ロシア国民に向けてウクライナでの戦利品を展示するプーチン政権
プーチン政権は今年5月、ロシアがこれまでウクライナで鹵獲した欧米製兵器の展示会を開催した。モスクワの戦勝記念公園で行われた展示会の開催期間は約ひと月で、さまざまな兵器が展示された。
5月にはロシア最大の祝日が控えており、それに合わせて西側諸国がウクライナに供与した戦車や装甲車などの兵器が展示されることになった。
その最大の祝日とは5月9日の戦勝記念日だ。第二次世界大戦でソ連がドイツに勝利したことを祝う日で、ロシアはそういった文脈のある祝日に西側諸国から鹵獲した兵器を展示することにしたわけだ。
展示されたのはまさにロシアの「戦利品」というべき各種兵器だ。西側製の戦闘車両類を筆頭に、ウクライナを支援した各国製の装備品がずらりと並んだ。
戦闘車両の中にはイギリス製の装甲車「ハスキーTSV」もあった。フロントガラスに並ぶ弾痕が生々しい。
展示品の目玉には他にも、アメリカ製の主力戦車「M1A1エイブラムス」もあった。ウクライナはこの最新鋭主力戦車を2023年9月に31両供与されていた。
ドイツ製の戦車「レオパルト」も同様に展示されていた。ただし、戦車にはドイツの旗が掲げられていたものの、展示車両がどの国から供与されたものかは明らかではない。
BBCニュースによると、ドイツ製装甲車の列の上には「歴史は繰り返す」という文言が掲げられていたという。これはつまり、現在のロシアを第二次世界大戦時のソ連と同様の立場とみなしているということだろう。
BBCニュースのスティーブ・ローゼンバーグ記者はこう書いている:「ロシア当局は国民に、ウクライナ侵攻と第二次世界大戦との間に共通点があると思わせたがっている。ロシアは被害者であり、外敵からの攻撃に曝されているのだと」
ロシア国防省がこの展示に関して出した声明によると、「歴史は繰り返す」とは1943年にソ連がナチスドイツから鹵獲した兵器を展示したことを指しているのだという。ロイター通信が報じている。
「真実には力がある。この事実は常に変わらない。1943年でも現在でもそれは同じだ。これらの戦利品は我々の力を示している。戦利品が多ければ多いほど、我々は強力になる」国防省の声明ではこう述べられたあと、ウクライナにおける勝利も予言されている。
声明では「西側製の兵器がいくらあろうと、戦場の趨勢を変えることはできない」とも述べられていた。
『モスクワ・タイムズ』紙によると、この展示会は初日から盛況で、鹵獲された西側製兵器を一目見ようと多くの国民が集ったという。報じられている初日の様子は、ウクライナで同じようなイベントが開催されたときとは趣が違うようだ。
ローゼンバーグ記者によると、「鹵獲兵器を展示するというアイディアはロシアだけのものでない。過去にはウクライナもロシアから鹵獲した兵器を展示したことがある」のだという。
ロシアによる展示会では30点以上の西側製兵器が展示されており、アメリカが600億ドル(約9兆円)以上の対ウクライナ軍事支援を決定した直後というタイミングで開催された。米国営放送「ボイス・オブ・アメリカ」が報じている。
ロシアのディミトリ・ペスコフ報道官は展示会を「素晴らしいアイディア」と褒め称え、こうコメントした:「戦利品の展示会はモスクワの住民や来訪者だけでなく、全国の国民に大きな関心を呼び覚ますだろう」
「粉砕された敵の装備は国民すべてが目にするべきだ」とペスコフ報道官は続けている。開催当時の報道では、この展示会はひと月ほど続く予定だとされていた。
展示されていた西側製兵器にはイギリスやフランス、アメリカが供与したもののほか、トルコやスウェーデン、オーストリア、フィンランド、南アフリカ、チェコなどで製造されたものも含まれていたという。ロイター通信が報じている。