メドヴェージェフ元露大統領、「ベルリン共和国広場に戦車を送る」と不穏な発言

ロシア高官の発言
メドヴェージェフ、ドイツ紙の記事に反応
プーチン大統領との深い関係
歯に衣着せぬ物言い
核攻撃もちらつかせる
ドイツへの脅し
独ソ戦の歴史を踏まえたやりとり
「共和国広場に戦車を送り込む」
ドイツはNATO加盟国なので……
具体的な道筋は謎
ロシアと西側諸国との緊張関係
西側供与の武器をめぐって
米国防総省の見解
「米国はロシアへの長距離攻撃を支援しない」
ドイツ外務省の見解
米・独の装甲車がロシア領に
ロシアは250平方キロメートルを失う
ロシア高官の発言

最近、プーチン政権の要人がある発言を行ったが、それは第三次世界大戦の可能性について考えさせられるものだった。

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メドヴェージェフ、ドイツ紙の記事に反応

元ロシア大統領ドミートリー・メドヴェージェフは、ドイツ紙『Bild』のある記事についてSNSで取り上げた。その記事の内容は、メドヴェージェフによると、ドイツ戦車がロシア領内で活動を再開することを堂々と告げるものだったという。

プーチン大統領との深い関係

メドヴェージェフはこれまで、ロシア連邦大統領の任を2008年から2012年までつとめ、その後2012年から2020年までは首相の座にあった。プーチン現大統領との密接なつながりで知られ、現在も重要なポストについている。

歯に衣着せぬ物言い

現在、ロシア連邦安全保障会議の副議長であるメドヴェージェフは(このポストはそもそも2020年にプーチン大統領によって新設されたものだ)、ウクライナ支援を行う西側諸国をしばしばストレートな表現で攻撃している。

核攻撃もちらつかせる

キーウ・モヒーラ・アカデミー国立大学で政治学を教えるTaras Kuzio教授は、米シンクタンク「アトランティック・カウンスル」に寄せた2024年3月の記事の中で、次のように記述している。「ここ数ヶ月、メドヴェージェフは米国、ドイツ、英国に対する核攻撃の可能性について語っており、キーウを含め、ウクライナにおけるいっそうの領土拡大をすすめる意図を明らかにした」

ドイツへの脅し

8月9日、メドヴェージェフはまたしても公の場で、威嚇的な姿勢を見せた。それが先に述べたSNSへの投稿である。メドヴェージェフはXアカウントで、ドイツ紙『Bild』のある記事を受け、ドイツに脅しをかけるような言葉を発信したのだ。

独ソ戦の歴史を踏まえたやりとり

「ドイツ紙『Bild』は報復主義的な記事を発行しており、そこでは『ドイツ戦車がロシア領土内に再び送り込まれる』と堂々と語られている」と、メドヴェージェフは投稿している。「報復主義」や「復帰」というのは、『ニューズウィーク』誌の注釈によると、ナチス・ドイツによる1941年のソ連侵攻を踏まえた表現だという。

写真:Wiki Commons By Koch, Public Domain

「共和国広場に戦車を送り込む」

「そのお返しに、私たちは何としても最新型ロシア戦車をベルリンの共和国広場(Platz der Republik)に送り込む」と、メドヴェージェフは続けている。ドイツの首都ベルリンの共和国広場といえば、同国の国会議事堂が置かれている場所だ。

写真:Wiki Commons Von Tobiasi0, Own Work, CC BY-SA 4.0

ドイツはNATO加盟国なので……

ふたたび『『ニューズウィーク』誌の注釈によれば、ドイツはNATO加盟国のひとつである。そして、条約第5条の定める原則によれば、NATO加盟国への攻撃はNATO加盟国全体への攻撃とみなされる。したがって、ロシアがドイツに対して何らかの攻撃に出た場合、それはドイツを含めたNATO全体への攻撃として解釈されるという。

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具体的な道筋は謎

もっとも、ロシア戦車が仮にドイツの首都に送り込まれるとしても、その前段階としてポーランドやリトアニアの国境付近で何かしらことを構える必要があろう。メドヴェージェフのSNSへの投稿は、ベルリン入城への具体的な道筋について何も示していない。

ロシアと西側諸国との緊張関係

メドヴェージェフのこのような脅しの背景には、ロシアと西側諸国との緊張関係があり、事態は西側によるウクライナへの軍事的・経済的支援をめぐって抜き差しならないものになりつつある。ただ、ウクライナは西側供与の武器をすべて自由に使えるわけではなく、ロシア・クルスク州への越境攻撃においてもいくつかの兵器は投入されていない。

西側供与の武器をめぐって

ウクライナを支持するNATO加盟国、たとえばドイツや米国は、ウクライナに供与した武器について、ロシア領土への攻撃で用いてはならないとしてきた。しかし、ロシアがハルキウ州への攻撃を再開した2024年5月をさかいに、西側諸国のそのような姿勢はゆっくりと変わりつつある。

米国防総省の見解

米国防総省副報道官のサブリナ・シンは8月8日の記者会見で、記者からの質問(「ウクライナのクルスク侵攻をめぐる状況、および米国供与の武器などをめぐるウクライナ・米国双方の理解のありかたはどうなっているのか?」)に答えて次のように述べた。「ロシアは国境を越えて相手国領土を攻撃しているのですから、ウクライナ人としても、それに対応するための能力を持たねばなりません」。ウクライナ軍のクルスク州への侵攻はあくまで、国境を越えてやってくる攻撃から自国を守るための防衛的措置だという見方がここではとられている。

「米国はロシアへの長距離攻撃を支援しない」

シン副報道官はまた、「米国はロシアへの長距離攻撃を支援しない」と繰り返し述べ、米国はウクライナに供与した武器の使用範囲について、つねに明確に示してきたとした。

ドイツ外務省の見解

ドイツ外務省はニュースメディア「POLITICO」に寄せた声明のなかで、「ウクライナには自衛権があります。それは国際法に記されているものです」と述べている。「その権利の行使は自国の領土内のみに限られるものではありません」。

米・独の装甲車がロシア領に

『ワシントン・ポスト』紙は8月8日付の記事で、ウクライナによるクルスク州への侵攻には米国とヨーロッパが供与した走行車両が使われていたようだと報じた。そして、侵攻の様子をおさめた映像には、少なくとも一台の米国のストライカー装甲車とドイツのマルダー歩兵戦闘車がロシア領内にあるところが見て取れると指摘した。

ロシアは250平方キロメートルを失う

ウクライナ軍の攻撃を受けたロシア・クルスク州の状況はいまだはっきりとしないが、CNNの分析によると、ロシアはおよそ250平方キロメートルにわたる領土を失ったということである。

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