ドネツク親露派当局による死刑判決に異議:英国人捕虜の運命は?
『デイリー・メール』紙の報道によれば、欧州人権裁判所はロシアに対し「ウクライナで死刑宣告を受けた2人の英国人兵士に対する刑の執行を阻止しなくてはならない」と命じた。2人は「外国人傭兵」としてウクライナで戦闘に参加したことで、死刑宣告を受けていた。
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2022年3月、ロシアは欧州評議会から脱退する意向を表明し、追放処分を受けている。このような状況でも欧州人権裁判所がロシアに干渉することは可能なのだろうか?しかし、欧州評議会の条約によれば正式な脱退までには「猶予期間」があり、ロシアは9月まで管轄下にあるとされているのだ。
欧州人権裁判所の裁判官は6月30日木曜日、ロシア当局に対し「死刑の執行を阻止し」、2人に対する医療の提供など人道的な扱いに努めるよう要求した、と『デイリー・メール』紙は報じている。
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親露派が支配しているウクライナ東部の裁判所は、ロシア軍との戦闘にウクライナ側で参戦し、捕虜となった2人の英国人に対して死刑宣告を下していた。そのうち1人は最近、上告を行ったという。
死刑判決を受けたのはノッティンガムシャー出身のエイデン・アスリン(28歳)とベッドフォードシャー出身のショーン・ピナー(48歳)。さらに、モロッコ国籍のサウドゥン・ブラヒムにも同様の判決が下されている。エイデンの家族がBBC放送に対して述べたところによれば、彼は母親との電話のなかで、親露派の裁判所は2人の上告を求める英国からの接触はなく「時間切れ」だと主張していることを伝えたという。
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2人の英国人男性とモロッコ人男性はウクライナ軍とともにマリウポリで戦闘に参加し、捕虜になったという。その後、わずか数日間の裁判を経てドネツクの親露派当局に死刑を宣告されたのだ。これについて「ソ連時代のような忌まわしい見せしめ裁判」と表現する政治家もいる。一方、ロシアの報道機関は3人の容疑について、暴力による権力掌握の企ておよびテロ行為を行うための訓練を受けたことだとしている。
ジュネーブ条約は捕虜を常に人道的に扱うことを定めている。したがって、拘束者が捕虜を死に至らしめたり、深刻な健康被害をもたらすような処遇を行うのは違法であるとされている。そのような行為は現代の慣習に照らすと、深刻な人権侵害だと見なされるのだ。
ジュネーブ諸条約および追加議定書は武力紛争における行動に制約を課し、その影響を制限するもので、国際人道法の中核となっている。これによって、敵対行為に参加していない人々や、敵対行為を放棄した人々は保護されなくてはならないことになっている。
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ジュネーブ諸条約は民間人や捕虜、戦闘不能になった兵士の扱いを定めている。
ロシア側は今回の捕虜について、ウクライナ国籍を持たない傭兵であり、ジュネーブ条約の保護対象ではないと主張している。写真右、緑のバンダナの男性がエイデン・アスリン。
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ロシア軍によれば、ウクライナ側で参戦する外国の戦闘員はジュネーブ条約の定める兵士ではないため、捕虜となった場合は裁判にかけられることを覚悟しなくてはならないという。また、英国人のアンドリュー・ヒルも親露派軍の捕虜となっており、近く裁判が行われる予定だ。
CNN放送によれば、3人はウクライナ南部の都市マリウポリで4月に行われたロシア軍との戦闘中に身柄を拘束されたとみられている。
衛星放送アルジャジーラによれば、エイデン・アスリンとショーン・ピナーの親族は、2人は長年、ウクライナ軍に勤務しており、傭兵ではないと主張しているという。また、BBC放送は2人が2018年にウクライナに移住したことを明かした。
英国保守党議員のロバート・ジェンリックは「クレムリンのプロパガンダとは違い、エイデン・アスリンとショーン・ピナーは傭兵ではない。2人は以前からウクライナに住んでおり、ロシアによる違法な侵略のずっと前からウクライナ軍に勤務していた。したがって、捕虜としてジュネーブ条約の定める保護を受ける権利がある」と述べている。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、この宣告が「カネのためにウクライナに味方して戦う兵士に対する明確な戒め」になるとしている。
また、ウクライナ東部の親露派支配地域「ドネツク人民共和国」を独立国家として認めているのはロシアだけであり、その正当性および制度が国際的に受け入れられているとは言い難い。この地域は国際的にはウクライナの一部であると見なされているのだ。
アムネスティ英国の危機対応責任者は「ロシアおよびドネツク人民共和国の親露派が死刑を執行するようなことになれば、彼らの犯した戦争犯罪がまた1つ増えることになる」と述べている。
英国のリズ・トラス外相は 「2人は捕虜です。これはまったく不当なまやかしの裁判です(中略)私は2人の家族に寄り添い、彼らをサポートするため最善を尽くします」というツイートを投稿。
裁判は非公開で行われ、ロシア当局寄りの報道機関が訴訟手続きのごく一部を公開するにとどまった。
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関係者によると、1か月以内に上告を行うことが認められており、これが認められれば終身刑または25年の懲役刑に減刑される可能性があるという。
アムネスティ英国の危機対応責任者、クリスチャン・ベネディクトはこの判決を「グロテスク」だと形容。
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一方、英国保守党のロバート・ジェンリック議員は「このソ連時代のような忌まわしい見せしめ裁判は、プーチン政権の堕落を示す最新の兆候だ」と述べている。