ロシア軍の人海戦術はもはや継続困難?:方向転換を予測する専門家たち

長期化の一途をたどるウクライナ侵攻
長期戦を支えた数的優位もついに終わりつつあるか
軍事アナリストによる指摘
過剰な損失に耐えられない
「使い捨て精神」を捨てきれないロシア軍
ロシアが投入できる資源に限界はあるのか?
すでに限界の兆しは出てきている
数的優位は翌年にかけて減少か
現在の生産数では損害をカバーできない
ソビエト時代からの在庫が尽きつつある
戦車の例
新規生産可能な数はかなり少ない
多くの装備を失っているロシア
実数はさらに上か
戦略の変更を余儀なくされる
人的資源でも同様の問題を抱えている
いままでのような攻撃的作戦は取りづらくなる
累計死傷者数は67万人以上か 
長期化の一途をたどるウクライナ侵攻

プーチン大統領がウクライナへの全面侵攻を開始した2022年2月、当初は米国に次ぐ世界第2位の軍事大国による軍事作戦に世界が慄いた。しかし、いざ始まってみると人々が想像したようにはことは運ばなかった。

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長期戦を支えた数的優位もついに終わりつつあるか

数ヶ月にわたる激しい戦闘の末、ロシア軍はせき止められ戦線は膠着した。とはいえ、ロシアには膨大な武器弾薬や人的資源があり、それに頼って長期戦を戦うことができた。だが、そういった事情もついに変わりつつあるかもしれない。

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軍事アナリストによる指摘

アメリカの軍事アナリストで、カーネギー国際平和基金でロシア・ユーラシア・プログラムのシニアフェローも務めているマイケル・コフマン氏によると、ロシアはウクライナに対する最大のアドバンテージだった数的優位をもうすぐ失う可能性があるというのだ。

過剰な損失に耐えられない

コフマン氏は米紙『The Intelligencer』のベンジャミン・ハート記者による取材に応え、ロシア側はあまりにも過大な損失を被っており、ウクライナに対して持っていた数的優位というアドバンテージを2025年冬には失うことになるとしている。

「使い捨て精神」を捨てきれないロシア軍

ハート記者によると、侵攻開始以来、アナリストらはロシアがウクライナに対して持っている数的優位という要素に注目してきたという。だが、最近こそやや改善されてきたとはいえ、ロシアはいまだに「使い捨て精神」を捨て切れていないのだという。

ロシアが投入できる資源に限界はあるのか?

ハート記者はコフマン氏に次のように質問している:「ロシアが投入できる兵士の数に限界はあるのでしょうか? ロシアの持つ数的優位というアドバンテージは、資源の減少や政治的圧力などによって覆されることはあるのでしょうか?」これに対するコフマン氏の回答は意外なものだった。

すでに限界の兆しは出てきている

コフマン氏によるとロシアはこれまで、激しい消耗戦を人的・物的資源を使い捨てることで乗り切ってきたという。だが、最近のロシア軍は「顕著な制限」のもと活動しており、数的優位を頼みにした行動は終わりを迎えつつあるかもしれないというのだ。

数的優位は翌年にかけて減少か

「(ロシアの)戦場における数的優位は今冬から翌年にかけて減少していくだろう」というのがコフマン氏の見積もりだ。同氏はその理由としてふたつの事実を指摘している。

現在の生産数では損害をカバーできない

まず、ウクライナにおける装備品の損耗はかなり激しく、ソビエト時代からの在庫は払底しつつある。「ロシアはソビエト時代の遺産を食い潰しており、現在の生産数は損耗に比べるとかなり少ないのです」とコフマン氏は指摘している。

ソビエト時代からの在庫が尽きつつある

実際、ロシアが抱えるソビエト時代の武器在庫が縮小しつつあるという報道もすでに出ており、コフマン氏の主張を裏付ける形となっている。2024年7月には『エコノミスト』紙が、ロシアが自らの生産能力を上回る数の損害を被っているという報道を出している。

戦車の例

同紙の報道では、ロシアは開戦以来175両のT-90M戦車を失ったとしている。だが、ロシアにおける戦車の年間生産数は90両ほどとされ、しかもその多くが古くなったモデルT-90Aの改修に充てられているという。

新規生産可能な数はかなり少ない

同紙はさらに、T-90Aの改修が終わった場合、新たに作れるT-20Mは年間28両ほどになるとの見積もりも伝えている。もしそうなればロシアにとっては大問題だ。

多くの装備を失っているロシア

オランダに拠点を置くOSINT組織「Oryx」は10月15日時点で、全面侵攻開始以来、計18,316の軍事装備をロシアが失ったことを確認したとしている。

実数はさらに上か

「Oryx」はまた、同組織の集計方法に鑑みるとロシアの実際の損失はこれよりも大きな数となるだろうともしている。こういった損耗はこれまでソビエト時代の在庫を使って補填されてきたが、その在庫も尽きようとしているというのがコフマン氏らの見立てだ。

戦略の変更を余儀なくされる

ただし、コフマン氏は「だからといって、ロシアの装甲車両が直ちに不足するということではありません」とも述べている。だが、ロシアは軍事行動における戦略方針を変えざるを得なくなり、多大な犠牲を払ってでも戦況を大きく変えるような行動は取りづらくなるだろうともしている。

人的資源でも同様の問題を抱えている

人的資源という観点でも、ロシアは同様の問題に直面している。ロシアはいまもなお、戦線に投入可能な潜在的人的資源を大量に抱えているが、現在の損耗率は持続可能なレベルを大きく超えていることも揺るぎない事実なのだ。

いままでのような攻撃的作戦は取りづらくなる

コフマン氏はこう述べている:「これもまた、ロシアが直ちに兵士不足に陥るという話ではありません。ですが、ロシアが苦慮していることも確かで、いままでのような攻撃的で損耗の激しい作戦を続けることはできないでしょう」

累計死傷者数は67万人以上か 

ウクライナ参謀本部による推計では、ロシア側には10月15日までの時点で67万1,400人の死傷者が出ているという。あくまでもウクライナが出した数字であることには注意が必要だが、イギリス国防省やアメリカによる推計とも大きく異なってはいない。

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