ドイツ艦船が台湾海峡を22年ぶりに通過:インド太平洋地域の安定に貢献する意思をアピールか
9月13日、ドイツの海軍艦船2隻が台湾海峡を22年ぶりに通過した。読売新聞などが報じている。
画像:通過した補給艦「フランクフルト・アム・マイン」
同紙によると台湾海峡を通過したのはドイツ海軍のフリゲート艦「バーデン・ヴュルテンベルク」と補給艦「フランクフルト・アム・マイン」で、韓国からマニラに向かう途中でのことだったという。
画像:フリゲート艦「バーデン・ヴュルテンベルク」(2014年), Cavernia, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
台湾海峡は中国と台湾の間にある海域で、中国は同海峡を他国の軍艦が通航することを認めていない。だが、アメリカをはじめとする西側諸国は同海峡を国際水域とみなし、通行に許可等は必要ないという立場をとっている。そして実際、ロイター通信によると、近年アメリカやイギリス、カナダなどの軍艦が通行しているという。
今回ドイツ艦船が同海峡を通過したのも、ドイツの立場を明確にするためのものだと受け止められている。9月13日、ドイツのピストリウス国防大臣は記者会見で独艦船の台湾海峡通過を認め、次のように述べている:「メッセージは非常に単純で、これまで国としても、私からも申し上げてきたものです。つまり、国際水域は国際水域である、ということです」独誌『デア・シュピーゲル』が報じている。
ピストリウス国防大臣はさらにこう続けた:「これは最短ルートであり、気候条件等を考慮すれば最も安全でもあった。同海峡は国際水域であるから、そこを通過した」
今回のドイツ艦船の通過を受けて、中国の毛寧報道官は「航行の自由を旗印とした、中国の主権と安全を侵害する挑発行為には強く反対する」とコメントした。独放送局「DW」が伝えている。
ただし『デア・シュピーゲル』誌は中国による抗議を、普段の中国の姿勢に鑑みるとかなり穏やかなものだとしている。コメント内で毛寧報道官はドイツを名指しで批難することを避け、一般論として語るに留めていたからだ。
実は、今回の台湾海峡通過は以前からその可能性がささやかれていた。2024年5月4日、『ディー・ツァイト』紙がアンナレーナ・ベアボック外務大臣(写真)の発言として、今後インド太平洋でのミッションに際して独艦船が台湾海峡を通過する可能性を排除しない、というものを報じている。
さらに、軍事ニュースサイト「Army Recognition」によると、ドイツはそれ以前からインド太平洋地域への関与を強める動きを見せていたという。2021年にはおよそ20年ぶりに同地域に軍艦を派遣、日本を含むインド太平洋諸国を訪問しており、同地域の海上安全保障に積極的に関与する姿勢をアピールしてきたからだ。
画像:2021年に派遣されたフリゲート艦「バイエルン」, Mass Communication Specialist Second Class Mike Banzhaf, Public domain, via Wikimedia Commons
インド太平洋地域への関与を強める動きはドイツ単独のものではない。2021年9月、EUは「インド太平洋地域における協力のためのEU戦略」を発表、一丸となって同地域の安定に貢献する意思を示している。
また、読売新聞は今回の通過について、「米仏英などと足並みをそろえて中国をけん制し、経済偏重と見られてきた(ドイツの)対中姿勢の転換を印象付ける狙いがありそうだ」としている。台湾への野心を隠さない中国に対し、西側諸国も団結してそれを許さない姿勢を明確にしつつある。
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画像:補給艦「フランクフルト・アム・マイン」, Ein Dahmer, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons