チェコで発見された中世の出土品:謎めいたモチーフが示す未知の信仰とは

中欧で発掘されたバックルの謎
チェコで発見
カエルを食べる蛇のモチーフ
実は多数の類例があった
中欧各地につながりを持つ未知の信仰
研究者チームの結成
興味深い事実
同じ型、同じ素材
同じ工房で製作?
いつごろのもの?
 カエルを呑みこむ蛇
普遍的な意匠
正確な意味は不明
当時のエリート階級
単なる象徴ではなかった可能性
宗教的な意味合い?
中欧で発掘されたバックルの謎

最近、中欧で発掘された不思議なベルトのバックル。当初は特異な出土品だと考えられていたが、実はヨーロッパ各地でそっくりなバックルが見つかっていることが判明し、そのモチーフからこれまで知られていなかった信仰の存在が浮かび上がって来た。

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チェコで発見

研究チームを率いるマサリク大学のイジー・マハチェク博士はチェコのラーニ・ウ・ブジェツラフでこのバックルが発見されたとき、類例のないユニークな出土品だと思い込んでしまったという。

写真:マサリク大学教養学部

カエルを食べる蛇のモチーフ

マハチェク博士いわく:「南モラヴィア州にあるブジェツラフ近郊の発掘現場から、カエルを呑みこむヘビの姿をあしらったバックルが金属探知機によって発見されたとき、私たちは風変わりな装飾が施された珍しい出土品だと思いました」

写真:マサリク大学教養学部

実は多数の類例があった

ところが、この金メッキが施されたバックルは、実は珍しいものではなかったようだ。マハチェク博士は後になって、同じようなバックルがドイツやハンガリー、ボヘミアでも発見されていることを知り、これらの出土品の間に関連性があると気付いたそうだ。

写真:マハチェク他、『Journal of Archaeological Science』(2024)

 

 

中欧各地につながりを持つ未知の信仰

同教授はさらに、「後になって、そっくりな出土例が他にもあることを知りました。私はようやく、自分たちが目の当たりにしているのは中欧の各地につながりを持つ未知の信仰だと気づいたのです」

写真:Wiki Commons By Wolfgang Sauber

研究者チームの結成

この発見を受けて、マハチェク博士は国際的な研究者チームを結成。発掘済みの出土品を詳細に調査し、その起源を探ることにした。

写真:マサリク大学教養学部

興味深い事実

マハチェク博士率いるチームが複数のバックルを詳しく分析した結果、興味深い事実が判明。研究の成果は考古学誌『Journal of Archaeological Science』上で2024年に発表されることとなった。

写真:マハチェク他、『Journal of Archaeological Science』(2024)

同じ型、同じ素材

ニュースサイト「VICE」によれば、マハチェク博士の研究チームが4つのバックルを対象に行ったスキャンや同位体分析によって、大半のバックルは同じ蝋の型から鋳造されたものであるばかりか、素材の銅も出所が同じだと判明。

写真:マハチェク他、『Journal of Archaeological Science』(2024)

同じ工房で製作?

研究チームは論文の中で「これらのバックルはそれぞれ非常に離れた地域で発見されたが、その一部は共通の型を利用して(おそらく)同じ工房で製作されたものだろう」と結論づけた。

写真:マハチェク他、『Journal of Archaeological Science』(2024)

いつごろのもの?

これらのバックルは7~8世紀の遺物であり、遊牧民族アヴァールの装身具だったと見られている。アヴァールはパンノニア平原(現在のハンガリー)に定住し、近隣諸国に文化的影響を及ぼしたことで知られる。

写真: Wiki Commons By Ramsey Muir Historical Atlas

カエルを呑みこむ蛇

マサリク大学のプレスリリースによれば、バックルにはカエルを吞みこむ蛇(あるいは竜)のようなものが描かれているが、このモチーフは世界各地の神話に共通して見られるものだという。

写真:マハチェク他、『Journal of Archaeological Science』(2024)

普遍的な意匠

マハチェク博士はこれについて、「獲物を吞みこむ大蛇というモチーフはゲルマン神話、アヴァール神話、スラヴ神話に登場します。普遍的に理解されるうる重要な意匠なのです」と解説。

写真:Wiki Commons By Louis Moe - AU Library, Campus Emdrup, CC BY-SA 4.0

正確な意味は不明

同博士はさらに、「(このモチーフが表す)正確な意味については、今となっては推測することしかできません。しかし、中世初期の中欧で暮らすさまざまな人々を精神的に結び付けていたのでしょう」と付け加えた。

写真:マハチェク他、『Journal of Archaeological Science』(2024)

当時のエリート階級

マハチェク博士の研究チームによれば、このバックルは当時の中欧を支配したエリート階級において重要な役割りを果たしていた可能性があるという。

写真:マハチェク他、『Journal of Archaeological Science』(2024)

単なる象徴ではなかった可能性

ニュースサイト「VICE」はこういったバックルについて、単なる支配階級の象徴ではなかった可能性があるとしている。では、一体どのような意味があったと考えられているのだろう?

写真:Wiki Commons By James Steakley - Own work, CC BY-SA 3.0

宗教的な意味合い?

同サイトによれば、研究チームはこのバックルについて、特定の信仰を共有する信者たちが身に着けていた可能性があると考えているようだ。とはいえ、そのことを示す証拠は見つかっておらず、実際のところは謎に包まれたままだ。

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