ロシアから亡命した元情報将校が明らかにした「プーチン大統領の心理状態」とは
13年あまりにわたりロシア連邦警護庁で情報将校を務め、2022年10月に亡命したグレブ・カラクロフ。その後、彼の口からプーチン大統領の心理状態に関する貴重な証言がなされている。
『ガーディアン』紙によれば、ロシア連邦警護庁は同国のエリートたちを警備するための組織だ。しかし、カラクロフの場合、政府高官に加えてプーチン大統領の警護まで任されていたという。
AP通信のエリカ・キネッツ記者いわく、「カラクロフはプーチン大統領の腹心というわけではないものの、長年にわたって同大統領の警護を担当しており、2009年から2020年後半にかけて海外訪問に180回あまり同行している。単なる亡命者ではない」とのこと。
写真:YouTube @khodorkovskylive
非営利調査組織「ドシエセンター」によれば、カラクロフは連邦警護庁傘下の組織でプーチン大統領の通信セキュリティ確保に当たっていたという。
ドシエセンターを設立したのはロシア出身の亡命ビジネスマンで反体制派として知られるミハイル・ホドルコフスキーだ。彼のウェブサイトによればその目的は、「クレムリンと繋がりが深い人々の犯罪」を調査することだという。
カラクロフはドシエセンターに対し、プーチン大統領やクレムリン内部の仕組みについて10時間にわたって証言。その詳細は「データベースやオープンソースから得られた情報」と合致しており、信憑性があると見られている。
写真:YouTube @khodorkovskylive
ドシエセンターはウェブサイト上で「カラクロフは、最近ロシアから西側諸国に亡命した情報将校としてはもっとも地位が高い」とコメント。カラクロフとのインタビューを1時間の動画にまとめて公開している。
写真:YouTube @khodorkovskylive
カラクロフの証言によれば、2020年の時点でプーチン大統領はいまだに新型コロナウイルス対策にこだわっているらしい。カラクロフもほかのスタッフも海外訪問に同行する場合には、たとえ15~20分の短いものであっても2週間の隔離を徹底していたという。
カラクロフいわく「大統領はいまだに自主隔離をしている」ため、大統領と同室で執務するには2週間の隔離期間を経る必要があるという。
プーチン大統領はロシア国内でも海外滞在中でも、携帯電話やインターネットを利用しないと見られている。これについてカラクロフは、情報はすべて「側近たちから」受け取っており「情報の空白」に身を置いていると表現している。
カラクロフいわく:「我が国の大統領は世界との接点を失ってしまった。ここ数年間は情報の繭(まゆ)に閉じこもって暮らしており、メディアから『シェルター』と揶揄される邸宅で多くの時間を過ごしている」
カラクロフはさらに、「(プーチン大統領は)自分の命について病的なまでの不安を抱いており、自主隔離や情報の空白という厚い壁で身を守ろうとしているのだ。彼が気に掛けるのは家族や友人、そして自分の生命のことだけだ」と付け加えている。
前出のエリカ・キネッツ記者によれば、プーチン大統領が自分の命に不安を抱き、情報の泡に閉じこもっているというのは驚くべきことではないという。カラクロフの証言は「プーチン大統領について、かつてはカリスマ指導者だったがどんどん孤立を深めているとする、他の証言者たちによる人物描写ともおおよそ合致する」というのだ。
カラクロフはまた、プーチン大統領が暗殺を非常に恐れていることを暴露。しかし、暗殺未遂があったことは大統領には知らされなかったという。さらに、人目につくのを避けるため、装甲列車で長距離移動することを好んでいるのも事実だと認めた。
AP通信はカラクロフがロシア内務省によって指名手配されていることを確認。これによって皮肉にも、彼の証言に信憑性が増す事態となっている。
プーチン大統領が病気を患っているかどうか尋ねられた際、カラクロフは同大統領に持病があるとは知らされていないとした上で、健康問題があるとすれば年齢に関するものであり、深刻ではないだろうとコメント。プーチン大統領が病気を理由に海外訪問を中止したのは、カラクロフが警護の任務にあたった13年間で1度だけだったという。