ロシア版マクドナルド:「フクースナ・イ・トーチカ(美味しい、ただそれだけ)」
「ロシア版マクドナルド」はどんな味なのだろう?ロシア版マックこと「フクースナ・イ・トーチカ」(「美味しい、ただそれだけ」)が国際化を始め、現在ロシアまで行かずともべラルーシで味わうことができるようになった。
ニュース専門局「ユーロニュース」によれば、このファーストフードレストランチェーンのオーナー、アレクサンドル・ニコラエヴィッチ・ゴボル氏(写真)は報道陣に対し、「我々は新しい市場への参入を開始した。これにより『フクースナ・イ・トーチカ』はロシアだけでなく、ベラルーシでも営業することになる」と語った。
「フクースナ・イ・トーチカ」は11月のプレスリリースを通じ、ベラルーシでファーストフードチェーンを展開する「KSB Victory」とフランチャイズ契約を締結したと発表している。「フクースナ・イ・トーチカ」はベラルーシ国内の主要6都市に25店舗をオープンする予定だ。
「フクースナ・イ・トーチカ」は、ロシアから撤退したマクドナルドの後継店として登場したチェーンだ。しかし、今夏のオープン以来、ファストフードの必須メニューであるフライドポテトが不足するなど厳しい経営を迫られている。
この夏にさまざまなメディアが報じた内容によれば、同チェーンのトップはロシアのビジネスチャンネルに対し、フライドポテトの生産者がロシアへの供給を拒否している上、国内生産の増加には問題が山積だと明かしたという。
オーナーのパロエフ氏はRBCテレビに対し、「今何が起こっているかといえば、皆さんご承知の状況により、多くの外国企業がロシアへの商品納入を拒否しているのです」と語った。
パロエフ氏はさらに、フライドポテトを生産する「(ロシアの)友好国」と「非友好国」の工場がともに「非友好国」に本社を置く5、6社の大手企業に属していることから、すべての工場がロシアへの商品供給を拒否していると説明した。
さらにパロエフ氏は、今年のロシアではフライドポテトに適した品種のジャガイモの収穫量が低いこと、さらにフライドポテト加工が可能な会社は国内にわずか数社しかないことを説明。
2022年5月16日、米ファーストフード大手のマクドナルドはウクライナ戦争を理由としてロシア市場からの完全撤退を発表した。この日、何百万人ものロシア人が大きな失望を味わったことだろう。
しかしそこは懲りないロシア。1か月も経たないうちに、かつてマクドナルドだった全国の店舗に、新たなロシア資本の店がオープンしていった。
新たなハンバーガーショップチェーンの名称は「フクースナ・イ・トーチカ」。日本語に訳せば「美味しい、ただそれだけ」だ。
。
もちろんマクドナルドのロゴは入れ替えられ、新たなチェーン店の名称が入っている。グリーンの背景に2本のフライドポテトとハンバーガーを思わせる円がおかれ、遠目には「M」の字に見える。マクドナルドを忘れられないロシア人のために、「マクドナルドっぽさ」を演出しようとしていることは明らかだ。
マクドナルドがロシアに上陸したのは1990年、第1号店が首都モスクワのプーシキン広場にグランドオープンした。「フクースナ・イ・トーチカ」はこの歴史的な場所でリニューアルオープンを果たしたものの、1990年にあったような長蛇の列や人々の興奮は見られなかった。
新たなハンバーガーチェーンではかつてのマクドナルドの内装が維持されている。ただ、訪れた客はそこに「マクドナルド」の名を見つけられないだけだ。
アラビア語ニュース局「アルジャジーラ」によれば、「フクースナ・イ・トーチカ」はモスクワとその周辺地域に15店舗をオープンした。
同チェーンの幹部は、夏の終わりまでに旧マクドナルドの850店舗すべてを新ブランドでオープンさせるとし、「ユーロニュース」によれば2022年秋までにロシアで830店舗をオープンさせることに成功したという。
BBCによれば、この新たなファーストフードチェーンのオーナーは、シベリアの石油王アレクサンドル・ニコラエヴィッチ・ゴボル氏だ。ゴボル氏はメディアに対し、70億ルーブル(約1億2100万ドル)をこの新事業に投入し、5万人以上のロシア人に雇用をもたらすと語った。
しかし、旧マクドナルドのメニューを求めるロシア人は多少失望感を味わうことになるかもしれない。メニューの品数はかなり少なくなり、人気商品のいくつかは姿を消している。例えば、「フクースナ・イ・トーチカ」では、「マックフルーリー」や「ビッグマック」はメニューに載っていないのだ。
しかし、新たな店舗を訪れた人は、マクドナルド時代よりも低くなった商品価格に心を躍らせるかもしれない。
例えば、フィッシュバーガーは、マクドナルド時代には190ルーブルだったのが169ルーブルに、ダブルチーズバーガーは160ルーブルだったのが129ルーブル(2.24ドル)になったのだ。
マクドナルドは30年余りにわたるロシアでの活動を経て、同市場から完全撤退することを決めた。2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻を受け、マクドナルドは同国にあるすべての店舗を閉鎖したのだ。
マクドナルドは、「ウクライナでの戦争による人道危機と予測不可能な経営環境を受け、マクドナルドは、ロシア事業はもはや維持できず、当社の価値観とも一致しないと結論づけた」という声明を発表した。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙によれば、マクドナルドは「閉鎖関連費用は12億ドルから14億ドルにのぼるという予測をししていた」。
さらに同紙によれば、ロシアにあるレストラン事業のポートフォリオが売却されるまで、マクドナルド社は6万人にのぼるロシア人従業員の給与支払いを続けるとしたという。
ロシアからのマクドナルドの撤退は、かつて多くのロシア人が希望を抱いた時代の終わりを意味する。アメリカ資本主義の最大の象徴の一つが、このファーストフード店だったのだ。
モスクワのプーシキン広場に最初のマクドナルドレストランがオープンしたのはちょうど32年前。当時、欧米の味を求めて何百人もの人々が列をつくった。
それはまさに、共産主義の旧ソビエト政権が崩壊して欧米の企業が進出し、鉄のカーテンが取り除かれたことを象徴する店舗だった。
今回は、ロシアに進出したマクドナルドの歴史的な写真を見ていこう。上は1990年にオープンしたマクドナルドの旗艦店(2022年3月13日撮影)。
入店を待つ人々の列のそばに立つソ連の警察官。1990年、モスクワのゴーリキー通りに新しくオープンしたマクドナルドにて。
1990年1月31日、モスクワのプーシキン広場にオープンしたばかりのマクドナルド第1号店の客。米国のファーストフード企業の小さな旗を手にしている。
90年代半ばのモスクワで、マクドナルドに入店するために列を作る人々。
2005年、モスクワのプーシキン広場にある世界で最も忙しいマクドナルドの前で、伝統衣装姿で演奏を行うロシアのミュージシャンたち。
1990年から2005年にかけて、マクドナルドは10億人以上の顧客を受け入れ、1億3200万個以上のビッグマックを提供した。2005年までに、ロシアの37都市に127のマクドナルド店舗がオープンしたのだ。
ウラジーミル・レーニン生誕124周年を記念して、1994年4月22日にレーニン/マクドナルドのTシャツが販売された。写真はモスクワでTシャツを広げる販売員。
写真は2009年8月14日、モスクワ中心部のストリートアーティストたち。「ウラジーミル・レーニン」(左)が休憩をとるわきで、「ヨシフ・スターリン」(右)がマックポテトを口に放り込んでいる。
2022年3月、マクドナルドの前を歩くロシア人女性。