ロシアに派遣された北朝鮮兵は役に立つのか?:英国防省の見立ては
北朝鮮の兵士がロシアに派遣され、ウクライナが攻勢を仕掛けているクルスク州で戦闘にあたっていることが確認された。英国防省が発表している。
イギリス国防省はウクライナ侵攻に関するレポートを毎日発表しているが、11月1日の報告では1万人規模の北朝鮮兵がクルスク州に展開していることはほぼ間違いないとされていた。
そのレポートでは、プーチン大統領が2024年夏に訪朝して以来、ロシアと北朝鮮の「包括的戦略パートナーシップ」が深化してきているとも述べられている。
プーチン大統領は訪朝時に北朝鮮と「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結しており、先日北朝鮮側での批准手続きが終了している。
ロシア側では同条約の批准手続きは10月24日に完了していたため、正式に発効に至ったことになる。この条約の存在こそが、北朝鮮によるロシアへの派兵の主要因とされる。
英国防省が指摘するように、同条約には相互防衛条項が含まれているためだ。この条項があるために、クルスク州の前線で北朝鮮兵が軍事活動を行っているのだろう。
ロシアによるウクライナ全面侵攻への関与を深め続けてきた北朝鮮だが、これまでは食糧支援などと引き換えにした武器や弾薬の提供に留まっていた。
英国防省によると、ロシアは援助の見返りに北朝鮮に対して「高レベルな国際的支援」を与えていたという。この支援の内実が、最近になって明らかにされつつある。
例えば、北朝鮮はロシアから1年間に2億ドルの財政援助を受けたほか、70万トンの米も受け取ったという。『コリア・ヘラルド』紙が11月3日に報じている。
また、北朝鮮は偵察衛星打ち上げのための宇宙開発を急速に進めているが、その分野でもロシアからの技術指導を受けているとされる。
これらの情報を伝えた『コリア・タイムス』紙は情報源として韓国の魏聖洛(ウィ・ソンラク)ロシア大使を挙げ、さらに大使はその情報を大韓民国国家情報院(NIS)から得たとしている。
NISのレポートは情報社会振興院(NIA)にも伝わっており、NIA側はさらに、北朝鮮兵は毎月2,000ドル(約31万円)の月給を得ているとしている。
ただし、派兵された人数こそ1万人と大きいが、この北朝鮮兵が戦況に大きな影響を与えるとは考えづらい。それどころか、ロシア軍との連携においてはさまざまな問題が出てくる恐れもある。
英国防省はロシア兵と北朝鮮兵について「これまで共同訓練を行ったことがなく、ほぼ確実に作戦協力において困難が生じるだろう」と述べている。
同省のレポートではさらに、北朝鮮兵は「ロシア軍の指揮統制下に組み込まれており、作戦行動においてはほぼ確実に言語障壁や装備の違いに悩まされるだろう」ともしている。
ウクライナ国家安全保障・国防会議で情報戦部門長を務めるアンドリィ・コワレンコ氏によると、北朝鮮兵との交戦はすでに行われており、北朝鮮側に大きな損害が出たとされている。『キーウ・インディペンデント』紙が11月4日に報じている。ただし、この情報の裏付けは取れていない。
今回の派兵がどのような影響をもたらすかはいまだ不明だが、北朝鮮が侵攻への関与を深めようとしていることは確実であり、今後の展開が懸念される。