フェイスブックを創業したマーク・ザッカーバーグがいつも同じ服装をしている理由とは
旧社名フェイスブックを創業し、現メタ社という巨大企業に育てたマーク・ザッカーバーグ。今回は彼のユニークなファッション観をみてゆこう。
世界的な起業家マーク・ザッカーバーグは、公の場でどんな格好をしているだろうか。スーツ姿は浮かばず、だいたいシンプルなジーンズにグレーのTシャツ、そして少し肌寒い時は、黒のスウェットシャツ……。それが彼のユニフォームだ。
ザッカーバーグはこの格好を10年以上続けており、おそらくこれからも変えることはないだろうと予想される。そして、マーク・ザッカーバーグがいつも決まった服を着ることには、れっきとした理由があるのだ。
しかし、その理由について述べる前に、ザッカーバーグがいつも同じような服を着ているからといって、毎日一張羅を着ているわけではないことに注意を促しておこう。その証拠がこの写真。彼のワードローブである。
写真:Facebook - Mark Zuckerberg
また、ザッカーバーグのファッションは決して安上がりではない。たとえば、グレーのTシャツはイタリアのカシミアニットブランド、ブルネロ・クチネリの高級品で、一着6万円は下らない。では、どうして彼はいつも同じスタイルで通しているのだろうか? その理由は、心理学者たちがいう「決断疲れ」に関係している。
一日中絶え間なく繰り返される意思決定のプロセスが、その各々はほんの些細なものであっても、一日が終わるころには精神的な疲労として重く蓄積する現象、それが「決断疲れ」である。ジーグムンド・フロイトの研究をもとに、社会心理学者のロイ・F・バウマイスターが命名した。
人は何かを選ぶ行為を一日でおよそ1万5,000回も行うという。ただ、何かを選ぶべき局面を減らすことはできる。選択をせまられる局面が少なくなれば、そのぶんエネルギーと注意力を温存することができ、もっと重要な物事にそのリソースを割くことができるようになる。マーク・ザッカーバーグが普段のファッションに応用しているのは、この原理である。服を毎日選ぶというのはそれなりに大変なことなのだ。
じっさい、ザッカーバーグは2014年に、「どうすればFacebookをよりよくできるか考える以外には、僕はできるだけ選択すべきことが少なくなるよう、自分の人生を組み立てている」と語っている。
ちなみに、アップルの創業者スティーブ・ジョブズもいつも同じ服だったが(黒のトップス、リーバイスの501、ニューバランスのスニーカー)、ジョブズもやはり「決断疲れ」を避けていたのである。ジョブズは「イッセイミヤケ」のトップスを亡くなるまで着続けた。
ジョブズははじめこの服をアップル社のユニフォームにしようと考えていたのだが、社員の反対が強くてできなかったという。しかしジョブズは、この黒のTシャツをいたく気に入り、イッセイミヤケに100着以上注文して自分だけのユニフォームにしたのだ。
いつも同じ「ユニフォーム」を着ることは、「決断疲れ」の予防になるばかりではなく、自身のイメージを手っ取り早く立ち上げるためにも役立つ。そして、そのチョイスがおおむねノーマルなものであれば、自分がシンプルな装いを好む、ごく常識的で近づきやすい人間であるとアピールすることにもつながるのだ。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に