ロシアを牽制するルカシェンコ大統領「ベラルーシ併合は戦争につながる」
ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ベラルーシがロシア連邦に併合されるといううわさを一蹴した。その発言は、ロシアのニュースメディア「Izbestia」のインタビューでなされた。
ロシアが独立国家ベラルーシの併合を目論んでいるといううわさは以前からなされていたが、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、こうした懸念はますます現実味を帯びつつある。
では、ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ロシアによるベラルーシの併合あるいは再統合をどう捉えているのだろうか。かねてその姿勢が注目されていたが、ルカシェンコ大統領は最近になり次のように述べた。すなわち、ロシアとの統合を進めようとすれば、ベラルーシ国民の強い反対に遭うことは必定で、やがて戦争という結果は避けられないだろう、というのだ。
前述の「Izbestia」によるインタビューでルカシェンコ大統領は、ベラルーシが直面している問題にはどのようなものがあるかと訊ねられ、それを受けていくつかのトピックを指し示した。そのひとつがロシアへの編入問題だった。
ルカシェンコ大統領は続けて、ロシアによるベラルーシ統合の可能性を否定した。大統領は、ロシアとベラルーシはルーツを同じくしているが、現在ベラルーシは独立国家であり、ロシアが統合を試みるならば戦争につながりかねない、と述べたのである。
「そもそも、私には(統合に関する)手続きをとる権限は与えられていない。ついで、私にかぎらず誰であれ政治家がその方向に目指そうものならベラルーシ国民の反対に遭い、その動きは阻止されることだろう」とルカシェンコ大統領が「Izvestia」で述べたことを、ロシアの独立系新聞『ノーヴァヤ・ガゼータ』が伝えた。
「ベラルーシがロシアに組み込まれる? 問題外だ。あり得ないし、現実的でもない。そんなことになれば、遺憾ながら戦争を意味するだろう」と、ルカシェンコ大統領は続けた。
ルカシェンコ大統領は加えてベラルーシ現代史を振り返り、同国が「ベラルーシ・ロシア連合国家」を創設する上で重要な役割を果たしたことを指摘している。その名称のとおりベラルーシとロシアからなるこの連合国家は、二国間の関係を深めることを目的として、1999年に創設条約が交わされた。当時のロシア指導者はエリツィン大統領であり、その後プーチンが権力の座についた。
ルカシェンコ大統領は次のように解説する。「数多くの専門家が、ベラルーシ・ロシア連合国家における非常に緊密な関係づくりに従事している。(…)私はこの連合国家の創始者であり、創設時のロシア大統領はエリツィン氏だった」
写真:Wiki Commons By RIA Novosti Archive, Vladimir Rodionov, CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0
「われわれはそのような関係を築くことができる。単一政府と比べてより緊密で、より力強い関係だ。ただし、互いに相手の上に立つことはない。この点が重要だ」と、ルカシェンコ大統領は言い添えた。ウクライナ紙『キーウ・ポスト』などもこの発言を報じている。
ルカシェンコ大統領が言わんとするのは、およそ次のようなことである。すなわち、ベラルーシとロシアは単一国家になるよりも、連合国家という体制をとるほうが双方にとってメリットが大きい。二国の関係はより強くなり、ルカシェンコ大統領がさ指摘した戦争に至るシナリオも避けることができる。
これまでのところ、ルカシェンコ大統領のロシア寄りの姿勢は、そのまま二国間の極めて強い協力関係に通じており、ベラルーシの内政も一応の安定を見ている。ルカシェンコ大統領のコメントは、同インタビューの他の発言ともよく呼応している。
そしてルカシェンコ大統領はロシアによるウクライナ侵攻に触れ、熟慮してから行動することが政治家にとっていかに重要であるかについて語った。
「よろしい、ロシアがウクライナを征服したとしよう。するとどうなる? スマートで抜け目のない政治家は、新たな一歩を踏み出すときに、そのまた次の一歩のことを考えるものだ。プーチンは、彼自身しばしばこのことについて語っているけれど、征服をしたわけではないのだ」
「この世界の成り立ちを見るといい。中世とは違って、領土をとったら税だけ納めておわり、ではない。世界はずいぶんと変わり、今ではまるで別のものになっている。だからこそ現代人は、愚かな目標を立ててはならないし、行動の結果を常に考えなくてはならない」とルカシェンコ大統領は言い添えた。
ロシア独立系新聞『ノーヴァヤ・ガゼータ』は、2023年2月にロシアのある内部文書がリークされ、同国の目論見が露かれたと報じている。そこに記されていたのは、2030年までにベラルーシをロシアに統合するという計画だった。この文書のリークにより、ロシアに対するベラルーシ政府の信用は著しく低下したという。
暴露されたこの計画では、現行のベラルーシ・ロシア連合国家を解消し(先述のとおり、この連合国家はルカシェンコ大統領の肝入りで1999年に創設されたものである)、ベラルーシをロシアに併合することが目指されていた。
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写真:Wiki Commons By Post of Belarus, Public Domain