バイデン続投を「支持」するプーチン大統領、バイデン大統領は相手を「クレイジー」よばわり
最近、ロシアのプーチン大統領は今年行われる米大統領選に言及し、バイデン大統領の続投が望ましいという考えを明かした。一方、バイデン大統領はプーチン大統領に対し、辛辣な発言を続けているようだ。
『ガーディアン』紙によれば、バイデン大統領はサンフランシスコで行われた資金集めのイベントの場で、プーチン大統領を「クレイジーなろくでなし」呼ばわりしたという。
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この発言が飛び出したのは気候変動に関する議論の最中だった。バイデン大統領は「世界にはプーチン大統領をはじめクレイジーなろくでなしどもがいるし、核戦争の懸念も常にあります。しかし、人類の存続を脅かしているのは気候変動です」と述べたのだ。
無論、ロシア政府はバイデン大統領によるこの発言に反発。ドミトリー・ペスコフ報道官は「米大統領によるそのような物言いはプーチン大統領の威厳を損なうものではありません。そのような言葉遣いは発言者自らの品位を貶めるものです」と述べ、不快感をあらわにした。
ペスコフ報道官はさらに、「おそらくハリウッドのカウボーイ気取りなのでしょう」と続け、バイデン大統領の発言は選挙向けのポーズに過ぎないとした。
『ガーディアン』紙も指摘している通り、バイデン大統領がプーチン大統領を貶めるような発言をしたのは今回がはじめてではない。以前からプーチン大統領を悪党、戦犯、殺し屋などと呼んでなじっているのだ。
しかし、今回の発言については、プーチン大統領がバイデン大統領の続投を「支持」する姿勢を見せたことが背景にあると考える向きもある。というのも、プーチン大統領による「支持」は、バイデン大統領の選挙活動に好ましい影響を及ぼすものではないためだ。
プーチン政権はウクライナ侵攻をめぐって西側諸国との対決姿勢を強めており、米大統領選ではトランプ元大統領の返り咲きを望んでいると考えるのが自然だ。
ところが、親プーチン派のジャーナリスト、パーヴェル・ザルビンが2月14日に行ったインタビューの中で、プーチン大統領は思いがけないコメントをした。
ニュースサイト「ポリティコ」によれば、プーチン大統領は「(バイデン大統領は)経験豊富で行動を予測しやすい人物だ。つまり、古風な政治家だといえる」と述べ、バイデン大統領の続投を望む立場を明かしたという。バイデン大統領がウクライナに対し多大な支援を行ってきたことを考えれば、これは少々意外な発言だ。
一方、トランプ元大統領は任期中にプーチン大統領と蜜月関係にあったわけだが、今回の発言はその事実と食い違っているようにも見える。
しかも、CNN放送が伝えたところによると、トランプ元大統領は最近、防衛費が目標額に達していないNATO加盟国について「ロシアに好き放題させる」と過激な発言をして、大きな反発を招いたばかりだった。
それにもかかわらず、プーチン大統領はインタビューの中で、バイデン大統領の認知機能を擁護する発言まで行ったという。バイデン大統領は最近、人名の取り違えを繰り返すなど、認知機能の低下を窺わせる言動を繰り返しており、米国では懸念の声が挙がっていた。
プーチン大統領はウクライナ侵攻が勃発する以前の2021年6月に、スイスでバイデン大統領と会談している。そのときの印象について、「スイスでバイデン大統領と会談したとき、確か3年ほど前ですが、そのときからバイデン大統領の能力不足がささやかれていました。しかし、私にはそうは見えませんでした」と述べたのだ。
プーチン大統領はさらに、「確かに、バイデン大統領はメモに目をやっていました。正直に言えば、私も自分のメモを確認しました。しかし、それは大したことではありません」と言葉を続けた。バイデン大統領ほど高齢ではないとはいえ、プーチン大統領もすでに71歳。メディアから揶揄された経験もあるため、思うところがあるのかもしれない。
いずれにせよ、プーチン大統領としては「米国民が信頼を寄せる米大統領ならば、誰とでも協力する」という立場を示して、米大統領に関するコメントを締めくくった。
プーチン大統領ですらトランプ元大統領は何をしでかすかわからない危険人物だと見ており、バイデン大統領の方が"マシ"だと考えているのだろうか。
とはいえ、米国はバイデン政権のもとウクライナ支援で大きな役割を果たしてきたほか対露制裁も主導しており、プーチン大統領としては不満を募らせているはずだ。
実際、CNN放送によれば、プーチン大統領はバイデン政権の政治的立場について「現政権の姿勢は非常に有害で誤りに満ちている」と批判したとのこと。
このように、プーチン大統領は米大統領についてあれこれ意見を表明しているが、一方のホワイトハウスはこの干渉を一蹴。ニュースサイト「ポリティコ」によれば、米大統領府のアンドリュー・ベイツ報道官は記者団に対し、「プーチン大統領は米大統領選に口を挟むべきでない」と述べたそうだ。
結局、パーヴェル・ザルビンによるインタビューを通して、プーチン大統領は従来から行ってきたプロパガンダの繰り返しに終始した。とはいえ、興味深い発言が飛び出す場面もあった。たとえば、米国の保守派コメンテーターとして知られるタッカー・カールソンとのインタビューに関するコメントもその1つだろう。
プーチン大統領は「正直、もっと鋭い質問を浴びせられると思っていた」と述べ、思いのほかキレのないタッカー・カールソンに失望した様子だった。
プーチン大統領いわく:「肩透かしを食らいました。鋭い答えを返すよい機会だと思っていたのですが。あのインタビューはつまらなかったと言わざるを得ません」