ミサイル発射実験を行う北朝鮮、妨害を狙う米国をけん制
北朝鮮の独裁者である金正恩(キム・ジョンウン)の妹にあたる金与正(キム・ヨジョン)は、アメリカ合衆国とその同盟国に向けて警告を発した。北朝鮮のミサイル発射実験を妨害すれば、それを戦争行為とみなすというのである。
3月7日、朝鮮中央通信をつうじて金与正は声明を出し、「太平洋に発射された大陸間弾道ミサイルは撃ち落とされることになる」というアメリカインド太平洋軍司令官の発言報道を一笑に付した。
写真:Twitter @INDOPACOM
朝鮮中央通信による英語への翻訳によると、金与正は次のように言った。「米軍司令官がそういった不適当な言葉を本当に発したかどうか私は知りません。その発言内容が正しいか間違っているかもさておくとして、私としてはあらかじめはっきりと警告しておきたく思います」
金与正は続けて、「太平洋は米国や日本の支配下にあるわけではありません」と語り、アメリカ軍が太平洋を「まるで自分の庭であるかのように」あつかい、太平洋で日常的に軍事訓練を行なっていることを非難した。
金与正は続けて、北朝鮮のミサイル発射実験を邪魔するような行為は、同国に対する宣戦布告とみなすと明言し、米国およびその同盟国に警告を発した。
「我々が保有する戦略兵器の実験に対し、仮にそのような軍事的妨害行為がなされた場合、われわれはそれを明白な宣戦布告と受け止めます」
「そのような状況下における我が軍隊の行動規範は、すでに定められているということを付け加えておきます」と金与正は続けた。対立が全面戦争につながる可能性をほのめかし、アメリカに脅しをかけたわけだ。
金与正はさらに続けて、アメリカと韓国のたび重なる合同軍事演習は「狂気の極み」であり、北朝鮮としてもとうてい看過できる出来事ではなく、同国も「その演習に対抗すべく」なんらかの措置をとる構えがあることを示唆した。
「すでに明確に述べたとおり、我々はアメリカ軍と韓国の傀儡軍のせわしない動向に目を光らせています。必要だと判断した場合には、すぐさま適切かつ大規模な動きがとれるよう、我々は不断の準備態勢をとっています」と、金与正はコメントした。
金与正は、弟・金正恩の独裁政権においてもっとも大きな権力をもつ人物のひとりであり、現在は党宣伝扇動部の副部長である。すなわち彼女は、北朝鮮のプロパガンダ機構をコントロールしているのだ。
AP通信が指摘するように、金与正の声明は、米韓空軍の行動空中訓練のもとでB52戦略爆撃機が朝鮮半島上空を飛んでから間もなく、具体的にはその翌日に発表された。
「米韓軍が月曜日(3月6日)におこなった訓練では、B52戦略爆撃機が朝鮮半島上空を飛行した。この訓練はここ数ヶ月間にわたる同盟国間の一連の合同軍事演習における直近の演習だった」と、AP通信は書いている。
「米韓両軍は今月末にも、さらに広い範囲の演習を準備している」と同記事は続けた。
加えてAP通信によると、金与正の声明が発表されてまもなく、朝鮮人民軍総参謀部も声明を出した。同参謀本部は国境付近の砲兵部隊についてその警戒レベルを引き上げたことを発表し、韓国の都市、坡州(パジュ)近郊で韓国軍が実射演習を行ったことはお見通しだと公言した。
「北朝鮮の総参謀部は、韓国軍の演習では30回にわたって射撃がおこなわれたと発表し、国境付近におけるそのような行動は即刻つつしむよう韓国に迫った」と、AP通信は続けた。
AP通信によると、韓国合同参謀本部は北朝鮮の主張をばかげたものと評し、国境付近で韓国軍がそのような砲撃を行った事実は一切ないと発表したという。