モスクワ市内の爆発でロシア軍高官が死亡、容疑者が拘束される
今月18日、ロシアの首都モスクワでイーゴリ・キリロフ中将が爆発に遭って死亡した。この事件に関し、ロシア当局はウズベキスタン国籍の29歳の男を拘束したとCNNが伝えている。
ロシアの捜査当局の声明によれば、この人物はウクライナの諜報機関にリクルートされ、手製の爆発物を用いてキリロフ中将の殺害に及んだとされている。
男は見返りとして、10万ドル(約1,500万円)の報酬と欧州への居住許可が約束されていたとみられる。
爆発事件が起こったのは17日朝のことだ。ロイター通信によれば、容疑者として拘束された男は爆発物を電動キックボードに仕掛けてキリロフ中将の自宅前におき、遠隔操作で起爆させたという。
死亡したイーゴリ・キリロフ中将はロシア軍「放射線・化学・生物学防護部隊」のトップで、ウクライナ軍との戦いで化学兵器を使用したとしてゼレンスキー政権から非難されていた人物だ。
電動キックボードが爆発した現場からはキリロフ中将とその補佐官の遺体が見つかり、ロシア連邦捜査委員会はこれを 「テロ行為 」としている。
当局が事態を重視したのは当然といえるだろう。事件が起こったのは大統領府からわずか7キロメートルの距離にある、モスクワ市内のリャザンスキー・プロスペクト駅近くだったのだ。
ある匿名の情報筋がCNNに語ったところによると、この爆発事件にはウクライナの諜報機関が関わっているという。
情報を提供した人物は次のように語ったという:「ウクライナ軍との戦いで化学兵器の使用を命じたキリロフは戦争犯罪人であり、完全に正当な標的だ。戦争犯罪は報復されて然るべきである」
事件前日の16日、ウクライナ検察当局はキリロフ中将が同国で禁止されている化学兵器を使用したとして、被告不在のまま起訴を行った。CNNが伝えている。
また、ロイター通信によれば英国政府は今年10月、「窒息性の毒ガスであるクロルピクリンの使用」を理由として、同中将を制裁対象に指定していたという。
CNNはウクライナ保安庁のデータを引用し、キリロフ中将のもとでロシア軍が化学兵器を使用したケースは4,800件を超えるとしている。
一方、ロシア政府は2022年2月にウクライナへの「特別軍事作戦」を開始して以来、同国軍に対して化学兵器を使用したことはないと主張している。
ロイター通信によれば、ロシア政府はウクライナがいくつもの暗殺事件をロシア国内で起こしているとして、同国を非難している。実際、2022年には過激なナショナリズムを説くロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギンの娘ダリヤ・ドゥーギナが暗殺された。