トランプ新大統領、セレブシェフのホセ・アンドレス氏らを大統領諮問委員会から「解任」
今月20日の就任式を終えたばかりのトランプ米大統領は、大統領諮問委員会から著名シェフのホセ・アンドレス氏らを解任する考えを明らかにした。
トランプ新大統領は自身が立ち上げた「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」に次のように投稿した:「米大統領人事オフィスは、前政権下で要職に就いたが、現政権が掲げるビジョン『アメリカを再び偉大にする(MAGA)』に沿わない者1,000人余りについて、特定および解任の手続きを積極的にすすめている」
念には念を入れてか、トランプ大統領はこの解任手続きの対象となる主要人物4人の名前を挙げている。そのひとりが、スポーツ・フィットネス・栄養諮問委員会のホセ・アンドレスだ。
しかし、スペイン出身で米国を拠点に活動し、米国籍も取得している著名シェフのホセ・アンドレス氏の方はトランプ大統領の「解任」宣言に対し、「X」投稿を通じて反論。この投稿には数多くのフォロワーから賞賛の声が寄せられた。
アンドレス氏の投稿を見てみよう:「私は先週辞表を提出し、2年の任期をすでに終了しています。スポーツ・フィットネス・栄養大統領諮問委員会の共同議長を務めたことは大変な光栄でした。私と同じく無報酬のボランティアとして評議会に参加したメンバーはみな勤勉かつ才能豊かな人々で、そこから日々刺激を受けることができました。米国の人々のために活動し、より多くの子供たちがスポーツ・健康プログラムにアクセスできるようホワイトハウスと各主要スポーツリーグとの間にパートナーシップを締結するという、歴史的な取り組みを成し遂げたことを誇りに思います」
トランプ大統領が「解任」するとしたほかの3人は、国家インフラ諮問委員会のマーク・ミリー氏(写真)、大統領輸出評議会のケイシャ・ランス・ボトムズ氏、「ウィルソンセンター・フォー・スカラーズ」のブライアン・フック氏である。
この4人を諮問委員会等のメンバーに任命したのはバイデン前大統領で、ホセ・アンドレス氏の場合は2022年3月に大統領諮問委員会に加わっている。
それから約3年、2013年に米国籍を手にしたホセ・アンドレス氏の立場は少し危ういものとなっている。トランプ氏は大統領に就任早々、SNS上で「お前たちは全員、クビだ!」という過激な投稿を行っているのだ。
ホセ・アンドレス氏は今年4日、バイデン前大統領から米国の文民に送られる最高位の勲章である「大統領自由勲章」を授与されている。そのわずか2週間後、ホワイトハウスの新たな主からは「解任」通告を受けるという異常事態になった。
突然の通告だが、関係者の間に驚きはないようだ。というのも、トランプ氏とアンドレス氏の間には10年以上前に意見の衝突が生じ、その件は論議を巻き起こし訴訟にまで発展しているのだ。
2015年のこと、トランプ氏が首都ワシントンで建設を進めていた「トランプ・インターナショナル・ホテル」には、ホセ・アンドレス氏の「ThinkFoodGroup」社が運営するレストランが出店予定だった。しかし、同年7月にトランプ氏がメキシコ人に対する「中傷的」な発言を行ったことから同社はプロジェクトからの撤退を発表したのだ。
「ThinkFoodGroup」社の出店見送りをよしとしなかったトランプ氏は、損害賠償として1,000万ドル(約15億円)を要求。それから約2年後、トランプ第1次政権が発足した2017年の4月に両者は和解に至ったことを発表した。ただし、その条件は明らかにされていない。
この件は和解に至ったものの、両者の考え方の違いは明らかとなった。そして2019年10月、アンドレス氏はMLBワシントン・ナショナルズ対ヒューストン・アストロズ戦の始球式でピッチャーを務める栄誉を担った。一方、トランプ氏は同じ試合を観戦に訪れたものの、スタジアムのスクリーンに米大統領の姿が映し出されると観客の歓声はブーイングに変わってしまったという。この日、トランプ氏は7回が終わったところでスタジアムを後にしたとCNNが報じている。
こうした気まずい場面を経て、トランプ氏は明らかにシェフのホセ・アンドレスを諮問委員会から「解任」することを大統領就任後の最優先事項のひとつとしていたようだ。実際、就任から24時間もたたないうちにその作業に取りかかった。