プーチン大統領の後継者候補と目されるニコライ・パトルシェフ
英国の『ザ・サン』紙によれば、プーチン大統領が病気や手術で政権を離れることになった場合、プーチン大統領の後継者になると目されているのがニコライ・パトルシェフ(写真)だ。
プーチン大統領に付きまとうのは癌の噂だけではない。『デイリー・メール』紙がパーキンソン病の可能性を示唆するなど、プーチン大統領の健康不安説は絶えず囁かれており、クレムリンは火消しに躍起になっている。
さて、プーチン大統領が一時的に政権を手放さなくてはならない場合、代理を務める人物として名前が浮上したのはプーチン政権内で影響力を持つニコライ・パトルシェフだ(セルゲイ・ショイグ国防相が後継者だという説もあるが、行き詰まりを見せるウクライナ侵攻で戦略的失敗を犯した彼は難しい立場に立たされている)。
『ザ・サン』紙の報道によれば、プーチン大統領が病気で政権を手放している間、ニコライ・パトルシェフがロシアを率いることになるという。また、そのまま政権を握り続ける可能性すらあるようだ。
ニコライ・パトルシェフはプーチン大統領が信頼を寄せる政権内のタカ派だ。ロシア政界で絶大な影響力を振るう「シロヴィキ」の一員でもある。
「シロヴィキ」に数えられる有力者としてはニコライ・パトルシェフ、セルゲイ・イワノフ、ヴィクトル・イワノフ、セルゲイ・ショイグ、アレクサンドル・ボルトニコフ、セルゲイ・ナルイシキンが挙げられる。また、セルゲイ・ラブロフ外相をはじめとする政権高官を含むとする場合もある。いずれにせよ、治安・諜報機関と何らかの関わりを持つ指導者たちのことだ。
すでに70歳を迎えているニコライ・パトルシェフだが、プーチン大統領よりもさらに強硬な政治姿勢で知られている。
「非ナチ化」という口実でウクライナ侵攻を行うよう、プーチン大統領を決断させたのはパトルシェフだと見られているのだ。
さらに、ニコライ・パトルシェフの見解によれば西側諸国はすでに対露戦争の真っ最中だということになる。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンでロシア政治学の教鞭をとるベン・ノブル教授いわく:「パトルシェフはタカ派の中でも特に強硬です。彼は西側諸国が数年前からロシア打倒を目論んでいると考えているのです」
パトルシェフは1999年から2008年にかけて、KGBの後継組織にあたるロシア連邦保安局(FSB)で長官を務めていた。
また、2008年にはロシア連邦安全保障会議の書記に任命された。
プーチン大統領の軍事顧問も務めるパトルシェフの思想は、ソ連解体で「西側の新自由主義エリートたちが野放しになってしまった」というものだ。
2021年3月の『ロシア新聞』でパトルシェフは次のように語っている:「西側諸国はロシアを封じ込めるため、ロシア国内で抗議運動を扇動して政治・社会の不安定化を狙っている。ロシアの伝統精神と道徳的価値観を損なおうとしているのだ」
『デイリー・メール』紙によれば、パトルシェフはプーチン大統領が心から信頼を寄せる唯一の人物であり、ミハイル・ミシュスティン首相を抜き去って後継者になると目されている。これはロシアの法制度上、珍しいことだ。
ニコライ・パトルシェフの息子ドミトリーは2018年以来、農業大臣を務めており、『ロシア新聞』に掲載された記事ではヒトラーの権力掌握をサポートしたのは米国だと主張している。
とはいえ、プーチン大統領の後継者が誰になるのか、今のところ定かではない。タカ派のなかでも強硬なニコライ・パトルシェフが有力候補として浮上する一方、西側との妥協も厭わない、ハト派の人物が政権を握る可能性に期待するアナリストもいるのだ。いずれにせよ、ヨーロッパとの繋がりか自国のアイデンティティかで揺れるのはロシアの常だ。