での被害者数は正確に把握するのが困難なことで有名です。専門家も、ロシアやウクライナの発表した数字を鵜呑みにしないよう注意を促しています」
イギリス国防省もロシア側の死傷者を調査しており、最近もロシア側の死傷者を独自の推計に基づいて発表している。
5月31日、イギリス国防省はロシア側の推計総死傷者数が50万人に達したと発表した。この数字は同日にウクライナ側が発表した数字に近いものだ。
同じ5月31日、ウクライナ軍参謀本部はロシア側の死傷者数が50万7,650人に達したと報告している。ただし、死者と負傷者の内訳は示されていない点には注意が必要だ。
イギリス国防省はこう述べている:「2024年に入ってからロシア側の死傷者数は多くなっており、5月は一日あたり平均1,200人が死傷している。これは開戦以来最高水準だ」
また、『ニューズウィーク』誌によると、ウクライナ側からも同様の報告がなされており、5月には一日平均1,000人以上のロシア兵が死傷しているとされていたという。5月中旬には一日で1,740人の死傷者が出たこともあり、同誌によるとこれは一日での死傷者数としては開戦以来最大とされる。
5月に入ってからロシア側の死傷者数が増加している理由は容易に推測できる。イギリス国防省はロシア側が戦闘を消耗戦に持ち込みつつあることを理由として挙げている。
5月31日に発表されたイギリス国防省のレポートにはこうある:「死傷者数の増加は、ロシア側が前線の広い地域において消耗戦的な攻勢に出ていることが理由である公算が高い」
レポートでは「ロシア兵の大半は限定的な訓練しか受けておらず、複雑な攻撃作戦を実行できない可能性が非常に高い」とも述べられている。だが、ロシア軍の問題はこれだけではない。
イギリス国防省によると、兵が低練度なせいでロシア軍は「ウクライナ軍の防御を破るために、小規模かつ消耗の激しい波状攻撃を余儀なくされている」といい、これがロシア側の死傷者数の増加につながっているというのだ。
「ロシアはこういったアプローチを継続するために、追加戦力を動員し続けている。だが、追加戦力を前線の補充に回し続けていると、より作戦遂行能力の高い部隊を構成することは難しくなるだろう」
6月11日時点では、ウクライナ軍参謀本部はロシア側の総死傷者数を52万850人と見積もっている。6月の死傷者数が5月を上回るかは現時点では不明だが、ロシアが苦境に立たされていることは確実なようだ。