核戦争の可能性を高めかねない、ロシア南西部のレーダー基地への攻撃
2022年2月に開始したロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとして、専門家たちが世界規模の紛争が勃発するリスクについて警鐘を鳴らしている。
理論物理学者の故アインシュタインは、第3次世界大戦で用いられる兵器はわからないが、第4次世界大戦では石とこん棒が用いられるだろうと述べた。
なかでも気になるのが、米国科学者連盟で核戦略を専門とするハンス・クリステンセン氏の見解だ。同氏は米政府の核兵器使用に関する方針を国民に説明する立場にある。
クリステンセン氏はX投稿を通じて、ウクライナ侵攻の中で小規模だが破局的な状況が発生すれば、ロシアと西側諸国の核戦争に発展するおそれがあると警告。
クリステンセン氏によれば、ロシア南西部の都市アルマヴィルにあるレーダー基地が(ウクライナ軍などにより)攻撃されたことで、ロシアは諸外国からの核攻撃を察知したり、それが誤報である場合にそのことを突き止めたりする能力を部分的に失ってしまったかもしれないという。
画像:nukestrat / X
軍事情報サイト「The War Zone」によれば、このレーダー基地は黒海およびクリミア半島をカバーしていた可能性が高いと見られており、クレムリンはウクライナによる攻撃を警戒していたとされる。
そして、このレーダー基地が大きな損傷を受けていた場合、即応体勢を整えたロシアが核兵器を戦場に打ち込んでしまう可能性があるというのだ。
また、ロシア側が報復攻撃を行う可能性も指摘されている。その場合、ウクライナのレーダー基地が真っ先に標的になると見られるが、NATO加盟国に対する直接攻撃が行われることも考えられる。
しかし、レーダー基地攻撃をめぐって核兵器が使用される可能性を指摘しているのはクリステンセン氏だけではない。『デイリー・ミラー』紙によれば、ロシア国営の宇宙開発企業「ロスコスモス」の前総裁で現在は上院議員のドミトリー・ロゴジン氏も、ロシア領内のレーダー基地に対する攻撃をきっかけとして核戦争が発生すると見ているようだ。
ただし、ロゴジン氏はレーダー基地への攻撃について、米国がウラで画策したものであり、少なくとも米国はウクライナから事前に計画を知らされていたはずだと主張している。
上院議員のドミトリー・ロゴジン氏はロスコスモスの総裁を務めていたころ、最新式の大陸間弾道ミサイル「RS-28 サルマト」の開発に関わっていた。
『デイリー・メール』紙いわく、アルマヴィルのレーダー基地はロシア全土に10ヵ所ある重要な基地のひとつで、損傷を受ければ修復に数ヵ月を要するかもしれないとのこと。ロシアと西側諸国の緊張は高まる一方だが、果たして核戦争の危機を回避することはできるのだろうか?