ウクライナが撃墜したロシア発ミサイル「キンジャール」
伝えられるところによれば、ロシア軍はウクライナに対して大規模ミサイル攻撃を仕掛けたものの、ウクライナ防空部隊がこれをすべて迎撃。その際、ロシア軍の誇る極超音速ミサイル「Kh-47M2 キンジャール」6発も撃墜されたと見られている。
『ニューズ・ウィーク』紙によれば、ロシア軍は5月16日早朝、ウクライナに向けて18発のミサイルを発射。しかし、ウクライナの首都軍政当局トップ、セルヒー・ポプコはミサイルがすべて「探知・破壊された」ことを明かしたとBBC放送は伝えている。
また、ウクライナ参謀本部も公式SNS上で、「18発のミサイルはすべて、ウクライナ空軍の防空部隊によって撃破されました」と報告。
ロシア軍の発射したキンジャール6発がすべて迎撃されたというニュースが届いたのは、5月4日にウクライナが米国製ミサイル防衛システム「MIM-104 パトリオット」を利用して初めてキンジャールの撃墜に成功したという報告がなされた直後の出来事だった。
ウクライナ空軍のミコラ・オレシチュク司令官は5月6日、Telegram上で「歴史的快挙をウクライナ国民とともに祝福したい」とコメント。
写真:Telegram @MykolaOleshchuk
オレシチュク司令官は続けて「我々は『比類なき』キンジャールを撃墜したのだ」と述べ、MiG-31kから発射された極超音速ミサイルを5月4日に迎撃したことを明らかにしている。
オレシチュク司令官はウクライナ国旗に「パトリオット」というコメントを付したメッセージを投稿したものの、キンジャールを迎撃したのが米国製パトリオットだったのかについては明言を避けた。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は、キンジャール撃墜の報はただちに米当局にもたらされ、同国の軍事アナリストたちもウクライナ側の主張を検証できたとしている。
オレシチュク司令官はさらに、「しかるべき時が来たら、いつ、どこで、何を用いて迎撃したのか必ず報告する」とコメント。詳細が明かされるのはまだ先のことになりそうだ。
ロイター通信の報道によれば、「Kh-47M2 キンジャール」は核弾頭搭載可能な空対地ミサイルであり、マッハ10の速度で2,000キロメートルの距離を飛行することができるとされている。
写真:Kremlin.ru, Wiki Commons
『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によれば、プーチン大統領は2018年に「(キンジャールは)既存の、あるいは今後開発されるであろうどのようなミサイル防衛・防空システムに対しても無敵だ」と豪語していた。
バイデン政権は当初、ウクライナにパトリオットを提供することに消極的だった。しかし、昨年12月にゼレンスキー大統領がワシントンD.C.を訪問すると姿勢を翻し、同システムをウクライナに提供すると発表。
『ポリティコ』紙によれば、ウクライナ軍の防空隊員は米国オクラホマ州のフォート・シル基地でパトリオットの扱い方を学んでいたが、予定よりも早く訓練プログラムを終えることができたようだ。
米軍火器研究センター(Fires Center of Excellence)のシェーン・モーガン准将は、「ウクライナ兵はとても飲み込みが早く印象的でした」と述べている。
4月19日、ウクライナに最初のパトリオットミサイルが到着。同国の当局者らはこれを歓迎したが、AP通信はパトリオットによって「戦争の形が大きく変わることはない」という、一部専門家たちの懐疑的な見解を伝えていた。
ところが、パトリオットはウクライナ到着からわずか数週間で成果を挙げ、それまでに提供された兵器と同じくらい同国の防衛に役立つことが判明。
AP通信によれば、ウクライナ空軍のユーリ・イフナット報道官はウクライナ局「24 Kanal」のインタビューの中で、「パトリオットは時代遅れの米国製兵器であり、ロシア製兵器こそ世界一だという声もありました」とコメント。
そして、「ところが、(パトリオットは)極超音速ミサイルに対しても有効であることが立証されたのです。ロシアにとっては面目丸つぶれでしょう」と言葉を続けた。
パトリオットが今後どのような戦果を挙げることができるのか、そもそもキンジャールを撃墜したのは本当にパトリオットだったのかなど、不明な点も少なくない。とはいえ、ミサイル防衛システムの有効性を示唆するこのニュースは、反転攻勢を目指すウクライナ軍にとって朗報だと言えるだろう。