クリスマスを10月に前倒しと宣言するニコラス・マドゥロ大統領(ベネズエラ)
物議を醸しているベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、きわめてユニークな発表を行った。同国におけるクリスマスを12月25日から10月1日に前倒しするというのだ。
冗談のようだが冗談ではない。マドゥロ大統領は自身が出演するテレビ番組 『Con Maduro+』を通じ、クリスマスの前倒しは「国民の皆さんに敬意と感謝を表す」ためであり、人々への"プレゼント"だと語ったのだ。
にわかには信じがたい話だが、ニコラス・マドゥロ大統領によるクリスマス前倒しは今に始まったことではない。2020年にはすでにクリスマスが10月15日に早められている。翌年にはそれが10月4日に引き上げられ、今年はさらなる繰り上げが行われるというわけだ。
マドゥロ大統領は気づいていないかもしれないが、クリスマスの前倒しは意外な敵をつくることになる可能性がある。
そのひとつはサンタクロースだ。クリスマスといえばトナカイが引くそりに乗ってやってくるサンタクロースだが、10月はまだ休暇中だろう。つぎは12月の空に響き渡るマライア・キャリーのクリスマスソング。これも10月にはあまりお呼びではない。
1994年に発表されたマライア・キャリーの名曲『All I Want for Christmas Is You』はクリスマスの風物詩として定着し、おかげで歌姫は毎年この一曲だけで莫大な収入を得ることになった。
多くの国で、10月末のハロウィンが終わると同時にこの曲が街中に鳴り響くことになる。もちろんマライア・キャリーの銀行口座もチャリンチャリンという音をたてるわけだ。
だが、マドゥロ大統領がクリスマスを10月1日に前倒しすれば、夏気分の残る9月から「All I Want for Christmas Is You」をかけなければならない。歌姫としては、人気曲のイメージが損なわれることを心配するのではないだろうか。
それにしても、マドゥロ大統領はいったいなぜクリスマスの日程を早めようとしているのだろうか。
2020年に初めてクリスマスの前倒しを決めたときはコロナ禍で、マドゥロ政権は失策に対する国民の批判をそらすことを目的としていたといわれる。
今回は、先月行われたベネズエラ大統領選をめぐる不正疑惑や、マドゥロ政権がすすめる反対派弾圧に対する関心をそらすためだとみられる。
ともあれ、ベネズエラ聖公会はクリスマスが「政治や宣伝のために利用されてはならない」とマドゥロ政権を批判。CNNによれば、 英国国教会も「クリスマスは12月25日に始まる」と声明を出し、身勝手な日程変更にくぎを刺している。