ロシア一の女性大富豪の離婚をめぐり銃撃戦が発生、2名が死亡
ロシアでもっとも裕福な女性とされるタチアナ・バカルチュク(48)が夫のブラディスラフ・バカルチュクとの離婚を進める中で銃撃戦が発生、2人が死亡したという。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』によれば、銃撃戦はモスクワのクレムリンの向かいにあるワイルドベリーズ社屋で起こった。この日、夫のブラディスラフは交渉を理由に社屋を訪れたとしたが、タチアナは交渉の予定はなく「オフィス襲撃の試みが失敗に終わった」としている。
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タチアナ・バカルチュクはロシア以外の地域ではあまり知名度が高くないが、育休中にビジネスを立ち上げて成功させた、同国でもっとも裕福な女性だ。そのキャリアを追ってゆこう。
バカルチュクはロシア版アマゾン「ワイルドベリーズ」の創設者かつCEOであり、その純資産は74億ドルを突破している。しかも、経済情報サイト「ブルームバーグ」はここ数ヵ月の収益を考慮し、この数字を81億ドルに上方修正した。
画像:Wildberries Web
西側諸国との対決姿勢を鮮明にするプーチン大統領にとって、バカルチュクは金融面における重要な協力者だ。「ブルームバーグ」いわく、バカルチュクはプーチン政権から、米国主導の国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わる組織の構築を任されたというのだ。
現在、SWIFTは銀行間で行われる国際取引の90%を独占しており、このシステムを牛耳る米国は国際的なマネーの流れをつねに把握することで、他国との対立の中で優位な立場を保っている。
そこで、ロシアのプーチン政権と中国の習政権は米国から国際経済の主導権を奪うために協力することで合意。新たな決済システムの開発者として、タチアナ・バカルチュクおよび「Russ Group」に白羽の矢が立ったのだ。
「ブルームバーグ」によれば、このプロジェクトはプーチン大統領が直々に承認したものであり、成功する保証はないとはいえ、西側諸国との対決を進める上での優先課題に位置付けられているとされる。
ただし、「ブルームバーグ」によれば、バカルチュクはプーチン大統領の取り巻きというわけではないらしい。しかし、「ワイルドベリーズ」を国外でも広く普及させるため、プーチン政権と手を結んだということのようだ。
バカルチュクは2004年に「ワイルドベリーズ」を設立して以来、プーチン大統領に一度も謁見したことがないため、米国や欧州諸国が定める制裁リストには含まれていなかった。しかし、この状況は今や変わりつつある。
「ブルームバーグ」が発表するビリオネア名鑑(Bloomberg Billionaires Index)によれば、バカルチュクはロシアによるウクライナ侵攻が勃発してからというもの、資産を40%も増やしているのだ。
「ワイルドベリーズ」がロシア国内で急成長したのは、国産品の取り扱いを増やしたことに加え、インフラの刷新や割引戦略によるところが大きい。もちろん、IKEAやH&Mといった西側諸国の大手企業がロシア市場から撤退したことが、ウクライナ侵攻勃発後の躍進につながったことは言うまでもない。
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しかも、ロシア政府が導入した輸入規制は「ワイルドベリーズ」にとって追い風となり、開戦前はウクライナに卸していた製品を現在ではほぼロシアで販売しているとのこと。