プーチン大統領、業界会議でロシア海軍の弱点をさらす:ドローン対策の不備を指摘
今年7月、プーチン大統領はロシアにおける造船業の発展や自国の安全保障に対する寄与について議論するため、会議を開催した。しかし、その冒頭で行った発言により、ロシア海軍の弱点が露見することになってしまったようだ。
議題となったのはロシア造船業界の実績を再検討すること、2023年に策定された海軍強化の方針に基づいた長期目標を定めることの2点だった。
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クレムリンが公表した議事録によれば、プーチン大統領は「みなさまご存じの通り、2030年に向けた海軍政策の基本方針によってロシア海軍の強化に向けた包括的な取り組みが行われることになっており、そのための明確な目標や基準も示されています」と述べたとされる。
プーチン大統領が言及した「明確な目標」には、艦船や航空機、沿岸部の施設、海軍基地のインフラを発展させることに加え、国際社会におけるロシア海軍の地位を再強化することが含まれていた。
さらに、プーチン大統領は今回の発言の中で、ロシアは海軍の戦闘能力向上を目指していると説明。この目標を達成するため、すでに新たな艦船の建造や兵器の追加がなされており、大きな進展があったとした。
プーチン大統領いわく、ロシアの造船業界は2022年に24隻、2023年に33隻の新造艦を国防省に納入。2024年末までに、さらに40隻が納入される見込みだという。
このように、ロシア海軍には続々と新造艦が納められているわけだが、プーチン大統領は心穏やかではないらしい。外国の敵対勢力やロシアを脅かす西側諸国のエリート階級に対処するため「きわめて真剣かつ迅速」に行動する必要がある、と強調したのだ。
このとき、プーチン大統領は自身や取り巻きがロシア海軍の弱点だと考えているであろういくつかの要素に言及したが、それらはまさにウクライナの戦場でウクライナ軍に付け込まれ、大きな損害を出している部分だった。
プーチン大統領は出席者たちを前に、「艦隊の戦闘能力を向上させるという目標を達成するには、ドローンを含む遠隔的な脅威を探知するシステムの導入にとりわけ力を入れる必要があります」とコメント。
さらに、防空システムを利用して上空を支配するだけでなく、「敵が海中で運用する自律システムに対抗する」ためにも、水上・水中における監視能力の強化が欠かせないとした。
プーチン大統領いわく:「我々は艦隊や海軍基地、作戦拠点を周囲による攻撃のリスクから守らなくてはなりません。また、艦隊の航空偵察能力を向上させ、偵察・戦闘用の電子戦装備を拡張する必要もあるでしょう」
同大統領はさらに「海軍航空隊と沿岸ミサイル部隊、砲兵隊の現状と改善点を評価することも欠かせません」と述べ、艦船には「軽量で自動式の機関銃座やドローンオペレーター」をはじめとする、追加の装備を搭載しなくてはならないとした。
プーチン大統領のコメントの背後にあるのは、ロシア海軍がウクライナの戦場で被った手痛い損害という経験だ。軍事関連のNPO「アメリカ海軍協会(USNI)」の推計によれば、ロシア海軍は開戦以来、軍艦だけで15隻も失ったとされている。
一方、オランダのオープンソースインテリジェンス大手「Oryx」は検証可能な画像や映像に基づいて、ロシア海軍が失った艦船は合計26隻であり、うち19隻が撃沈、7隻が損傷したものと見られると発表。
『ナショナル・インタレスト』誌は2024年5月の記事の中で、ロシア海軍はウクライナ侵攻の勃発以来、著しく弱体化したと報じた。そのおもな要因は、ウクライナ軍が革新的なドローンや長距離ミサイルを使用するようになったことだという。
英国防省によれば、5月19日にはロシア黒海艦隊に所属するミサイル艦「ツィクロン」がクリミア沖で撃沈されたという。なお、この攻撃には米国が供与したATACMSが使用されたとのこと。
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画像:Wiki Commons By Mil.ru, CC BY 4.0