パラレルワールドは存在する? 科学者たちの意見はいかに

いまとは違う現実が存在する?
いくつもの宇宙の中のひとつ
正確には無限ではない
マルチバースを巡る現在の研究をチェック
多世界解釈理論
1957年に提唱される
違う地球では実験結果も変わる
認識可能なのはひとつだけ
ほんとうに存在するのか
存在はする
分岐する現実
リンデ教授によると
ほかの宇宙ではなにが起きているかわからない
弦理論
相対性理論と量子力学の統合を目指す
当初の求心力を失いつつある理論
ミチオ・カク教授
弦理論とマルチバース
カク教授の見解
無数のパラレルワールドが存在
否定的な立場も
興味深いが、誤っている
どういう結果になってもおかしくないが……
結局は理論的な仮説に過ぎないか
いまとは違う現実が存在する?

あなたがいまこの記事を読んでいる瞬間、別のあなたが満場の観客を前に舞台に立っていたり、あるいは浜辺でくつろいでいる世界がある……のだろうか。いわゆるパラレルワールドが存在すれば、そのような空想も現実のものとなるかもしれない。パラレルワールドについて、科学ではどのように考えているのだろうか。

いくつもの宇宙の中のひとつ

宇宙物理学者の多くはいくつもの宇宙が存在すると考えている。その中のひとつがいまわれわれが暮らしている宇宙というわけだ。

正確には無限ではない

では宇宙は「無限に」存在するのだろうか。「無限」という語を数学的に捉えればこれは正しくない。だが、この場合の「無限」を「人間の計算能力を凌駕する(が、とはいえたかだか有限の数)」という意味だと考えれば間違ってはいない。数学的には正確さを欠く表現だが、ある種の詩的な表現として膨大な数のことを言っているとすれば、「無限に」存在するとも言えるのだ。

マルチバースを巡る現在の研究をチェック

われわれの宇宙は決して唯一無二のものではなく、複数存在するもののひとつだ。それはつまり、いまとは違ったバージョンの私たちがどこかに存在し得るということでもある。現代の科学では、この可能性についてすでに数十年にわたる研究の蓄積が存在する。

画像:Gerd Altmann / Pixabay

多世界解釈理論

この問題について提唱された最初期の理論のひとつが、アメリカの物理学者・数学者であるヒュー・エヴェレットの唱えた「多世界解釈」理論だ。

画像:Gerd Altmann / Pixabay

1957年に提唱される

『ナショナル・ジオグラフィック』誌の同理論特集号によると、「多世界解釈」理論が最初に提唱されたのは1957年だという。エヴェレットのこの解釈は「分岐する時間軸、あるいは現在とは異なった現実――そこではわれわれの決断がいまとは違った展開を見せ、時には正反対の結果を生むこともある――の存在を予言した」ものとされている。

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違う地球では実験結果も変わる

エヴェレットはこう述べている:「実際には無限の数の地球が存在する。そこでなんらかの実験を行うと確率的な結果を受け取るわけだが、それによってわかるのは、実験者がその結果が得られるタイプの地球に住んでいたということだ」

画像:Gerd Altmann / Pixabay

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認識可能なのはひとつだけ

これはつまり、各人に、それぞれの選択に従って無限の自分が存在するかもしれないということでもある。とはいえ、認識可能な現実はいままさに生きているこの現実ただひとつなのだが。

ほんとうに存在するのか

たいへん興味深い理論だが、それではその別の地球はいったいどこに存在するのだろうか? というより、そもそもほんとうに存在するのだろうか?

画像:Gerd Altmann / Pixabay

存在はする

科学者の見解では、別の地球や別のバージョンの私たちは別次元に存在しており、そこにアクセスする方法はないのだという。

画像:Mohamed Hassan / Pixabay

分岐する現実

『ナショナル・ジオグラフィック』誌の記事によると、マサチューセッツ工科大学のマックス・テグマーク教授は「レベル3・マルチバース」を提唱しているという。それは「パラレルワールドの総体であり、様々な時間軸での別々の展開が織りなされる場」だとされており、エヴェレットのコンセプトに連なるものだと言えるだろう。

画像:Pixabay

リンデ教授によると

一方、スタンフォード大学の理論物理学者アンドレイ・リンデ教授によると、「われわれの現実理解はとても完全とは言い難い」とされる。現実とは、人間の認識とは無関係に存在するということだ。

ほかの宇宙ではなにが起きているかわからない

リンデ教授は『ナショナル・ジオグラフィック』誌にこう語っている:「あなたが原子爆弾を持っているとしましょう。いつ爆発するかはわかりません。ほかの世界では、そもそもその種の破壊兵器が存在するかどうかもわからないのです」

弦理論

科学界を揺るがした仮説はほかにもある。1980年代に登場し、支持派と否定派に二分された弦(ひも)理論もそのひとつだ。

相対性理論と量子力学の統合を目指す

弦理論はそもそも、アインシュタインの相対性理論と量子力学を統合しようという考えのもとに発案された。相対性理論と量子力学はどちらも実験的に検証された確かな理論だが、どうしてもそのふたつを統合することができず、現代物理学の悩みの種となっていたのだ。

当初の求心力を失いつつある理論

弦理論は実験によって検証することはできない。現代物理学を構成するふたつの大きな理論的支柱を統一するという大きな野望とともに提唱された弦理論だったが、その企図はいまだに達成されていない。提唱当初こそ大きな熱狂を巻き起こしたものの、だんだんとその求心力を失いつつある。

ミチオ・カク教授

その弦理論を中心的に研究しているのが『神の方程式』などの著書でも知られる日系アメリカ人のミチオ・カク教授だ。

弦理論とマルチバース

カク教授は『ニューヨーク・タイムズ』紙でマルチバースなどについてこう解説している:「マルチバースの概念は(相対性理論や量子力学を統一した)万物理論を構想するにあたって鍵となるものです」

画像:Peace Love Happiness / Pixabay

カク教授の見解

「弦理論では、素粒子は小さな弦の振動とされます。こうすることで、これほど多くの粒子が存在する理由が説明できます。それぞれの振動の仕方が様々な素粒子に対応するのです。その振動の作るハーモニーが物理法則であり、メロディーが化学に相当します」

無数のパラレルワールドが存在

カク教授によると、この理論では「宇宙は弦の織りなす交響曲」だと言えるのだという。ともかく、弦理論では無数のパラレルワールドの存在が示唆されている。

否定的な立場も

もちろん、すべての科学者がパラレルワールドの存在を肯定しているわけではない。理論物理学者のカルロ・ロヴェッリ教授もまた、相対性理論と量子力学の統一を構想している学者だが、弦理論とは異なった立場を取っている。

興味深いが、誤っている

ロヴェッリ教授はイタリアのユーチューバーによるインタビューを受けた際に、弦理論は「興味深い仮説だが、誤っている」と述べている。

どういう結果になってもおかしくないが……

ロヴェッリ教授はこう述べている:「多くの科学者が異なった次元というアイディアを真剣に受け止めて研究しています。多くの議論や論争が存在する研究領域なのです。どういう結果になってもおかしくないですが、ただ、私としては、いまここにあるものとは別の、別次元の宇宙が存在するという確かな証拠は見たことがありません。いまのところ、あまり意味のない空想という以上のものには思えません」

結局は理論的な仮説に過ぎないか

ロヴェッリ教授の言うことももっともだ。実際、パラレルワールドの存在を裏付けるとされる証拠はどれも理論的・思弁的なものにすぎないのだから。とはいえ、この理論が現代物理学の提示したものの中でもとりわけて興味深いものである事も否定はできない。

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