さらに過激な持論展開:歯止めのかからないトランプ元大統領
以前から数多くの虚偽発言を重ねてきたトランプ元大統領だが、今回、大統領の職務を離れて以降最大級とも見做されかねない問題発言が飛び出した。フロリダで行われた選挙キャンペーンイベントで、2020年の大統領選ではアメリカ全50州すべてにおいて勝利していたと主張したのだ。
フロリダ州オーランドで催された「フリーダム・サミット」でのスピーチでトランプ元大統領はこう語った:「我々はすべての州で勝っていた。素晴らしい選挙結果だった。1回目の大統領選の時よりも1,200万票以上も得票を増やしていた」
「すべてがでたらめだった……選挙すべてがでたらめだった」と元大統領は述べている。だが、2020年の選挙で実は勝利していたという主張はいまに始まったものではなく、元大統領としては嘘ではなく完全にそう信じているようだ。
多少なりとも論理的に考えることができる人ならば、2020年の選挙時に票が盗まれたなどという元大統領の主張を信じたりせず、ここ数年で最大級のでたらめを言っているだけだとわかるだろう。
トランプ元大統領がなんと言おうとも、2020年の選挙で負けたのは事実であり、そのことは何度も何度もアメリカ中に周知されている。バイデン大統領が306人の選挙人を獲得し、トランプ元大統領は232人という数字はどんな嘘をついても変えられない。
トランプ元大統領やその頑固な支持者たちはこの選挙結果を覆そうとする法廷闘争を繰り広げたが、そのほとんどですでに敗北が決定している。だが、この事実をもってしても元大統領を止めることはできなかったようだ。
ロイター通信によると、2021年時点で選挙不正を追求するとして起こされた50以上の訴訟が棄却されており、ある政府関係者には「2020年の選挙はアメリカの歴史上最も確実だった」とすら言われている。
実際は選挙不正の証拠など存在しないだけでなく、むしろトランプ元大統領の方が選挙結果に不当に干渉しようとしたとしてふたつの訴訟を抱えている有様なのだが、そんなことは共和党支持者の目には映らないようだ。
フリーダム・サミットでの出来事はより穏健な共和党支持者とトランプ大統領を支持する派閥との軋轢を露わにしたとも言える。実際、同イベントに登壇した前アーカンソー州知事のエイサ・ハッチンソンなどはトランプ元大統領に大統領選からの撤退を呼びかけている。
オーストラリアの「ABCニュース」によると、ハッチンソンはこう語ったという:「来年にトランプ元大統領が重罪で有罪判決を受ける可能性はかなり高い」
ハッチンソンはさらにこう続けた:「判決は共和党の候補者を決める投票(3月)の前後になるかもしれない。それは支持者であるあなた方には問題とならないだろうが、11月の選挙での無党派層からの得票に影響することになる」
ハッチンソンは有権者に向かってトランプ元大統領の「破壊的な振る舞い」を軽視しないよう警告したものの、観衆から大きなブーイングを浴びており、トランプ元大統領を支持する層の分厚さを感じさせる結果となっていた。
同じく共和党候補者でかつてはトランプ元大統領の盟友でもあったクリス・クリスティーも同イベントで登壇し、観衆に対して「『真実』への怒りは問題視されるべきものだ」と指摘、大統領に品格を取り戻すべきだとの持論を展開した。
一方、トランプ元大統領はハッチンソンやクリスティーからの批判に答えることはせず、自身の持ち時間を使っていつものようにでたらめを並べ、現時点での最大の敵、フロリダ州知事ロン・デサンティスを攻撃することに専念した。
トランプ元大統領はデサンティス知事について、2018年のフロリダ州知事選の時に「私が推薦したら24時間のうちにロケットのごとく飛び出した。それがいまや傷ついた鳥のように落ちていっている」と述べ、かつて助けを求めてきたことを強調したという。AP通信が報じている。
共和党支持者たちがトランプ元大統領のあからさまな虚偽発言とどう折り合いをつけているのかはわからないが、仮に共和党候補の指名を再び勝ち取り、バイデン大統領との再戦となれば、2024年のアメリカ大統領選が非常に興味深いものとなることは確かだ。