米ネバダ州で大規模なリチウム鉱床を発見:グリーンエネルギー普及のカギとなるか
グリーンエネルギーへの移行を世界規模で進めるためには、多くの鉱物資源が必要となる。そして、そのような鉱物資源の中でもとりわけ需要が高いのがリチウムだ。
リチウムはその重要性から「現代の石油」とも呼ばれている。電気自動車からスマートフォンまで、あらゆる電子機器に用いられるバッテリーの素材として必要不可欠なのだ。
リチウムがなければ、環境保護団体が思い描くようなスマートな生活を実現することはできない。それゆえ、『ポピュラーメカニクス』誌などはリチウムを「白い金」と呼んでいるほどだ。
世界を一変させる可能性を秘めていることから、地球上でもっとも貴重な資源の1つとなったリチウム。その他の鉱物資源と違っているのは、地球外から調達できる見込みはないということだ。
幸い、リチウムはどの大陸にも相当量が存在しているが、話はそう単純ではない。というのも、各地に埋まっているリチウムはそう簡単に採掘することができないのだ。
前出の『ポピュラーメカニクス』誌によれば、地球上に存在するリチウムはおよそ8,800万トンと推定されているが、人間が採掘できるのはわずか3分の1。しかも、採掘にかかる手間も考慮すると、実際に手に入る量はさらに減ってしまうはずだ。
同誌のダレン・オーフ記者いわく:「つまり、地球には人間の需要を満たすだけのリチウムが存在します。しかし、それを地下から取り出すということになると、まったく話が違ってくるのです」だからこそ、最近ネバダ州(米国)で発見されたリチウム鉱床は、重要な意味を持つこととなる。
今回ネバダ州で発見された鉱床はこれまでに知られているものの中で最大規模となる可能性があり、『アトランティック』誌は「リチウム・ジャックポット(大当たり)」と呼んでいる。しかし、このリチウム鉱床のメリットは埋蔵量だけではない。
『Science Advances』誌に掲載された最新研究によれば、ネバダ州のリチウム鉱床は世界最大規模であるばかりか、地上でもっとも採掘しやすい場所かもしれないのだ。
『アトランティック』誌はこの発見について、まだ不確実な部分が大きいとしつつも、一帯のリチウムが「現在の地政学に変化をもたらし、グリーンエネルギーの未来を作り出す可能性がある」とした。
『ワシントン・ポスト』紙に寄稿したタイラー・コーウェン氏は「リチウム不足に加えて、米国には大規模な鉱床がないと見られていたことから、米国の政策立案者たちは神経を尖らせていた。大規模なリチウム供給源はどこにでもあるものではないのだ」と解説。
同誌によれば、「リチウム鉱床の大部分はチリやボリビア、アルゼンチン、中国、オーストラリアで見つかっている」とのことだが、ネバダ州鉱床の埋蔵量が本当に2,ooo~4,000万トンもあるとすれば、「米国における電気自動車への投資は、もはや国家安全保障上の懸念をはらむものではなくなる」わけだ。
ただし、このリチウム鉱床にも大きな問題が1つある。『アトランティック』誌によれば、一帯は人口が希薄な地域で、アメリカ先住民族のパイユート族とショショーニ族が先祖代々暮らしてきた場所なのだという。
この2つの部族は以前、付近にある別のリチウム鉱山の露天掘りに反対する訴訟を起こし、却下されたという経緯がある。したがって、さらに大規模な鉱山開発が行われることになれば、トラブルに発展する可能性が高いのだ。
さらに、採掘されたリチウムはそのまま利用できるわけではないため精錬が必要となるが、米国はこの点でライバルの中国に大きく遅れをとっている。つまり、米国産リチウムが実現したとしても、中国の影響を排除できるとは限らないのだ。
『アトランティック』誌のロス・アンダーソン記者は、「人類は銅器時代・青銅器時代・鉄器時代といった具合に、金属による時代の移り変わりを経験してきた。そして今、我々はリチウム時代を生きているのだ」と述べている。果たして、米国はネバダ州の鉱床によって新時代の覇権を手にすることができるのだろうか?
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