ロシアに挑む北欧の女性リーダー:フィンランドのマリン首相とスウェーデンのアンダション首相

2人の女性首相が踏み出した歴史的一歩
フィンランドの若い首相
レインボー(LGBT)ファミリー出身
マリン首相の大学時代
学業と仕事を両立
政治議論をYouTubeで発信
国会議員への選出
新星の躍進
2019年に運輸通信大臣に就任
アンティ・リンネ連立政権の崩壊
34歳で国家指導者に
女性が大半を占める若い政府
パートナーとの結婚
物議を醸したショット
閣僚のコロナウイルス陽性反応
ロックを愛する政治家、アンデション首相
ウプサラ出身の元水泳選手
社会民主党のホープ
スウェーデンの財政を管理
2020年以来初の女性首相
スウェーデン初の女性首相
首相のお気に入りロックバンド
ロシアを脇目にNATO加盟を目指す両国
2人の女性首相が踏み出した歴史的一歩

写真の右はフィンランドのサンナ・マリン首相、左はスウェーデンのマグダレナ・アンダション首相だ。両国は数十年にわたり中立を維持してきたが、NATO(北大西洋条約機構)加盟を申請するという歴史的一歩を踏み出した。ウラジーミル・プーチン露大統領への挑戦状ともいえる行動を起こした2人の北欧リーダーはどんな人物なのか、その実像に迫ってみよう。

フィンランドの若い首相

現フィンランド首相のサナ・マリンはまだ30代、世界でも最年少の女性指導者のひとりである。

レインボー(LGBT)ファミリー出身

フィンランド首相サンナ・マリン氏は1985年、ヘルシンキ生まれ。同氏がまだ幼い頃に、父親のアルコール依存症が原因で両親は離婚。母親とその同姓パートナーに育てられたことから、首相は自身を「レインボー(LGBT)ファミリー」出身だとしている。

マリン首相の大学時代

サンナ・マリン氏はフィンランド第2の都市タンペレの大学で行政学を学ぶ傍ら、社会民主党の青年部に入党。やがて社会民主党青年部の第一副議長となった。

学業と仕事を両立

マリン首相は、家族の中で初めて高等教育を受けた人物であり、学業の傍らスーパーのレジ打ちやベーカリーでの仕事も経験した苦労人だ。

政治議論をYouTubeで発信

若手政治家となったサンナ・マリン氏は、社会民主党の中で瞬く間に評価を高めていった。2012年にはタンペレ市議会議員に当選し、BBCによれば、市議会で起こった他議員との激しい議論をYouTubeにアップして話題になったという。

国会議員への選出

30歳を迎える頃、サンナ・マリン氏はピルカンマー選挙区からフィンランド議員に選出された。『ニューヨーク・タイムズ』紙は彼女について、「党の基準と比較しても左寄りであり、気候変動、男女平等、社会福祉を最優先課題としている」と評している。

新星の躍進

タンペレ大学出身の若手政治家サンナ・マリン氏は、やがてフィンランド社会民主党の党首アンティ・リンネ氏の目に留まった。

2019年に運輸通信大臣に就任

2019年6月の総選挙で社会民主党が勝利し、アンティ・リンネがフィンランド首相に就任。サンナ・マリンは運輸通信大臣に任命され、政権の一翼を担うことになった。

アンティ・リンネ連立政権の崩壊

しかし、社会民主党政権の道のりは順調ではなかった。フィンランド郵政によるストライキへの対応をめぐり、中央党が政府の対応を批判して連立政権を離脱。アンティ・リンネは首相就任から6ヶ月で辞任に追い込まれてしまったのだ。

34歳で国家指導者に

2019年12月、辞職したアンティ・リンネの後任としてサンナ・マリンがフィンランド首相に選出された。当時34歳のマリンは、世界で最も若い国家指導者となった。

女性が大半を占める若い政府

サンナ・マリン新首相の元で発足した新内閣は、男性を中心としていたそれまでの構成を打ち破るものだった。5つの政党からなる19閣僚中12人が女性、しかもサンナ・マリン首相を含む4人は35歳以下と、一気に若返りを果たした。

パートナーとの結婚

首相としての重責やメディアにおける注目度の高さにもかかわらず、サンナ・マリン首相は充実したプライベート生活を送っている。2020年8月、長年のパートナーであるマルクス・ライコネンと挙式を行い、娘を一人授かっている。

物議を醸したショット

2020年10月、サンナ・マリン首相は雑誌『トレンディ』の表紙に素肌にジャケット姿で登場し、人々の批判を浴びた。『イブニング・スタンダード』紙によれば、反対派はこのスタイルを「悪趣味で品がない」としたという。

閣僚のコロナウイルス陽性反応

2021年には、閣僚の一人がコロナウィルスの陽性反応を示した日の夜にナイトクラブに行き、物議を醸したこともあった。サンナ・マリン首相は翌日日曜日の朝までメールを見ていなかったと主張し、野党はこれを「無責任だ」として批判した。

ロックを愛する政治家、アンデション首相

一方、スウェーデンのマグダレナ・アンデション首相はその半生を政治に捧げる生粋の政治家である。とはいえ時間を見つけては趣味のロック音楽、しかもハードロックを楽しんでいる。その生い立ちを振り返ってみよう。

ウプサラ出身の元水泳選手

マグダレーナ・アンデション首相は1967年1月23日、ストックホルム北部のウプサラ市で生まれた。大学教授を父親に持つアンデション氏は、学生時代にはハイレベルな水泳選手として活躍しジュニア・チャンピオンに輝くほどだった。やがて、スポーツよりも政治にその情熱を傾けるようになった。

社会民主党のホープ

アンデション氏は1983年にスウェーデン社会民主党青年同盟に加入し、1987年には地元ウプサラ市の支部長に選出された。その後、ストックホルム商科大学で経済学を学び、1996年には早くも首相府で勤務を開始した。

スウェーデンの財政を管理

経済学を修めたアンデション氏は税務局チーフディレクター(2009年)、財務大臣(2014年)、国際通貨基金金融委員の議長(2020年)など経済と密接な関わりをもつ国内外の要職を歴任した。

2020年以来初の女性首相

フィンランドのサンナ・マリン首相と同じく、マグダレナ・アンデション首相も前任者から後継者として指名され、2021年に首相に就任した。ただし、国会投票でいったん首相に選出されたものの、同日に連立政権が崩壊して首相選出を辞退するという波乱万丈の展開があった。しかしアンデション氏は社会民主労働党一党で政権を率いる考えを示し、続いて行われた再投票により首相に就任したのだ。

スウェーデン初の女性首相

これによりスウェーデン史上初の女性首相が誕生した。マグダレナ・アンデション首相は、プライベートでは経済学教授のリチャード・フリーベリと落ち着いた家庭を築いている。

首相のお気に入りロックバンド

スウェーデン首相がロック好きという話は、ラジオ局「バンディット・ロック」でのインタビューで明らかになったものだ。このときに首相は好きなバンドとして、米国のハードロックバンド「システム・オブ・ア・ダウン」を挙げている。

ロシアを脇目にNATO加盟を目指す両国

つねに中立的な立場で平和を求めてきたフィンランドとスウェーデンだが、ウクライナ戦争が大きなきっかけとなり、将来的な懸念に備えて軍事同盟を模索せざるを得ない立場におかれるようになった。フィンランドのマリン首相とスウェーデンのアンデション首相は、両国のNATO加盟という歴史的な一歩に向けて重要な舵取りを任されている。

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