プーチン大統領のとる極端なセキュリティ対策:身に迫る危険に戦々慄々......?
一国の元首ともなれば、身に迫る危険に対して警戒することも不思議なことではない。しかし、プーチン大統領の場合、その不安は少し度が過ぎているようだ。それは彼のセキュリティ対策によく表れている。
ロシア大統領府に近い筋によれば、プーチン大統領はかねて飛行機ではなく装甲列車で自国内を移動することを好んでいるという。
ロシアの元実業家ミハイル・ホドルコフスキーが率いる調査団体「Dossier Center」はクレレムリンにおける内部犯罪を追跡しており、プーチン大統領は2021年8月中旬から装甲列車で移動していることを突き止めたとしている。
プーチン大統領のセキュリティ対策は、大勢のガードマンが彼をエスコートするばかりではない。中には現実離れした対策も含まれているのだが、それは一体どのようなものなのだろう?
BBC放送が伝えたところによると、プーチン大統領個人の警備にはロシア連邦警護庁大統領保安局が当たっているという。
大統領保安局は、旧KGBから派生したロシア連邦警護庁(FSO)の一部門であり、ロシア政府高官とその家族の警備にも当たっている。
また、2016年にはプーチン大統領自ら、大統領直属の「ロシア国家親衛隊(ロスグヴァルディヤ)」を創設した。
ロシア国家親衛隊40万人の指揮を執るのは、プーチン大統領の元ボディーガード、ヴィクトル・ゾロトフ将軍(写真)だ。
この大規模な親衛隊の使命は大統領の警備だけではない:「武器の管理、テロや組織犯罪との戦い、治安の維持、重要な国家施設の警備」も彼らの仕事だ。
ウェブサイト「ロシア・ビヨンド」によると、プーチン大統領の警備にあたるシークレット・サービスは4つのグループに分かれているという。中でも、大統領の身辺警護にあたる部門には数百人のボディガードが属しており、24時間365日、大統領のそばを離れない。
二つ目のグループは私服エージェントだ。一般大衆の中に溶け込み、大統領の身辺に不穏な兆候がないか目を光らせている。
三つ目のグループは立ち入り禁止エリアの警備にあたり、不審者の侵入を阻止する役目を担っている。
四番目のグループは、プーチン大統領が姿を見せる場所に近い建物の屋上に陣取り、銃を構えるスナイパーたちだ。
BBC放送の番組でセキュリティの専門家、マーク・ガレオッティ氏が指摘したのは、プーチン大統領は飛行機での移動を好まず、オートバイや装甲車、トラックの大群を引き連れて移動するということだ。
ガレオッティ氏によると、こういった移動が行われる際には上空の飛行が禁止されるほか道路は通行止めになり、最大限の警戒態勢が敷かれるという。
大統領が口にする食事に関しては、中世の宮廷を彷彿とさせる、信じがたい噂が流れている。
前出のガレオッティ氏によれば、プーチン大統領の口に入るものをすべてチェックする毒見役がいるという。これは少し都市伝説じみていないだろうか。
さらに、ロシアの専門家、スティーヴン・ホール氏がBBC放送で語ったところによると、大統領の食事は、ボディーガードが調理を監視して不審な点がないことを確かめてから提供されるのだという。
暗殺対策はこれだけではない。プーチン大統領は海外訪問の際にも飲食物を持参するのだ。乾杯するときのお酒もマイボトルから注いだものだけだ。
また、『テレグラフ』紙は2023年9月に元ボディーガードへのインタビューを行い、プーチン大統領の別荘では暗殺のリスクを排除するため、洗濯機の操作までセキュリティスタッフが担当している、と暴露した。
画像:Tina Bosse / Unsplash
しかも、その元ボディーガードによれば、プーチン大統領のプライベートビーチは武装したダイバーによって水中から監視されているというから驚きだ。
画像:Adrien Delforge / Unsplash
プーチン大統領のそばでは通信機器の利用が制限されており、クレムリンではスマートフォンの持ち込みが禁止されている。
クレムリン内で連絡を取り合う際には専用の内線が利用されている、とタス通信に語ったのは他ならぬプーチン大統領だ。
プーチン大統領はインターネットを「CIAの発明」と考えているため、利用していないという。
プーチン大統領はさらに、Googleは米国によるロシア人監視ツールだとして、国民に利用しないよう何度も求めている。確かに、そういう側面がないわけではないが、Googleによる情報追跡は同社の企業的な利益追求が目的だろう。
では、プーチン大統領は一体どうやって情報を手に入れているのだろうか?答えは書類だ。前出のガレオッティ氏いわく:「彼の一日は3通の書類で始まります:1つ目は世界の出来事。2つ目はロシアの出来事。3つめはロシア支配者層の出来事です」
プライベートでは世間とのつながりをほぼ完全に断っているプーチン大統領。新型コロナウイルスに加え、ウクライナ侵攻でこの傾向はさらに強まっていると見られている。
プーチン大統領の健康維持はロシアにとって国家的課題だ。コロナ禍のときなどは、謁見の際に自主隔離や健康診断、複数回のPCR検査といった手順を経なくてはならなかった。フランスのエマニュエル・マクロン大統領がこのガイドラインを拒否しようとしたところ、プーチン大統領は激怒したという。
検査を拒否したマクロン大統領との会談で、異様に長いテーブルを利用したことは有名だ。ただし、新型コロナウイルスの世界的流行以来、極端に長いテーブルを利用して距離を確保するのは珍しいことでもなくなっていた。
セルゲイ・ショイグ国防相をはじめとする側近との会談もこのありさま。一部のメディアは、新型コロナウイルスの世界的流行がプーチン大統領を孤立させ、偏執的にしてしまったと指摘している(ただし、これがプロパガンダに過ぎないかどうかは誰にもわからない)。
以前は、シベリアに出かけて乗馬や狩猟、釣りを楽しむ冒険的な姿で知られたプーチン大統領だが、今では周囲の危険から身を守ろうと必死になっているようだ。
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