プーチン大統領が抱える問題:ロシアの財政問題は今後さらに深刻化

価格変動と下落にさらされるロシア通貨
ルーブルについての報告書
わずか2日間で10%の下落
今年の夏と比べ25%近く暴落
「貿易フローの構造的問題」とは
輸出量が激減
貿易黒字は前年比8%増加
輸出業者に対し、外貨の交換を制限
ルーブルの需要が大幅に減少
これ以上の利上げは難しい
超高水準なロシアの金利
ロシア国内での高い外貨需要
「ロシア経済は限界に達している」
「実質的な選択肢は存在しない」
国家福祉基金の活用
大規模な金利引き上げが必要
ルーブルの下落は現状のところ抑えられている
「ルーブル安とインフレは加速する」
価格変動と下落にさらされるロシア通貨

ロシアの通貨ルーブルは、2022年2月にプーチン政権がウクライナに対する全面侵攻を開始して以降、激しい価格変動と下落を繰り返している。2人の専門家によれば、こうした傾向は子後も続く可能性が高いという。

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ルーブルについての報告書

ワシントンにあるシンクタンク、カーネギー国際平和基金のアレクサンドラ・プロコペンコとアレクサンダー・コリャンドは、ルーブルについての報告書を発表し、ロシアは大きな問題を抱えていると結論付けた。

わずか2日間で10%の下落

2024年11月、米国政府が新たな制裁対象に露銀行大手ガスプロムバンクなどを加えると発表したことから、わずか2日間でルーブルの価格は米ドルと中国元に対して10%下落している。

今年の夏と比べ25%近く暴落

ルーブルは今年の9月以来20%下落し、夏の高値と比較すると25%近く暴落している。プロコペンコ氏とコリャンド氏は、ロシアが直面している多くの問題を踏まえると、この傾向は今後も続くだろうと主張している。

「貿易フローの構造的問題」とは

具体的には「アメリカの金融制裁により11月にルーブルは急落したが、『貿易フローの構造的問題』から、その傾向は継続していくだろう」としている。「貿易フローの構造的問題」とは何のことを指しているのか詳しく見ていこう。

輸出量が激減

第一に西側諸国の経済制裁により、ロシアはウクライナ侵攻以前ほどの輸出ができなくなり、ルーブル相場が下落に転じるようになったのだ。

貿易黒字は前年比8%増加

米ウェブサイト「ビジネスインサイダー」が発表した露政府のデータによると、ロシアの貿易黒字は今年の最初の10か月で前年比8%増加している。一見ロシア経済は順調なように思えるが、その伸び幅は前年より鈍化しており、西側諸国の経済制裁の影響を感じさせる。

輸出業者に対し、外貨の交換を制限

それだけではなく、10月以降ロシア政府が輸出業者に対し、外貨収入のルーブルへの交換を制限するようになったことも原因の1つである。

ルーブルの需要が大幅に減少

それ以前は、輸出業者は四半期ごとに外貨収入の50%をルーブルに両替することが認められていたが、10月以降はその割合が25%に低下したため、ルーブルの需要が大幅に減少し、通貨の価値はさらに下落したのだ。

これ以上の利上げは難しい

加えて、ロシア中央銀行はルーブルの急落に対処するための現実的な手段を持ち合わせてはいないようだ。ロシアの政策金利は現在21%であり、国内の反発からこれ以上の利上げは難しいとみられる。

超高水準なロシアの金利

プロコペンコ氏とコリャンド氏は、ロシアのインフレ率は既に8.87%に達しており、年末までにさらに上昇する一方、同国の21%という政策金利は、物価高にはほとんど影響を与えていないと指摘した。

ロシア国内での高い外貨需要

自社の利益を守ろうとする企業とロシア国民の両方からの外貨需要は、現在の苦境に拍車をかけるものであり、研究者らは今のところ解決策は存在しないと指摘している。

「ロシア経済は限界に達している」

プロコペンコ氏とコリャンド氏の両名は、振り向けるという策に言及しつつ、「ロシア経済は限界に達している」というロシア中央銀行、エリヴィラ・ナビウリナ総裁の発言も同時に引用している。

「実質的な選択肢は存在しない」

「理論上は変動相場制を維持しつつも、ロシア中央銀行が市場介入を行うことは可能だろう。しかし、実質的な選択肢は存在しない」と両名は続けた。

国家福祉基金の活用

「ロシアが非常時基金である国家福祉基金に資金を投入するという方法もあるが、金や非流動資産を除くと、11月初めの時点で同基金はわずか310億ドル(約4兆825億円)しか保有していない。相対的に見れば、それほど多くはない」と2人は付け加えた。

大規模な金利引き上げが必要

金利引き上げは可能だが、その効果を高めるにはロシア中央銀行が一度に8%の引き上げを実施する必要がある。これは民間企業だけでなく、ロシアの国防部門にも大きな影響を与える可能性がある。

ルーブルの下落は現状のところ抑えられている

これまでのところ、口先介入によってルーブルの急落は抑えられており、ロシア中央銀行は国内市場での外貨購入を停止している。これらの措置は今のところ機能しているが、ルーブルの下落を押し留めることはできないだろう。

「ルーブル安とインフレは加速する」

「ルーブル安の根本的な理由は改善されておらず、ロシアの貿易フローの動向として、ルーブル安とインフレは加速する傾向にある」とプロコペンコ氏とコリャンド氏は結論付けた。

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