次々と国外へ脱出する中国のミリオネアたち、その理由は?
世界屈指の経済大国となった中国。ところが国内に住むミリオネアの数は急速に減少しており、最近では何とか資産を国外に持ち出そうとするエリートたちの姿が目立つようになった。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は、中国の富裕層がすでに数十億ドル相当の資産を国外に移送済みであると報道。
中国のミリオネアたちはロンドンやニューヨーク、東京、シンガポールといった海外の都市で、株式や不動産への投資を行っているのだ。
経済情報サイト「ブルームバーグ」はさらに踏み込んで、中国の富裕層は資産を国外に持ち出すため異例かつ明らかに違法な手段に繰り返し訴えている、と伝えた。
さらに、中国のミリオネアたちは資金の移送のみならず、本人も母国を後にするケースが増えているようだ。CNBC放送はこの現象について「ミリオネアの大移動」と揶揄しているが、中国の富裕層がこれほど躍起になって国外移住を図るのは一体なぜだろうか?
『ニューヨーク・タイムズ』紙は、中国からの資金流出が増加していることについて、中国経済の現状と先行きに対する懸念が背景にあるのではないか、と分析。
一方、ニュースサイト「ビジネスインサイダー」は、中国経済がコロナ禍からうまく回復できていないと指摘した。
コロナ禍以降に発生した中国経済の失速は、不動産業界でとりわけ顕著に見られる。碧桂園(カントリー・ガーデン)をはじめとする大手不動産会社が、相次いで債務不履行の危機に直面しているのだ。
これまで、中国の不動産業界は著しい成長を見せており、リスクの低い投資先として裕福な家庭から高い人気を集めてきた。しかし、これはもはや過去の物語となりつつある。
さらに、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会が利上げを行ったことで、人民元安に拍車がかかる結果となった。
しかし、CNB通信は、中国人富裕層の国外移住はコロナ禍以前の2012年ごろから始まっていると指摘。実際、エリートたちのこのような行動は不況よりもむしろ、政治的な動機によるものだと考える人は少なくない。
これに関する『ガーディアン』紙の見解は、中国政府が富裕層の締め付けを図っていることが彼らの移住を引き起す原因になっている、というものだ。
2021年、中国の習近平国家主席は「共同繁栄」というモットーを掲げたが、これは社会貢献に消極的な国内のミリオネアたちに対するある種の警告だと見られている。
一方、2020年にはアリババグループの創業者、馬雲(ジャック・マー)が、中国政府について「質屋のようなメンタリティー」だと揶揄、当局との間で軋轢を生んだこともある。
さらに、最近では2023年3月に中国の投資家でミリオネアの包凡が、当局の捜査に応じたまま一時行方不明になったという事件がメディア各社から報じられている。
中東衛星放送アルジャジーラによれば、包凡は時期を見計らって自身の会社をシンガポールに移転しようとしていたらしい。多くの中国人ミリオネアたちにとって、資産の移転は国外移住の第一歩だということなのだろう。