プーチン大統領も戦争の早期終結を望んでいる?
ロシアの大統領ウラジミール・プーチンは昨年12月22日にコメントを発表した。ロシアとしてはウクライナの戦争を長引かせるつもりはなく、可能な限り早い終結を望んでおり、その実現のために何らかの外交的解決が必要となるだろう、と言うのだ。
露大統領は記者会見で、「私たちの目標は、軍事衝突を拡大させることではなく、まったく逆に、この戦争を終わらせることだ」と述べた。
「あらゆる武力紛争は、外交ルートを通じた何らかの交渉により終結に漕ぎつけられるものである」とプーチン大統領は続けた。
「遅かれ早かれ、紛争状態にある当事者たちは交渉の席につき、合意に達する」と露大統領は付け加える。「我々の敵対者がこのことに早く気づいてくれるといいのだが。この可能性を我々は諦めていないし、これからも努力は惜しまない」
プーチン大統領の発言があったのは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の先だってのワシントン訪問のすぐあとだった。ゼレンスキー大統領の訪米は、アメリカが保有する強力な「パトリオット」ミサイル防衛システムをウクライナ軍へ供与する計画の実現を目的としていた。
ロシアの軍事戦略はここ数ヶ月、ウクライナの民間インフラの破壊に注力してきた。同国市民の士気を砕くべく、足元から揺さぶりをかけているのだ。
米国のジョー・バイデン大統領は先月21日のゼレンスキー大統領との会談で、ロシアの戦略は「冬を武器として」利用するものだと非難し、ウクライナが勝利を掴む日まで支援をやめないと約束した。
パトリオットミサイル供与の発表に加えて、米国議会は19日、新しい歳出法案を発表した。法案にはウクライナへの追加の緊急支援440億ドルが盛り込まれている。
この措置は、開戦から1年が経とうとする中で激しさを増すロシアの攻撃に対し、ウクライナの守備を助けるためになされた。
パトリオットミサイルの供与とウクライナ支援の追加440億ドルの発表を受けて、さしものプーチン大統領も態度をやわらげ、和平に向けた発言をせざるを得なかったのだろうか。だが、アメリカ政府高官のなかにはそうは考えない向きもある。
プーチン大統領のこうした発言の直前、ホワイトハウスのジョン・カービー報道官は、露大統領はウクライナとの真の和平交渉にあまり関心がなさそうだという指摘を行った。
「目下のところプーチン氏は、外交に関心がないと言わざるを得ない」と、カービー報道官はCNNの記者に語る。「彼の関心は、より多くのウクライナ民間人を殺すこと、冬の訪れを前に照明や暖房インフラを破壊することにある」
ここ数ヶ月間にわたってロシア政府が繰り返しているのは、次のような言葉だった。すなわち、ロシアは話し合いによって和平に至る準備がある、あらゆる外交ルートを閉ざし、平和への可能性を摘んでいるのはキーウの高官たちのほうだ、というのだ。
さかのぼること11月中旬、ゼレンスキー大統領は、ロシアがウクライナから撤退し、クリミア半島を返還しないことには平和は訪れないと発言した。
ゼレンスキー大統領は「ブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラム」で行われたビデオ通話インタビューで次のように語っている:「ただ停戦すればいいというものではないのです。我々の領土全体を解放しないことには、平和は訪れません」
しかし、ロシアは12月、平和を求めるキーウからの直近の呼びかけを断った。ロシア政府の報道官ディミトリ・ペスコフが述べたのは、キーウは戦争の“現実”を直視する必要があるということだった。クリミア半島はもとより、併合した4つの州をみすみす諦めるつもりはないというロシアの思惑がそこには仄めかされていた。
平和への序曲を奏で始めたかに見えるプーチン大統領だが、残念ながら、ただの時間稼ぎかもしれない。続けざまに起こったロシア軍の潰滅的損失と撤退によって、ウクライナの側に“はずみ”がついて以来、ロシアは苦戦を強いられてきた。プーチン大統領の発言は、軍の体制が持ち直すまでの単なるポーズにすぎないのかもしれない。