最初の標的はウクライナではなく日本だった?:ロシア連邦保安庁の電子メール漏洩で発覚した事実とは
ロシアによるウクライナ侵攻に始まる戦闘は終わる兆しを見せず、西側諸国にも疲弊が広がっている。だが、事の成り行きが少し違っていたら、ロシアは別の国をターゲットに選んでいたかもしれないという。
ロシア連邦保安庁(FSB)の関係者が2022年にリークした電子メールによって、プーチン政権はウクライナ侵攻を開始する数ヵ月前、日本に攻撃を仕掛ける計画を立てていたらしいことが判明したのだ。
どうやら、プーチン政権は北方領土をめぐる対立を口実に、日本と開戦する手はずを整えていたらしい。第2次世界大戦後、日本政府は旧ソビエト連邦との間で正式な平和条約を締結しなかった。これは、大戦末期にソ連軍が占領した北方領土をめぐる立場の違いによるものだ。
一方、ロシアは2011年にはメドヴェージェフ大統領(当時)が北方領土における軍事力強化を行うなど、日本政府に対する圧力を強めていた。このような状況を考えれば、2022年にリークされた機密情報もあながちデマではないかもしれない。
さて、問題の電子メールは2022年3月17日付けで、ロシア出身の人権活動家で亡命中のウラジーミル・オセチキン氏のもとに「ウィンズ・オブ・チェンジ」を名乗る内部告発組織から届けられた。この組織はウクライナ侵攻の開始以来、オセチキン氏に定期的なリークを行ってきたという。
「ウィンズ・オブ・チェンジ」を率いるイーゴリ・スシュコ氏はこの戦争が始まってからというもの、ロシアから届く内部報告を分析した上で英語に翻訳し、米国のオンライン週刊誌『ニューズウィーク』に伝え続けてきた。
オセチキン氏宛ての電子メールの中で、FSBの告発者はロシア政府が「日本との局地的な軍事衝突を真剣に検討している。両国は全面衝突、いや、戦争に至るだろう」と述べている。
ロシアによる日本侵攻計画の詳細は、『ニューズウィーク』誌のイザベル・ファン・ブリューゲン記者の記事よって明かされることとなった。記事によれば、「告発者は日本をターゲットとした電子戦ヘリコプターの投入作戦を詳細に述べていた。同時に、日本を『ナチス』あるいは『ファシスト』と呼んで大々的なプロパガンダを行うことになっていた」ようだ。
このレトリックはロシアがウクライナ侵攻で実際に用いたものとよく似ている。ただし、「ウィンズ・オブ・チェンジ」が本当にFSBの内部情報をリークしているのか、それとも情報戦の一環に過ぎないのか判別するのは難しい。
ロシア連邦保安庁の専門家フリスト・グロゼフ氏は、「ウィンズ・オブ・チェンジ」から届いた電子メールはFSBと接点を持つ人物がもたらした本物だろうと推測しているという。グロゼフ氏いわく、この電子メールを「FSBの(元・現役)エージェント2人」に見せたところ、「同僚が書いたもので間違いない」という答えが返って来たのだそうだ。
ところが、プーチン政権が実際に攻撃したのはウクライナだった。一体、どうして計画を変更したのだろう? これについては告発者にとっても不明な点が多いらしく、明確な説明はなされていない。
「ウィンズ・オブ・チェンジ」いわく「政権指導部は戦争にこだわっておりロシアの開戦は避けられなかった」が、ターゲットがウクライナに変更された理由については「いずれ、別の誰かが答えてくれるだろう」と述べるに留まっている。
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